2010年06月09日

水曜日の調整報告 【 Waterman Caren Blue 18K-M コントロールが難しい 】

2010-06-09 01今回の依頼品はWatermanのカレン。日本語の【可憐】と引っかけたわけではなさそう・・・

依頼者の悩みは、萬年筆をうまくコントロール出来ないと言うことらしい。過去に拙者も使ったことはあるが、その時の印象は【たっぷり筆圧をかければおもしろい】というもの。ボールペンが折れるくらい筆圧が強い人でも使える萬年筆じゃ。ただし筆圧が弱く、寝かせて字を書く人にとっては、耐えられないほど退屈な書き味じゃ。

2010-06-09 022010-06-09 03ペン先の形状を見て気付いた。これは迷品?Waterman CF の後継ではないかと。

CFは流麗で、今見ても魅力的なデザインなのだが、唯一、コンバーターが廃盤になっていてインク吸入が出来ないという弱点がある。ありとあらゆるメーカーのコンバーターを試したが、適合するものは皆無だった!

このカレンは、デザイン的にはCFほど垢抜けてはいないが、ロゴの彫りなどはけっこう綺麗に出来上がっている。

ただ、ここまでスリットがガチガチに詰まっていると、どんなインクを入れてもインクは出てこない。いくらなんでもこの状態での出荷は国内では有り得ないはずじゃ。

2010-06-09 042010-06-09 05こちらは横顔。萬年筆をかなり立てて書く人向けの調整が出荷時からされている。

ボールペン人口を考えれば極めて合理的な選択で、国内でもかなり売れているらしい。ただ、筆圧が低く、ペンを寝かせて書く人にとっては、極めて使いにくい萬年筆であるのも事実。

ペンポイントの切り落とし角度を見れば、筆記角度75度以上でないとピントがずれるはず。

2010-06-09 06ハート穴が無いタイプなので、空気はどこから入るのか?と不思議だったが、首軸裏面に大きな穴がある。おそらくはここから空気がはいるのであろう。

この空気をどういう経路でコンバーターまで導くのか分解して確認したいくらいじゃ。

2010-06-09 072010-06-09 08調整は簡単で、スリット拡げとスイートスポットの作り込みのみ。ただ、どちらも簡単にはいかない。

スリット拡げであるが、ペン先が外れないので、このままの状態で、スキマゲージをねじ込んで左右に捻るのだが、必ず中心部の金が盛り上がって醜くなる。

それを耐水ペーパーで落し、金磨き布で研磨し、最後に金の削りカスをスリットから吹き飛ばすのじゃ。これは結構根気のいる作業。

作業が終わり、スイートスポットも作り込んだカレンで筆記してみると、一昔前に流行したぬらぬらの書き味になった。これに対面で多少の魔法をかければ、カレンはスーパー可憐な萬年筆に変身するのじゃ。お楽しみに!


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  

Posted by pelikan_1931 at 18:00│Comments(7) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
るり千代 しゃん

対面調整では、時間の関係でスリット拡大などが難しい(拡げるのは簡単だが、痕跡を残さないように磨くのに時間がかかる)のじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月14日 08:09
モンブラン32年目しゃん

連絡先情報ありがとしゃん!
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月14日 08:06
こんにちは。
私は立てて書くタイプなのですが、やはりこのカレンはどうにも使いこなせないままです。冬のWAGNER関西大会で関西の親方様に調整していただき、掠れはよくなりましたが、日常使いの1本にはなりませんでした。

しかし春に松江を訪れ、中屋万年筆店のご主人にさわっていただくと(関西の親方様すみません。)、なにやら柔らかくなったような気がして不思議です。わずか1分足らずの間にどんな調整をされたのでしょう…。でも依然として使いづらいということに大きな変化はなく・・・めったに使わない黒を入れらて、数文字書くだけの出番を待っています。
Posted by るり千代 at 2010年06月12日 18:23
ニューウエルラバーメイドジャパン  0120−67−3152(フリーダイヤル)です。03−5818−1655もあります。
趣味の文具箱の後ろに掲載されています。ご確認ください。
K工業所で技術者育成に協力されたことがあるようです。
Posted by モンブラン32年目 at 2010年06月11日 12:59
調整ありがとうございます。この万年筆もフロー不足とスイートスポットの不適合or存在しないこと(?)(またはペン先の研ぎの角度と筆記角度の不適合)が問題だったようですね。

これは2006年にアメ横で入手しました。別の店で試し書きをしたときに、なめらかで堅いニブが生み出すしっかりした文字が書ける所が気に入りました。購入店でも試し書きをしたのですが、後から使いにくさが判明。こういうことが多くて、ペン選びも難しいです。

その意味でサービスセンターの意義は大きいですね。モンブラン32年目さんが体験されたサポート内容は素晴らしいと思いました。
Posted by yamamoto at 2010年06月10日 17:29
モンブラン32年目しゃん

ウォーターマンのサービスセンターの電話番号がわかれば教えて下され。検索では見つけられなかったので。

それにしても誰が調整しているのかなぁ?以前のWatermanなら検品は全てK工業所でやっていたので、7-3分けなどなかったのだがなぁ。
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月10日 14:40
私は、4月にカレンデラックスFニブを購入しました。しかし、イリジウムの大きさに左右の違いあり、段差があり、そのまま研いでありました。フローもよかったのですが、サービスセンターに電話相談(フリーダイヤル!)したところ受け付けてくださることに。サービスセンターでは、ニブを幾つも取り寄せてくださり、ニブ交換をして、希望の通り筆記角度45度、左に多少ねじる、フローを良くして返送してくれました。サービスセンターの良心的な対応に感謝しています。
修理後、到着した物は、書き味・フローも良く、軸の重さによって低筆圧でも滑らかに書けます。今では愛用の一本となっています。
Posted by モンブラン32年目 at 2010年06月10日 12:34