2009年03月19日

解説【インキと科學】 その21 

 「クロ(仮名)」の写真を冒頭に載せようとしたのだが・・・カメラが無くなった。正確に言うと、宅急便の配達待ち。札幌からの帰りの飛行機の座席前のポケットに入れたまま降りてしまった・・・

 幸いなことに、座席番号の記録が残っていたので、連絡して着払いで送ってもらっているところ。

 「クロ(仮名)」は最近、おいしい物をもらっているせいか、ドッグフードをガツガツとは食べなくなった。多少残してこちらの顔色を見て、もっとおいしい物を出すのではないかとうかがっている。ダメだとわかると、少しゆっくりと食べてみたりする。多少悪知恵がついたらしい。

 この21章は、【おばあさんの知恵】のように役立ちそうな内容じゃ。題して【インキの染み抜き】

 当時のインクにもウォッシャブルとパーマネントがあった。当時から衣類の汚染をいやがって重要書類以外はウォッシャブル・インキを用いる人もいたらしいが、主流はあくまでもパーマネント・インキ。

 渡部氏の指摘では、衣服についたブルーブラック、ブラックを落とすのは難物中の難物だったとか。いわんや証券用のインキのシミを落とすのは、本職の洗濯屋でももてあますもので、インキの色はどうにか落とすことが出来ても、シミの跡が残り、それが容易には綺麗にならなかった。

 この章で紹介されているのは、3つの液を使った染抜法で、たいていの場合、見事に成功すると太鼓判を押している。

 ただし、以下の方法は木綿、麻、絹に対しては有効だが、羊毛に施してはならない。それは羊毛自体の染色まで落とす恐れがあるから・・・

 逆に羊毛以外であれば、大抵の物に有効で、縮みも起こさず、地色も害せず、生地も傷めないで染みが抜ける。

 まずは、3液を準備する。

 A液:石鹸を温水に溶かして、非常に濃いシャボン液を作る。
 B液:26%アンモニア水と過酸化水素とを半々に混合した液を作る。
 C液:十匁の重亜硫酸ソーダを三合の温水に溶かした液を作る。

 シミのついたものをA液に少なくとも5分間浸け、時々液の中を上げ下げして、液を十分に染みこませる。すると、その間にシミのインキの色はほとんど消えるはず。

 要するに、アルカリ液に入れるとインキの色は消えやすいと言うことか?そういえばpH12.5のアルカリイオン除菌クリーナーをスプレーすると手についたインクはほとんどが落ちる。

 次にシャボン液のついているままB液に浸ける。そして同じく5分間は品物を上げ下げしながら液を良く染みこませる。

 それでもシミが落ちていなければ、C液にの中に入れ、黄色いシミが消えるまで浸けておく。そして綺麗になったところで薬液を洗い流せば終了!

 補足として、インキのシミを抜くには、早いだけ落ち易いということ。シミがついた直後なら最も良く落ちるのじゃ。

 ペンクリにインクを入れたままの萬年筆を持ち込む人がいる。調整を始めると途中で一々手を洗えないので、時間が経過してしまう。となれば、調整終了後は手はインクのシミで汚れ、アルカリイオンクリーナーで洗ってもクレンザーで擦っても汚れたまま・・・。時間が経過するとインクは手から落ちにくくなるのじゃ。特に色彩雫が入っていると悲惨な状態になってしまう。

 絶対に色彩雫を入れたままの萬年筆をペンクリに持ち込んではならない。プロの調整師の方々は何もおっしゃらないが、手を洗う際に非常に難儀されている。手荒れで悲惨な状態になっている方もいる。色彩雫の成分が手を荒らすのではなく、長時間ゴシゴシ洗う必要があるので手に悪いのじゃ。インクを抜いて持ち込むのが礼儀!お忘れ無く。



