第16章は定量的な話ばかりなので、多少定性的な話題を!
最後の方で、パイロットのブラック・インク(カーボン入り)の話しが出てくるので、【黒い物】を捜していたら・・・
今週月曜日から社員犬になった「クロ(仮名)」がいた。社畜ではなく、社員犬!ちゃんと社員番号もアサインされる予定。もちろん給与も払われるし、接待費を請求する権利もある。
社長がペットショップで、眼が合って、先週末確保したらしい。犬の種類は良く知らないが、チワワらしい。男の子で昨年の12月末生まれ。現在は片手に乗る大きさだが成犬になっても大きさはそれほど変わらないとか。
犬嫌い猫好きの拙者だがこれは犬ではないと判断した。【猫】の一種に違いないと結論付け閑さえあればちょっかいを出している。
拙者の指はプヨプヨして噛みやすいのか、ずっと噛んでいる。つきみそうしゃんが犬の写真は動きが速すぎてブレる!と書いていたがやっとその意味がわかった。20枚ほど撮影して、これ以外は1960年代の森山大道、中平卓馬・・・ブレ、ボケじゃ。この写真もブレているがストロボ発光させるのは忍びないのでしようがない。
【インキと科學】 は375頁の大作だが、今回紹介する第16章は126〜130頁に記載されている。インキ中の鉄分を各国がどういう基準で設定しているかを記した物。そして最後に衝撃の事実が明かされる。
★英国での基準 英国文具局【British Stationary Office】の規程書【Specification】
1. 保存書類(Record Purposes)に用いるインキの鉄分はインキ総量の0.5%以上であること
2. 萬年筆に用いるインキの鉄分はインキ総量の0.2%以上であること
渡部氏の憤慨点は、鉄分の下限は規定されていても上限が規程されていないこと。これを是とすれば、証券用インクを萬年筆用として売っても良いことになる。そんな事をすれば、すぐに詰まってしまう。
英国紳士の国では、細かい規程をしなくても、紳士の常識として適切な運用が出来ていたのかも知れないが・・・
★独逸での基準【プロシア政府の法規より】
1. 証券用インキ(Documentary Ink)はタンニン酸および没食子酸の含有量は2.7%以上であることが必要で、鉄の含有量は0.4〜0.6%であること。すなわち、鉄量に対するタンニン類の量は 1:4.5〜6.75 にあたること。
2. 書写用インキ(Writing Ink)はタンニン酸および没食子酸の含有量は1.8%以上であることが必要で、鉄の含有量は0.26〜0.4%であること。すなわち、鉄量に対するタンニン類の量は証券用インキと同じく 1:4.5〜6.75 にあたること。
さすが独逸だけに、だいぶ具体的になっている。最大限と最小限が記載されていることは評価できると。一方で渡部氏は、【この規程ではタンニン酸と没食子酸をひっくるめて、それに対する鉄分の量を規定しているが、元来タンニン酸に対する鉄量と没食子酸に対する鉄量はたいそう差があるものなので、これらの合計量に対して鉄分の量を規定するのは、ずいぶんと乱暴な話しである。この点において独逸の規程も明らかに不条理を暴露している】とさんざん!
★米国での基準【規格統一局通通達182号及び183号】
1. 記録用インキ(Record Ink)における含有量はタンニン酸2.34%、没食子酸0.77%、硫酸第一鉄3.0%以上であること。すなわち鉄量に対するタンイン類の量は1:5.05である。
2. 書写用インキ(Writing Ink)における含有量はタンニン酸1.17%、没食子酸0.38%、硫酸第一鉄1.5%以上であること。すなわち鉄量に対するタンイン類の量は記録用インキと同じく1:5.05である。
これは書写用インキは記録用インキに比して、各含有量がちょうど2倍になっている事を示している。これはスタンダードインキとして提唱された配合率をそのまま取り入れたものであることが付記されていたらしい。
渡部氏の研究によれば、タンニン類に対する硫酸第一鉄の割合は明らかに過大であるとのこと。
しからば日本の規程はというと・・・無かった!
間違っていても良いので、まずは規程を作り、真実がわかれば規程を変えればよいという考え方と、完璧な内容になるまでは規定は出さないが、出したからには内容が間違っていても守らせる・・・という国民性の違いかも知れないな。
そして最後に、【クロ】の話。
欧米諸国に比して、日本で規程が遅れている理由について渡部氏は、【日本には墨があったから】と断じている。従来は公文書には必ず墨を使うことになっていたが、当時でも通常のインキが使われるようになっていた。
それに対して渡部氏は、【インキ研究家の立場からすれば、永代保存する書類とか改竄を防ぐべき書類には墨を用いて欲しい】と述べている。ただし、【パイロットには萬年筆用ブラックというインキがあり、これにはカーボンを主剤に作られたものであり絶対不滅である】と宣伝もしている。なかなか巧妙な戦略。
パイロットにもカーボンインクがあったわけだが、どんな書き味だったのか試してみたいものじゃ。
【過去の記事一覧】
解説【インキと科學】 その15
解説【インキと科學】 その14
解説【インキと科學】 その13
解説【インキと科學】 その12
解説【インキと科學】 その11
解説【インキと科學】 その10−2
解説【インキと科學】 その10−1
解説【インキと科學】 その9
解説【インキと科學】 その7−2
解説【インキと科學】 その7−1
解説【インキと科學】 その6−2
解説【インキと科學】 その6−1
解説【インキと科學】 その5
解説【インキと科學】 その4
解説【インキと科學】 その3−2
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解説【インキと科學】 その2−3
解説【インキと科學】 その2−2
解説【インキと科學】 その2−1
解説【インキと科學】 その1