2010年06月23日

水曜日の調整報告 【 Goldfink 幅広キャップリング 14K-F さえないインクフロー 】

2010-06-23 01今回の依頼品は独逸マイナーブランドの中でも姿形が非常に美しいGoldfink。いかついデザインが多い中で唯一優雅な(独逸というよりは伊太利亜のデザインに近い)のがGoldfink。

キャップリングには 14K gold filled との刻印がある。金を薄くのばしたのを貼り付けたのかな?ルーペで見ると所々金が剥がれているようじゃ。

それにしても美しい姿!これを復刻して3万円くらいの価格設定にすれば跳ぶように売れるであろう。

2010-06-23 022010-06-23 03ペン先には GOLDFINK の刻印が入っている。おもしろいのは切り割りを入れる時に手が滑ったのか、ハート穴を通り越してスリットが・・・。日本であればこのような失敗物は出していない!・・・と言いたいところだが、残念ながら1960年頃までのペン先には、こういう物をよく見かけた。さすがに一流メーカー品では見たことはない。

ペンポイントはガチガチに詰まっており、インクがほとんど出ない。

2010-06-23 042010-06-23 05こちらは横顔。これはFニブだが、Mニブから削りだしたような形状のペンポイント。すなわちペンポイントの両側を細く削って細字を演出しようという研ぎ。

こういう研磨をすると、非常に書き味がガサツになる。ここは元々のMをストレス無く書けるようにしたほうが良いであろう。

2010-06-23 06胴体はブラインドキャップの回転吸入式。この時代の安価な萬年筆の定番。

製造されてからかなりの年数が経過しているが、軸の収縮がないせいか軽い抵抗でピストンが上下する。

2010-06-23 07こちらがペン先。安価なペンにありがちだが、首軸内部でペン先とペン芯の密着に寄与するペン先の根元が短い。いつも引き合いに出すNo.149が萬年筆の王様と呼ばれるのは、この首軸内部の金の長さゆえと勝手に考えている。

ペン先のスリットは、この段階で開いておくのがベスト。ペン芯に乗せたままの状態でスリットを開くと、ペン芯とペン先が離れてしまうことが多い。

2010-06-23 082010-06-23 09こちらがスリットを開いたペン先をペン芯に乗せ、ペンポイントを研磨した段階の画像。スリットは必要十分なだけ開いているし、ペン先とペン芯が簡単にズレない位置まで首軸に突っ込んである。

またペン先を金磨き布で丹念に磨いたので、非常に綺麗な光沢が出た。

2010-06-23 10これが横顔。調整前の画像と比べると、ずいぶんと削りこんであるのがわかろう。

当初はインク色も薄く、さえない書き味だった。これはスリットが詰まり、なおかつ筆記角度と調整が合っていなかったから。

今回はスリット拡げ、スイートスポットを削り込み、十分に研磨したので、非常に心地よい筆記が出来るようになった。あとは表面をどこまでざらつかせるかじゃな。これは依頼人との対面で決めたほうが良いであろう。


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1
h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  

Posted by pelikan_1931 at 08:30│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
yamamoto しゃん

そうそう、壊れてさえ居なければGoodです。
ただ壊れているのも多いので海外オークションでは注意が必要です。
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月26日 23:38
kammy しゃん

独逸マイナーブランドには魅力的なものが多いです。
関西地区大会では出てきますよ。
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月26日 23:37
こんばんわ。調整ありがとうございます。Goldfinkはたまたま入手した最初の1本が優れた書き味で感心し、「では2本目も…」と購入したのがこのペンでした。ところがまったくさえないフローで「こんな筈では…」と見事期待を裏切ってくれました。でもこれで復活して名誉挽回してくれますように。

Goldfinkほかドイツマイナーブランドには魅かれるものがありますね。



Posted by yamamoto at 2010年06月23日 21:06
Goldfinkは初耳です
カッコイイ名前ですね

デザインはWAGNERのセネターの感じがしました
いいデザインですね
しかも持ちたくなるデザインだと思いました
Posted by kammy at 2010年06月23日 13:34