【過去の記事一覧】

解説【インキと科學】 その18−20  
解説【インキと科學】 その17   

解説【インキと科學】 その16    
解説【インキと科學】 その15   
解説【インキと科學】 その14     
解説【インキと科學】 その13           
解説【インキと科學】 その12   
解説【インキと科學】 その11      
解説【インキと科學】 その10−2    
解説【インキと科學】 その10−1    
解説【インキと科學】 その9   
解説【インキと科學】 その7−2     
解説【インキと科學】 その7−1 
解説【インキと科學】 その6−2 
解説【インキと科學】 その6−1  
解説【インキと科學】 その5  
解説【インキと科學】 その4   
解説【インキと科學】 その3−2 
解説【インキと科學】 その3−1  
解説【インキと科學】 その2−3    
解説【インキと科學】 その2−2  
解説【インキと科學】 その2−1  
解説【インキと科學】 その1



Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(18) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 文献研究 
この記事へのコメント
師匠

カビも生物ですので、中性付近でよく発育するものが多いです。
ただ中には強酸性の環境で発育するカビもおり、古典インク中でカビが繁殖し、万年筆が詰まったという事例も知られています。
平凡社新書 「カビの常識 人間の非常識」 p81〜
Posted by がりぃ at 2009年03月23日 12:24
あいあん しゃん

パーカーのデュオフォールドのペンポイントの先端部で、毒キノコの胞子のように、あるいはカビのように花開いたエメラルドを友人宅で見ていらい、このインクは使わないようにしています。

中性インクは雑菌に弱いのかも・・・
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月23日 03:45
師匠、ありがとうございます。
次回九州大会までには、もっと自作インクの完成度を上げて、参加したいと思います。
Posted by がりぃ at 2009年03月21日 22:02
ペリカン堂様

私も色見本ではわからずだいぶ不要なインク買ってしまいました。
DCスーパーショーブルーとミッドナイトブルーズも買いましたが
これはちょっと違いました。でも悪くない色なんで他のペンで使ってます。
ただペンメーカー製のインクじゃないので吸入式には使えないところがネッ
クですが・・・
Posted by あいあん at 2009年03月21日 03:38
師匠 エメラルドはそんなに怖いインクでありましたか・・・

あの濃いグリーンはなかなか無くてとても気に入っておりまして
パーカーのマンダリンイエローに入れております。
やっぱりパーカーでも危ないでしょうか???ちなみにサファイヤはビッグ
レッド・センテに、ルビーレッドはインター黒軸に入れております。抜いた方が良い
でありましょうか・・・・
ガクガクブルブルであります。
Posted by あいあん at 2009年03月21日 02:09
あいあん様

アドバイスとコメントをありがとうございました。
いつ買ったか記憶がないくらい昔買ったパカー・ソネットでカートリッジで長年使っていたため、臭いがあるとは知りませんでした。
インクが来るのが楽しみですね。届いたらくんくんしてみます。

「趣味の文具箱」に出ている色見本、インターネットでインクを取り扱っている店で出している色見本、ネットでのやりとりなど参考にしてプライベートリザーブインクを取り寄せてみましたが、最初ミッドナイトブルーでこれは暗すぎました。次にレイクプラシッドが近いとのどこかでの書き込みを見て買ってみましたが、これはむしろロイヤルブルーとあまり差がない感じで、一番近かったのはアメリカンブルーかなと思いました。

自分で混色することも考えましたが、レシピが分からず。有益な情報を提供していただいたので今度チャレンジしてみたいと思います。

Posted by ペリカン堂 at 2009年03月20日 23:31
あいあん しゃん

エメラルドは別名、軸溶かし液と呼ばれております。危険です!
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月20日 23:25
がりぃ しゃん

ぜひ自作のインクをWAGNERに持ち込んで下され。
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月20日 23:23
5
こんにちは、いつも特にインク関係の情報を参考にさせていただいています。古典ブルーブラックのインクの蓋を開けるときに、仕事用のワイシャツに散らしてしまい、奥さんに怒られたばかりでしたので、大変タイムリーな情報でした。
本格的に万年筆を使い始めて1年足らずの初心者ですが、暇さへあれば、ペン!ペン!ペン!ファウンテンペン!をはじめとする万年筆関連の資料を読んでいるので、奥さんには、すっかりあきれられています。
Posted by がりぃ at 2009年03月20日 23:12
師匠、ワーグナー各位
いつもお世話になっております、あいあんと申します。

