2009年12月10日

【Pelikan Red Book】 その18

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 今回は65頁から69頁まで。Pelikanのオフィス製品の一部を取り上げている。

 左端の写真が何を示しているのかは不明。カレンダーを見ると1916年4月22日。この日はYehudi Menuhinが生まれた日。バイオリニストであり、後にMontblancの音楽家シリーズのモチーフになった。たしかクリップがバイオリンのような形をしていたはず。

 1916年ベルリンオリンピックが開催された年でもあるので、独逸国内は沸き返っていたのではないかな?

 ちなみに1916年4月22日土曜日。すなわち、まだ週休2日制は独逸でも無かった時代。一つのカレンダーであっても、歴史を紐解くとおもしろいものじゃな。

 拙者の高校生時代にインターネットがあれば、世界史が好きになっていたかもしれない。大嫌いで10段階評価の2だった事がある・・・

 66頁はインクリボンの入っていた缶やベークライトのボックス、カーボン紙などが写っている。このカーボン紙はタイプライターで複数枚同時にタイプする際に、間に挟んで使ったものと思われる。

 拙者が社会人になった1975年当時は、外資系IT企業であっても、タイプライターとカーボン紙は必須アイテム。契約書などはコピーした物に押印するのは失礼!という文化であった。

 67頁は当時のポスター。左側がタイプライター・リボンで、右側はタイプライターで使う帳票らしい。昔のPelikanのカタログを見ると、カーボン紙を事前に綴じ込んだ帳票がたくさん掲載されていた。

 このページに出てくるOTINOLが何かはわからない・・・気になる。インクなのか、薄め液なのか・・・

 68頁の左下の商品を少し解説。一番下の缶には画鋲がはいっていた。何度もオークションで落とした記憶がある。Pelikanolというのは糊。拙者がGetしたものにはスティックがついていた。もちろん糊は固まっていて使い物にはならなかったがな。


 非常に興味深い部分なので、attempto(1477番)しゃんに補足説明をお願いしたい。よろしく!



☆☆ ここからがattempto(1477番)しゃんからのコメントから転記したものじゃ!


これまで教育現場向け製品が何度も登場しましたが、今度はオフィスですね。

なお1916年は第一次世界大戦のまっただ中で、同年に計画されていたオリンピックは中止されました。20年後にナチス治下のドイツでようやく実施されたのが、レニ・リーフェンシュタールの監督作品『オリンピア』で強烈な印象を残すベルリン・オリンピックです。

65頁の写真は、同じハノーファー市に工場を持っていたコンチネンタル社のオフィスで帳簿をつける事務員たちだそうで、背後に張られた巨大なドイツ地図が目を引きます。プロイセン王国のため、ドイツ帝国が全体に東に大きく張り出していた時代、ユトレヒト半島が地図のかなり左側にあるのを認めることができます。

本文が扱うのはタイプライターの普及について。1877年のレミントンNo. 1をはじめとする初期のタイプライターは、打ち込んでいる文字が見えないという別の意味でのブラインド方式でした。U字型に湾曲した印字アーム部分を装備し、書いた文字が見えるアンダーウッド・タイプライター(開発したのはアメリカに移住した別のワーグナー氏)の発売が1898年。これで一挙にタイプの普及が進み、ペリカン社は1904年にインクリボンを発売。ほぼ10年でアメリカ製のインクリボンをドイツ市場から駆逐することに成功したとのこと。

66頁写真は1930年代のオフィス製品群とタイプ用の専用事務机 Dyes No. 306(欲しい!)。67頁左写真の広告では、「リボン、交換する?」「ペリカンのインクリボンを使えば、まだ必要ないわ」と秘書二人がおしゃべり。

ペリカン社は1907年からタイプ用のカーボン紙を発売しており、これを契機にオフィス用の複写技術に進出します(あまりにも専門が違い、このあとの訳には自信なし。悪しからず)。

写真コピーが一般化するまで複写は要するに印刷。長らく主力だったのは謄写版印刷です。1924年から謄写版、1936年からPelikan-Rotafixという商品名で印刷機を製造販売。

67頁右の広告は、謄写版用紙とそのインクないし絵の具(ペースト状と液体状の2種類)とのこと(Pelikan-O-typで検索したところ、謄写カーボン紙の商標として1925年に登録されているのを確認しましたが、OTINOLは不明でした)。

68頁左上はペリカン社のオフィスの様子。女性社員たちがレコードプレーヤーのような巨大な口述録音機を横に、タイプに向かっています。右上は複写用カーボン紙の宣伝でしょうね。同じ女性が2人写っていますが、複写されたわけです。

