今回の依頼品はLamyの限定品、Edition 2000。拙者も購入した記憶があるが、強くペンを握るほうではないので、軸が滑って書きにくく、すぐに手放してしまった記憶がある。おそらくは100文字と書いていなかったはず。
今回の依頼人も、【デザインは好きなのに、軸を持った指がすべる・・・】との感想を持っている。このペンで筆記するには、胴軸の唯一のプラスティック部分(黒い箇所)を握って書くしかなさそうじゃ。
Lamyではペルソナのチタン鍍金軸も滑った。プラチナ鍍金軸は滑らなかった。そのあたりの学習が今回の製品に反映されていない。製造技術の精度は世界最高レベルだが、材料から見た人間工学には多少問題があるかも?
首軸から出ているペン先は小さい。ガチガチに硬そうだが意外と弾力はある。このあたりは通常のLamy 2000と同じ。
拙者も萬年筆歴が浅い頃、Lamy 2000に嵌った。まったくの未調整でもぬらぬらと書けたような気がしたし、ペンポイントのばらつきが非常に少なかったという記憶がある。
今回の個体はスリットの開き具合にはまったく問題がない。実に良い感じに開いている。インクフローも上等!ただ、書いてみるとしっくり来ない。どうやらスイートスポットが無いからだろう。それにしても全体で43g、キャップだけで17.7gというのはいかにも重い。筐体が小さいだけに異様に重く感じてしまう。
こちらは横顔。ペンポイント先端部から根元に行くに従って急速にペン先の厚みが減っている!これが軟らかいと感じるペン先の秘密。
ドロドロめのインクを入れて書くと気持ち良いのだが、サラサラのインクを入れると書き味が悪化していく。これこそがスイートスポットが正しい位置にない事の証拠なのじゃ!
ペン先ユニットを取り出すには首軸部分を左にねじって胴体から外す。この際に首軸部分と胴軸部分との境目にある、円形の金属リングを無くさないこと。これが無いとキャップが胴軸に止まらないのでな!お願いしまずぞ!
こちらがペン芯とペン先。なんとペン芯はSheafferと同じく、二段ペン芯となっている。ただし中に入れるペン芯の設計は凝っている。そのあたりが米国流とドイツ流のさ差なのかもしれない。
こちらがペン先。ペン芯に差し込んであるだけ。簡単にペン芯から抜けてくれる。従って清掃は実にしやすい。
Pelikan 100 や Pelikan 100N のように、こいつも分解清掃がやりやすい。ドイツのメーカーには伝統的に、萬年筆は清掃しながら使う物!という考え方があるのかもしれない。非常に分解は楽じゃ!
今回実施したのは、いったん分解したペン先ユニットを洗浄し、インク誘導液につけてから再度アセンブルし、首軸に取り付けた後でのスイートスポット作りの作業のみ。これで十分な成果がでると読んだ。
こちらが調整後の横顔の拡大図!依頼者のスイートスポットを研磨で埋め込んでいく作業こそが調整の妙味。
本来は、スポット(点)であるが、これを出来るだけ面積を広く作り込むのと同時に、【調整したペンポイントにふさわしい使いこなしかた】を、依頼者に正確に伝えてはじめて十分な結果が得られることを忘れてはならない。
インクをつけて、おそるおそる書いてみると・・・すばらしい!まったく違う萬年筆に変身した。これなら滑ることに気を取られることもあるまい!絶妙の書き味になった!大成功じゃ!
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間