ペリカン堂様、気に入ったインクがディスコンしていると探すのが大変であ
りますね。
私も昨年秋頃からペンマンサファイヤに惚れてあちこち探しました。
色も格別でありますが匂いも良いのですよね。蓋を開けるたびに意味もなく
くんくん嗅いでしまいます。
私も無くなったときの為に他社のインクをいろいろ探しましたが全く同じ
色合いはないものですね。で最終的にたどり着いたのがプライベートリザー
ブのインクでありまして、エレクトリックDCブルー1に対し同じくP/R
のアメリカンブルー2という割合で混ぜるとかなり似ているのではないかと
思います。
フローもサファイヤと同じくすごく良いので書いた跡がインクでかまぼこの
ように盛り上がってくれます。ただしあの香りはありませんが・・・
私はもったいないので乾燥期はサファイヤ入れておりません。(すぐ干から
びて勿体ないのでもっぱらP/Rを使っております)
ペリカン堂様も予備が見つかると良いですね、私も今もだにサファイヤと
エメラルド探し続けております。
Posted by あいあん at 2009年03月20日 21:35
ごんぞう しゃん

アルカリイオン洗浄水とメラミンスポンジはのコンビは最強じゃが、メラミンスポンジの欠片が洗面台の栓の付近にたまるのがイヤで、結局は独逸製クリーナーで手を洗っている・・・
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月20日 09:55
ペリカン堂しゃん

最近は、動く度に大きなウンチをあちこちに残すので、社員の目が下にばかり向くようになった。
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月20日 09:53
玉しゃん

おそらくは爪の間に入ったか、爪と甘皮の間に付着したのでありましょうな。
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月20日 09:52
こうのすけしゃん

今から7月が楽しみです!
Posted by pelikan_1931 at 2009年03月20日 09:51
いつも楽しく興味深く拝見させていただいています。
万年筆初心者で、色々と知りたい事がありここにたどり着きました。
皮膚についたインクは本当に落ちにくいので、自身も困っていたのですが、最近洗剤と共に「メラミンスポンジ」を使用してインクのついた皮膚をこすると比較的インクが落ちやすい事を発見しました。
でも、ペリカンのインクでしか試しておりませんので万能なのかどうか確認はしておりません。
こんな事はもうご存じかもしれませんし、それではダメなのかもしれない事が分かっているのかもしれませんが。もし有効な方法の一つであるのならお試しいただければと思い、日頃拝見させていただいている感謝もありあり書かせて頂きました。
長々と書かせて頂き失礼いたしました。


Posted by ごんぞう at 2009年03月19日 22:13
師匠がインクのことを書かれた日に、どういう巡り合わせかずっと探していたPARKERのSAPPHIRE BLUEをボトルで手に入れることができました。製造中止になってからかなり経過しているため、よもや手に入れることができるとは思いませんでしたがネットで発見。もう1瓶とPCを操作したら案の定「SOLD OUT」の表示。最後の1瓶だったのかもしれません。ラッキーでした。PARKER以外の万年筆に使用すると色々と不具合がでるらしくて、注意しながら大事に使いたいと思います。似た色はないかとプライベートリザーブやらたくさん買い込んでしまい、使い切るのは結構大変そうです。このシリーズも勉強になるので参考にさせていただいています。おかげでインクのことに少しは詳しくなれたような気がします。

ワンコの教育や飼育は、関係者の意見の一致がなかなか難しいです。私はドッグフード以外はやりたくない主義だったのですが、それでは可愛そうと家族が人間の食べるものを何でもやってしまいます。そうすると、お裾分けがないと見極めがついてからでなければドッグフードなどは食べなくなります。栄養バランスや健康管理が心配になります。

Posted by ペリカン堂 at 2009年03月19日 20:15
色彩雫は本当に落ちないですよね。
指についてすぐに洗っても皮膚にしみ込んだ染料が残り、
完全に落ちたの一週間後でした。
Posted by 玉 at 2009年03月19日 17:42
1月にはお世話になりました。こうのすけです。すいません分かりませんで、次回7月にはインクの抜いた状態でお伺いいたします。何かと勉強になります。
Posted by こうのすけ at 2009年03月19日 14:04