さて、本文に戻ります。その後ペリカン社はオフセット印刷などにも、先行他社への資本参加・買収と言う方法で進出。ただし時代は電算機の時代に移りつつあり(68頁右下はハノーファー市の電算機センター。ペリカン社はアウトプット用紙を発売)、オフィス用の複写もいわゆるコピーに移行します。しかし、ペリカン社にはとくに日本のメーカーと競合するだけの資金力がなく、巨大な損失を計上。1982年にはコピー機部門の整理を余儀なくされました。

さて、一連のオフィス向け製品群の開発・宣伝を通じてペリカン社が発見したのは、顧客としての秘書・女性社員たちでした。1973年からはいわば「ミスOL」コンテストまで開催していたとのこと。今じゃ考えられない話です・・・。

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック カタログ紹介 
この記事へのコメント
attemptoしゃん

1916年のベルリン五輪はなかったのですな・・・

ありがとしゃん!
Posted by pelikan_1931 at 2009年12月10日 20:55
(つづき)ペリカン社は1907年からタイプ用のカーボン紙を発売しており、これを契機にオフィス用の複写技術に進出します(あまりにも専門が違い、このあとの訳には自信なし。悪しからず)。
写真コピーが一般化するまで複写は要するに印刷。長らく主力だったのは謄写版印刷です。1924年から謄写版、1936年からPelikan-Rotafixという商品名で印刷機を製造販売。67頁右の広告は、謄写版用紙とそのインクないし絵の具(ペースト状と液体状の2種類)とのこと(Pelikan-O-typで検索したところ、謄写カーボン紙の商標として1925年に登録されているのを確認しましたが、OTINOLは不明でした)。68頁左上はペリカン社のオフィスの様子。女性社員たちがレコードプレーヤーのような巨大な口述録音機を横に、タイプに向かっています。右上は複写用カーボン紙の宣伝でしょうね。同じ女性が2人写っていますが、複写されたわけです。
さて、本文に戻ります。その後ペリカン社はオフセット印刷などにも、先行他社への資本参加・買収と言う方法で進出。ただし時代は電算機の時代に移りつつあり(68頁右下はハノーファー市の電算機センター。ペリカン社はアウトプット用紙を発売)、オフィス用の複写もいわゆるコピーに移行します。しかし、ペリカン社にはとくに日本のメーカーと競合するだけの資金力がなく、巨大な損失を計上。1982年にはコピー機部門の整理を余儀なくされました。
さて、一連のオフィス向け製品群の開発・宣伝を通じてペリカン社が発見したのは、顧客としての秘書・女性社員たちでした。1973年からはいわば「ミスOL」コンテストまで開催していたとのこと。今じゃ考えられない話です・・・。
Posted by attempto at 2009年12月10日 14:12
こんにちは。これまで教育現場向け製品が何度も登場しましたが、今度はオフィスですね。
なお1916年は第一次世界大戦のまっただ中で、同年に計画されていたオリンピックは中止されました。20年後にナチス治下のドイツでようやく実施されたのが、レニ・リーフェンシュタールの監督作品『オリンピア』で強烈な印象を残すベルリン・オリンピックです。
65頁の写真は、同じハノーファー市に工場を持っていたコンチネンタル社のオフィスで帳簿をつける事務員たちだそうで、背後に張られた巨大なドイツ地図が目を引きます。プロイセン王国のため、ドイツ帝国が全体に東に大きく張り出していた時代、ユトレヒト半島が地図のかなり左側にあるのを認めることができます。
本文が扱うのはタイプライターの普及について。1877年のレミントンNo. 1をはじめとする初期のタイプライターは、打ち込んでいる文字が見えないという別の意味でのブラインド方式でした。U字型に湾曲した印字アーム部分を装備し、書いた文字が見えるアンダーウッド・タイプライター(開発したのはアメリカに移住した別のワーグナー氏)の発売が1898年。これで一挙にタイプの普及が進み、ペリカン社は1904年にインクリボンを発売。ほぼ10年でアメリカ製のインクリボンをドイツ市場から駆逐することに成功したとのこと。
66頁写真は1930年代のオフィス製品群とタイプ用の専用事務机 Dyes No. 306(欲しい!)。67頁左写真の広告では、「リボン、交換する?」「ペリカンのインクリボンを使えば、まだ必要ないわ」と秘書二人がおしゃべり。(つづく)
Posted by attempto (1477) at 2009年12月10日 12:57