万年筆評価の部屋:土曜日の調整報告　【 Pelikan 400 黒縞 14K-EF　はかない書き味】

2009年03月14日

　今回の依頼品はPelikan 400。あまり見たことのない黒縞軸じゃ。存在自体は知っていたが、実際にしげしげと手に取ってみるのは初めて。

　黒縞といっても半透明の軸なので、一見黒軸に見えるが、よく見ると縞が透けている・・・ような感じ。なかなか良い！症状としては、ピストンがかなり硬い。また書く際にかなり繊細に引っ掛かる感じがする。

　ペン先は強く寄っているわけではないが、スリットは開いていない。またペン先が薄いので、ちょっとした加減で左右どちらかのエッジが引っ掛かる。繊細に引っ掛かるとは自分でも良い表現じゃわいと感心するほどの引っ掛かりよう。

　柔らかいニブが引っ掛かる際はかなり難儀する。少し柔らかさを減じる必要がある。画像でわかるように、ハート穴からペンポイントまでの長さの半分よりも、ペン芯の先からペンポイントまでが長い！もう少しペン芯を前進させるほうが良かろう。

　この向きから眺めると、ペン芯の後退具合がいっそう目立つ。ペン芯を後退させるのは書き味を柔らかくすると思われているが、挙動が不安定になるので実は扱いにくい萬年筆になってしまう。

　特に猫背形状のPelikanのニブには好ましい調整ではない。一方でペンポイントの形状は好ましい形をしている。ということはエッジをほんの少し研磨すれば良い具合になると思われる。

　ピストンが硬いのは中にシリコングリースを塗ればよい。M800などと違い、尻軸は押し込み式。引き抜くための専用工具は持っているが、引き抜くのはよほどの不具合がある場合以外はやめておいた方がよい。抜け癖がついてしまう。

　そこで今回は友人からいただいた、歯医者さん用の専用工具を使ってシリコングリースを軸内に塗る事にした。ペン先ユニットをねじ込むネジにはグリースをつけないで、胴軸内部にだけグリースを塗るのじゃ。

　工具の耳かきのような方の背中にシリコングリースをつけ、そっと胴軸のシリンダー内部の壁に広げる。なかなか面白い。

　ペン芯とソケットホルダーはまったく劣化していないが、若干緩かったので、もう少し径がきつい純正品と交換しておいた。それにしてもペン先は綺麗。かなりスキルのある販売店から購入したのであろう。

　ペン先の画像を眺めていると、あっという間に時間が経過してしまう。どうやら拙者が一番好きな萬年筆パーツはぺん先になったらしい。数年前まではあきらかにペン芯マニアだったのだが・・・

　こちらが再セットしてスリットを調整したペン先。もちろん若干お辞儀の力も緩めてある。

　ペン芯の先端はハート穴からペンポイントまでの中間より前になった。また右側画像のスリットの空き方の微妙さは素晴らしい！自画自賛！先端部の形状も若干変えてある。

　結果として繊細で儚い書き味になった。そっと触れるだけでインクが出るが、これ以上力を入れると壊れてしまうのではないかという気遣いが必要な書き味。実際には丈夫だが、触れるだけならだまされてしまいそう。まさに魔性の女のような書き味になった・・・かな？

今回執筆時間：5時間】 画像準備1.5h　修理調整2.5h　記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

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万年筆評価の部屋

2009年03月14日

土曜日の調整報告 【 Pelikan 400 黒縞 14K-EF はかない書き味 】

土曜日の調整報告　【 Pelikan 400 黒縞 14K-EF　はかない書き味】