修理不能だとサジを投げかけていたオマス・パラゴンの高級ラインの修理に光明が見えてきた。完全分解出来たのじゃ。
このパラゴンは今年3月の定例会でお預かりした。インクが入って書ける状態でペンクリで診察したのだが、一度書くと手が異様に汚れる。持主に確認すると【金属とセルロイドの境目からインクが滲み出てくる】とか。
詳細に調査すると【キャップリングの隙間、首軸の隙間、尻軸の隙間】、すなわちありとあらゆる隙間からインクが滲み出ていることがわかった。
構造がわからないので、力一杯は捻れない。金属とセルロイドであれば圧倒的にセルロイドが弱いので、捻った瞬間に割れるかも知れない・・・。とはいえ、多少力を入れて捻ってもビクともしない。
【お手上げですな・・・】と持主に伝え、月末の定例会で返却予定にして、昨日の定例会に参加し、持主と話しているうちに、貴重な追加情報を得た。
なんでも最初に買った時、尻軸をひねっていたら尻軸が外れた。中には管のようなものにピストンが組む込まれていたとか。また、同じタイプで、おなじような症状が出ていた他の会員のパラゴンを拙者が直した聞いた・・・・とか。
尻軸が外れたパラゴンを海外の販売店に修理に出して、返ってきたのが今回のもの。おそらくは新品と交換したのでしょうというのが持主の意見。
そこで拙者は仮説を立てた。これは修理ミスではないか?組み立ての時に、水漏れ防止措置を取らなかったのではないか?という仮説じゃ。
また、左に捻って尻軸が外れたのなら、逆ネジということはない。これが一番貴重な情報だった。以前のOMASはインナーキャップのねじ込みが逆ネジだったので、ネジの方向について確信が無かったのだが、これで安心!
定例会+宴会を終え、自宅に到着すると、この尻軸を外すために注文していた、薄型モンキースパナがメール便で届いていた。 早速それを使って尻軸受けの金属部分を捻ると・・・外れた。と同時に真っ黒なインクの名残がどっと出てきた。そして首軸も渾身の力で半時計回りに捻ろうとしたが、その前に冷静に・・・と考え、真っ直ぐに引っ張ったら割と簡単に外れた。
どうやら、左画像の透明管で尻軸と首軸がネジで繋がっており、尻軸のピストン機構金具を外さないと首軸が外れない構造になっていたのじゃ。
そしてインクは首軸先端部から、胴軸と透明管の間に入り込み、そこから外側に漏れていったのじゃ。ピストン機構内部のインクが漏れ出したのではない! ペン芯に含まれたインクが、金属製首軸の内側に固定された透明軸の外側ネジと首軸との隙間から、毛細管現象で入り込み、それが透明軸と胴軸の隙間を毛細管現象で伝わっていき、ついには、尻軸を固定する金属ユニットにまで伝わったということじゃ。
キャップからインクが漏れ出したのは、偶然の産物と思われる。キャップリングとキャップの隙間が、たまたま漏れ出したインク溜まりの上に乗って、同じく毛細管現象でキャップリングの内側全体に拡がり、洗っても洗っても隙間からインクがちょっぴりにじみ出す状態になっていたのであろう。一晩、ロットリング洗浄液につけたら、綺麗になった。
この判断が正しければ、インク漏れの処置は、透明軸先端部と金属製首軸との間だけを塞げば良いことになる。はたして理屈通りに行くか?結果は24日の定例会で、持主だけが知ることが出来るのじゃ。