今回の依頼品はWaterman オペラ。これは拙者も大好きで何本も購入した。現在では一本を残して全てお嫁に行ったかな・・・
初めて輸入筆記具カタログに掲載された時には6万円だったはず。それでも安いと感じたものじゃ。拙者が黒のチェイス柄が好きなのは、このオペラから刷り込まれたのは間違いはない。そのあとのParker グリニッジでトドメを挿された感じかな・・・ 症状はペン先が多少ひっかかるのと、インクフローが悪いこと。
左画像でわかるとおりかなり強く寄っていた。手でエラを反らそうとしても無駄!非常に戻りの良いペン先なのじゃ。これには参った・・・何度やってもスリットが開かない!ものすごい力で寄っている。こんなに寄りの力が強いル・マン100型のペン先は初めて! それでは首軸から外して・・・と思ったが、コレが抜けない。ヒートガンで炙ってもビクともしない!しかたなく80度くらいのお湯につけて、5分に一回くらいコンバーターでお湯を上げ下げすること数回・・・これを繰り返して40分後にやっと抜けた!
ペン先は第二世代で、丸いハート穴付き。この世代まではペン先は柔らかい。ただし切り割りがO脚状になっている個体もあり、そうなるとインクが切れる。
ハート穴があるということは、ここから空気を入れることを意味するが、この部分に不具合があるのか、筆記途中で急にインクが切れる症状が出る個体もある。次の世代のペン先からは問題が消滅したようじゃ。 ペン先をペン芯と分離したことによって調整はずいぶん楽になった。特にペン先のスリットを拡げる作業などはまったく能率が違う。
画像でわかるように腹開き気味に調整したが、首軸に挿さったままでは手の施しようがない・・・。それにしても時間のかかった調整であった。研磨などはすぐに終わるが、左右のバランス、寄りなどにこれほど苦労したのは初めて。 こちらが横顔。二段上の横顔画像と比べれば違いがわかろう。
依頼者の筆記角度に合わせてペンポイントの斜面角度を大きく変えた。これでヌラヌラの書き味が実現できる。もしベースがBやLだったら、よりいっそうぬらぬら感が増したであろう。
ル・マン100系は首軸先端部に弱点があった。金鍍金部品なのだが、この鍍金がハラハラとフケのように剥がれ落ちる。そうすると、その下の真鍮部分が犯されはじめて小汚くなる。
それが気になる人は、コンバータではなく、カートリッジを装填して使ってるようじゃ。Watermanのカートリッジはコンバーターよりもはるかに容量が多いので、色さえ気に入れば絶対にお奨め!
最近、国内外で新作インクがどんどん出るが、あらゆる環境下でテストされたものではないので、かなり危険なものもある。ただ、分解清掃方法がわかっていれば、怖い物はない。たとえ証券用インクを誤って入れた萬年筆でも救出可能じゃ。こころおきなくインクをおたのしみ下され。