2010年06月04日

金曜日の調整報告 【 Cartier ディアボロ 18K-M 問題指摘出来な〜い! 】

201-06-04 01今回の依頼品はカルティエのディアボロ。Montblancがカルティエ用に提供したNo.144といったところか。

胴体が14.4g、キャップが11.8g、全体で26.2g。金属部分は全身銀色に鍍金されている。このあたりのこだわりはさすが!MontblancとCartierが同じグループに入ってからのカルティエ萬年筆は非常に垢抜けてきたように思う。

依頼人の悩みは、ただスムーズに書けるだけで感動が無い・・・もっと書く喜びを与えてくれるような萬年筆に変身させて!自分では問題を指摘出来ないのでよろしく!というもの。

実はこういう調整依頼はWAGNERでは少なくない。個々の萬年筆の事情や特性を知りすぎている故の悩みじゃ。初心者は【極細でヌラヌラ】というような理論上有り得ない願望を抱くがな・・・

201-06-04 02201-06-04 03ペン先表面には誇らしげにカルティエのロゴが彫られている。拙者は32歳でタバコを初めて46歳でやめたが、喫煙のきっかけはカルティエのヴァンドームという細いタバコ。この箱に憧れてタバコを吸う練習をしたのが始まり。従って今でもこのロゴは大好きじゃ。当然、カルティエ・ヴァンドームという萬年筆も持ってますぞ。

スリットが詰まっているので、インクフローは良くないはず。少し腹開きにしてインクフローを稼ぐ必要がある。

201-06-04 04201-06-04 05こちらは横顔。一般的な研ぎなので、スイートスポット等は一切入っていない。従ってどこも引っ掛からないのだが、おもしろくもない書き味になっている。萬年筆初心者なら嬉々として使うだろうが、この程度ではベテランを満足させられはしない。

依頼者の筆記角度に合わせて多少研磨し、スイートスポットを作り込んでおこう。また、あまりにツルツル滑るのは好みではないようなので、8000番程度での仕上げとしておく。

201-06-04 06こちらはコンバーター。Cartierとの刻印はあるが、Montblancのネジ式コンバーターと互換性がある。このタイプは簡単には抜け落ちないので良いアイデアだと思う。どうして他社は真似しないのかな?

201-06-04 07ペン先を捻るとユニット毎外れる。外してみるメリットはただ一つ、ペン先の正式な太さがわかることだけ。コンバーター式はペン芯を後ろからたたき出せないので、ソケットが外れることが分解掃除の生産性を上げるわけではない。

201-06-04 08こちらがペン先の全体像。根元の部分には高価な白金系金属を鍍金する必要はないのだが、そこまで色にこだわるのがカルティエ流かな?ペン先も小さいのでコストカット穴は空いていない。またペン芯とペン先の位置は固定されるようになっている。

201-06-04 09この画像はペン先清掃後、スリットを拡げた状態。スイートスポット作り込み前の状態。

ここからペンポイント先端部を多少落し先端部が角張るように研磨する。その後でスイートスポットを削り込んでいく。最後はバフかけ!

201-06-04 10出来上がった状態がこちら。かなり広めスイートスポットを作っておいた。

インクをつけて書いてみると、Mにも関わらずヌラヌラとした感じで書ける。これは試し書きに使っているセーラー・ジェントルインク(黒)の影響かもしれない。書き味の非常に優れたインクじゃよ。

ここまで調整しておいて、あとは対面でペンポイント表面の荒らし具合を変えれば望みの書き味になるであろう。

胴体重量が軽くてヌラヌラ書ける萬年筆は、手が疲れなくて非常に有り難いことを今回再認識した。


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  

Posted by pelikan_1931 at 10:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
会長様、ありがとうございます

ウィーン・ベルリンには今月後半に参ります。
ただ、ユーロがめちゃ安なので、ペンを買えるように今は4月の散財からの回復を図っています。
ネットで調べてみるとあちこちに魅力的なお店(欧州版「○○の館」?)があるようで、うれしいやら恐ろしいやら。
あと、今はウィーンで見る予定のヴァーグナーの『タンホイザー』の予習とかをしています。○○○○○ェ○は帰国してからじっくり…。
ヨーロッパでどんなペンと会えるかなあ…(うふふ)。
失礼します。
Posted by NEXTNEXT at 2010年06月05日 01:08
おお、ドイツのMontblanc ブティックのとなりにあるホテルに泊まり、ウィーンで、ヴァーグナーの名曲を聴いたと噂のNEXTNEXTしゃん。

ハンドル名の由来は、【次次】と萬年筆を買うからか・・・?
○○○○○ェ○の調子はいかがどす?
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月05日 00:54
会長様、こんばんは

今日はサントリーホールのコンサートでハイドンがあまりにもすばらしく、うれしさのあまりお土産ショップでペンを買ってしまいました。
ショップで一番高い\5,000の水性ボールペン(↓の一番右)です。
http://www.mpuni.co.jp/newsrelease/bn/press200110-2.html
残念ながら「音楽が良かったのでペンを買ってしまう」という相関は音楽仲間には理解されませんのでこちらに書かせていただきました。
失礼します。
Posted by NEXTNEXT at 2010年06月05日 00:45
yamamoto しゃん

スイートスポットの魔力をぜひ感じて下され!
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月04日 23:37
kammyしゃん、foolsbookしゃん

何一つ無駄な物が付いていない造形美はすばらしいです!
Posted by pelikan_1931 at 2010年06月04日 23:36
そうか、スイートスポットがないのですか。不満の原因はそれだったのですか。スムースなだけで満足してた昔は幸せだったような、そうでないような。。。複雑な心境。

みなさんおっしゃる通り、この万年筆はデザイン素晴らしいですね。過剰な装飾なくスッキリとしてスキがないところがいいですね。見た目だけでなく、書き味も満足いくようにして頂いて本当に嬉しいです。ありがとうございました。

黒のジェントルインク、あまり使ったことがなかったような気がします。ペントレで配られましたよね。早速使ってみます。
Posted by yamamoto at 2010年06月04日 21:14
私の大好きな萬年筆ですね、これ。
上品で実用的、、、私もこうありたいです。
Posted by foolsbook at 2010年06月04日 18:24
こんばんは kammyです
ディアボロ 大好きです これ
個性的ですけどベーシックな感じもしてて
いいなったて思ってました
モンブランが関わってるんですね
妙に納得! ありがとうございました
ますます好きになりました
Posted by kammy at 2010年06月04日 18:10