
今回の依頼品はAurora Sole。Deltaのドルチェヴィータよりやや薄いオレンジ色の軸。これを黄色と呼ぶかオレンジ色と呼ぶかは色々意見もあろうが、オレンジ狂いの
女性オレンジャーが反応していたので、これをオレンジ軸と定義する。ただ、これはただのSoleではない。

なんとペン先には18金のハイレグニブが付いている。中部や関西のおじさま達が身もだえして欲しがるニブじゃ。
同じニブはカルロ・ゴルドーニ(やコロンボ)に付いていたが、このような限定品につくはずはない。基本的には首軸先端部が絞られていない限定品用のニブだったはず。おそらくは以前の所有者がペン先交換していたと思われる。


依頼者は、【なめらかだが、なぜかつまらない書き味。スムーズすぎてコントロール出来ない】との感想を述べている。これには感服した。
実はこのハイレグニブの弱点が、まさにそれ!FからBまで使って見たが、先細りのため、ペン先が柔かいわけでもないのに筆記が安定しない。これは14金のハイレグニブもまったく同じ傾向を示す。なぜ早々に姿を消したのかといえば、市場からまったく受け入れられなかったからであろう。
ただしインクフローを増やし、スイートスポットを削り込んでいけば、スーパーチャージを施したエンジンのように、パワーアップして蘇るのじゃ。


まずは調整前のペン先を確認・・・・ということで拡大してみると、なんと既に調整師の手を経ていることがわかった。スリットに隙間ゲージかカッターを入れて左右に捻った痕跡がある。ハート穴の一部が変形しているのがわかろう。また画像では見えないが、上から見てスリットの右側部分の金が醜く盛り上がっている。これが隙間ゲージで左右にスリットを拡げようとした証拠。
スリットを拡げると同時に、この醜い痕跡を消しておく必要がある。拡大してもわからないほどだから実用には差し支えないのだが、気分の問題じゃ!

こちらが、スリットを開き、隙間ゲージによる傷を落し、ついでにペン先全体を金磨き布で丹念に擦るとここまで輝きが出てくる。


拡大してみると、ハート穴の傷も、スリット右側の盛り上がりも消えていることがわかろう。
実は調整前はスリット両側の金の巾が違っていた。7:3分けほどではないが、4.5:5.5程度の比率であった。これを5:5になるように左側の側面を削ってバランスをとった。これも書き味には影響はないのだが、気持ちの問題!

最後にスイートスポットを削り込んだ。このハイレグニブの調整は非常に難しいのだが、今回は比較的うまくいった。
インクはにゅるにゅると出てくるし、筆記するとかすかな筆記音を残しながらペンは走る。ストップしたいところでペンは止まるし、書き出し掠れもない。
元々は格好だけで、性能的にはダメダメのハイレグニブではあるが、調整を施すことによって、格好も性能も良いニブに変身したのじゃ!
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
Posted by pelikan_1931 at 06:30│
Comments(2)│
mixiチェック
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萬年筆調整
なぜこのペンが書きづらかったのかわかりました。このペン先の弱点があったわけですね。まさに見た目の美しさを裏切ります。それと、ペン先の機能に関係ない所にも手を加えていただいてありがとうございます。美観上ますます美しくなって満足です。
ところでこのペンについては不思議な点が2つあり、ひとつは(1)新品で買ったつもりなのになぜハイレグニブが付いていたのかという点、もうひとつは(2)調整を頼んだ記憶がないという点。
(1)の購入経緯については、香港の万年筆専門でない通販会社でメールオーダーで購入し、送られてきたペンも新品、限定版のケースも完ぺき、インクも未開封。中古品を扱う店ではないので絶対新品と思っていました。なにかカラクリがあるのかな。。。香港という所がアヤシイ??
(2)これは購入から10年以上経っており、記憶も確かとは言えないのでひょっとしたらペンクリに持っていったことがあったかも知れません。そうだとしたら、セーラーかパイロットのペンクリです。