2009年01月07日

水曜日の調整報告 【 Parker Duofold Canada 吸入機構不全 】

2009-01-07 01 本日の依頼品はパーカーのVintage品。この時代のParkerSheafferのペン先は極上なのだが、日本では不思議とファンが少ない。声を上げて絶賛する人が少ないこともあるが、故障しても修理部品などが充実していることもあり、今後の事を考えればもっと評価されても良いはずじゃ。

 eBayが始まった直後のころは、Vintage Montblancよりも、Parkerの方が値が高かったのだが、最近では逆転している。むしろParkerは当時よりも相場が下がっている。円高と合わせるとチャンスなのだが、状態の良い個体になかなか出会わないのが残念!米国にはParkerの収集家が多いのに・・・不思議じゃ。

 さて依頼内容だが、ボタンフィラーがスカスカで一切インクを吸わないとか。まずは分解してみたら、内部のI-Barというインクサックを押す部品の長さが足りない。どうやらサイズの違う部品を取り付けてある。

2009-01-07 022009-01-07 032009-01-07 042009-01-07 05 ペン先だが、これはBニブを削ってFに削りだしてある。ただ元々のペンポイントが若干斜めに取り付けられていたと見えて、左右のペンポイントの大きさ(幅、高さとも)がアンバランスになっている。この場合、筆記中に書き味が微妙に変化して、極めて気持ちが悪い。

 ペン先をペンポイント側から見た場合の、左右のペンポイントの高さの差は調整で直しておいた方がよい。またスリットを多少開くと、夢のような書き味になる。柔らかいニブではないのだが、ペン先が大きいだけにインクフローが良ければ、独逸製高級車の乗りごこちに似た、どっしりとした筆記感を味わうことが出来る。好みにもよるが、拙者は以前、この時代のSheafferの書き味に嵌ったことがある。当分は忘れられないほどすばらしいですぞ。

2009-01-07 06 さて吸入機構の修理だが、当初は上から2つめのサックが取り付けられていた。一見ピッタリのように見えるが、このサックは胴軸内の内径と同じくらいの太さがあり、吸入機構となるI-Barの入るスペースが無い。

 従ってI-barは常にサックを押したままの状態になり、少しの振動でもインクがピュッと漏れてしまう。長さも長い。そこで一番上のサックに交換した。これでI-Barが十分に稼働できるスペースが確保できる。

2009-01-07 07 こちらがI-Barじゃ。上から二番目のI-Barが入っていた。ところがこれでは短すぎてボタンフィラーを押してもスカスカで一切インクが吸入されない。

 ペン先研磨は得意だが、ペンの構造のあるべき姿を知らない人が修理した物に、オークションでパクっと行ったのかも知れない・・・

 正しい長さは一番上だが、それより長い部品しかなかったので上下を詰めて使えるようにした。実際に水を出し入れしてみたが、まったく問題なく吸入するようになった。大成功!

2009-01-07 08 こちらは首軸から外したペン先の表面を磨き、スリットを多少広げた状態。このペン先の長さが安定した書き味を提供してくれるのじゃ。Montblanc No.149Pelikan 400NNなど、名品と呼ばれる物はすべからく首軸内部に隠れている部分が長いのだが、このDuofoldも負けていない。こういう贅沢さが実によい!

 拙者は、1970年代の5リッター・120馬力マスタングを持っていたが、そういう意味のない贅沢さがある。当然ながらインク消費量が無駄に多いわけではないので、マスタングよりはずっとまし。渋滞では1リットルのガソリンで2kmは走らなかった記憶がある。

2009-01-07 092009-01-07 10 こちらが首軸に取り付けてペン先研磨をした状態。一見変化がないように見えるが、画像に向かって上側のペンポイントをかなり研磨して厚みを揃えた。

 これでどのように書き味が変わるかな?と試し書きしてみたら・・・懐かしい!往年のSheafferを彷彿させるParkerの書き味!

 この時代のジェードグリーン軸はインクやゴムサックの成分の影響で、黒く変色している物が多い。従って米国のコレクターはインクサックを取り外して保存しているらしい。おそらくは、この個体もそうやって保存されていた物が放出され、それに不釣り合いなインクサックを入れ、あり合わせのI-barをセットして、さらには細字に改造して売りに出されたのじゃろう。

 不憫な状態であったが、ようやく持てる実力の80%程度は出せるようになったのではないかな?

 もし軸の汚れは気にしないで、書き味だけを追求するのであれば、Vintage DuoFold、特に、カナダ製Duofoldは良いですぞ。お試しあれ!


【 今回執筆時間:6時間 】 画像準備2h 修理調整2.5h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   
        


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Posted by pelikan_1931 at 07:45│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
どーむしゃん

ゴムサックに含まれる硫黄分で変色するのだと思われます。従ってゴムサックを外して保存していたコレクターから入手しない限り、軸は変色しています。

また使っていれば、キャップがインクで着色されることもあります。一般的には軸が黒くなっていますがいかがでしょう?
Posted by pelikan_1931 at 2009年01月11日 11:42
つきみそうしゃん

この個体は、やはり米国の手練れのコレクターが管理していた物だと思います。

軸が黒く変色しないのはゴムサックを外していたから。
だからこそ、最近ゴムサックを嵌めた人が大きさを間違えて入れてしまったのだとわかりました。
Posted by pelikan_1931 at 2009年01月11日 11:39
あ、コレ持ってます(w
でも軸の色とキャップの色が違っているのか変色しちゃったのか。。。
こんど見ていただきたいです。
Posted by どーむ at 2009年01月10日 11:09
 さてこのペンの来歴はいかに、というところですね。新年会で明かされるでしょうか・・・。
Posted by つきみそう at 2009年01月07日 12:50