2010年06月25日

金曜日の調整報告 【 Montblanc No.144 14C-KF インクが出ないよぅ〜 】

2010-06-25 01今回の依頼品は1950年代のMontblanc No.144 14C-KFじゃ。ピストンも完璧に整備されており、外観的にはパーフェクト。クーゲルのニブの形状も美しい。それにもかかわらず生贄扱いで預けられた。これは何かある・・・

2010-06-25 022010-06-25 03生贄扱いの場合は、まず最初に書いてみる必要がある。どれほど悪いのかがわからないのでな。そこでインクを付けて書いてみると・・・

アレアレ?筆圧をかけないと紙にインクがつかない。書き出し筆圧に関しては依頼人と拙者は同じくらい。従ってコレが原因だとすぐにわかった!

強筆圧の人の場合は、何のストレスもなく当時のクーゲルの筆記感触を楽しめるのだが、筆圧が低いと書き出しでインクがまったく出ない。筆記中でも力を抜くとインクが切れてしまうほどじゃ。画像を見るとかなり寄りが強いことが想像できる。

2010-06-25 042010-06-25 05こちらは横顔。見事なクーゲルの形状!クーゲルの場合、過度に研磨するとぬらぬらの書き味になってしまう。これでは当時のクーゲルの書き味とはならない。

最近の拙者の研ぎは、可能な限り発売されていた時代の特徴を生かすようにしている。従って、今回もヌラヌラではなく、サクサクに多少ジョリジョリ感を残した調整にしよう。これが(多少荒れたペンポイントの)特徴的な書き味なのでな。

2010-06-25 062010-06-25 07左側はスリット調整前のペン先(未清掃)で、右側は清掃後のペン先の裏側。この段階でスリットも拡げてある。

今回はスリットを開いてもペン先とペン芯との間に隙間が空かなかった。とうことはかなり強くペン先を寄せていたことになる。軟らかいペン先の寄りを強くすると、筆圧に応じて線巾に大きな差が出ておもしろいのだが、低筆圧の人には難儀なだけの萬年筆になってしまう。

2010-06-25 082010-06-25 09こちらがスリット調整後画像。ほんの少しスリットが開くだけでウソのように心地よく書ける。

実はスリットを開いた段階では、カミソリで皮膚をなぞるような感じで紙に引っ掛かっていた。この引っ掛かりがイヤで寄りを強めたのであろう。

2010-06-25 10こういう場合はエッジを多少削ればよいだけ・・・のはずなのだが、今回はそこら中が紙に引っ掛かるという状態だった。この紙にかすかに引っ掛かる感じを残しながらインクはちゃんと出るという調整を施せば、クーゲルの細字らしい書き味に変わっていく。

口で言うのは簡単だが、今回は多少時間を要した。そのぶん丁寧に調整出来たので仕上がりは Very Good じゃ!


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整