
書き味は期待通り柔らかで気に入ったのだが、作りの雑さが気になった。戦前の独逸製品は、米国などから見れば、【安かろう悪かろう】の代表と見なされていたと聞いた事があるが、たしかに当時のParkerやSheafferと比べると、軸の作りは2ランクくらい下といえよう。素材の研究が足りなかったのか、今から見れば変形しているものが多い。一方で当時の米国製品はまったく狂いが出ていない。
その中で、MatadorはMontblancなどと比較しても非常に頑丈に作られていて、狂いも少ない。MontblancのNo.13Xとよく似た作り。ペン芯の精度ではPalikanには劣っているが、Montblancとはどっこいどっこい。


そもそもペン先が首軸から出過ぎている。それほどHoldが強くない首軸なので、しっかりとペン先とペン芯を押し込まないと、筆記中に左右にブレてしまう。またペン先に大きな段差があるように見える。


そこで寄りを弱めることが必要になるのだが・・・軟らかいペン先の寄りを弱めるには時間がかかる。せっかくスリットを開いても、調整戻りが発生する。時間をかけて微調整を繰り返す必要がある。拙者の場合は経験上、どれだけ調整戻りをするかわかっているので、過調整しておくという技を使っている。一週間経過すればちょうどよい状態になる。



最近ではペンポイントの研磨も二段階で行っている。粗研ぎはペン先単体で行い、首軸にセットしてから仕上げ研ぎという手順じゃ。以前は分解した状態で仕上げ研ぎまでやり、それに合せてペン芯を調整していたが、最近では多少能率を考え、手抜きしている。


スイートスポットは削り込みつつも、当時のMatadorらしい書き味も残すという程度の仕上げにした。Vintageを現代の風味に仕上げてもおもしろくないのでな。それにしても懐かしい書き味になった。
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間