2010年07月12日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.254 14C-BB かわいた書き味 】

2010-07-12 01今回の調整依頼はMontblanc No.254、1950年代の初期モデル。透明インク窓にフラットペン芯が付いている。この時代のMontblancの材質は劣悪なのと、設計ミスがかさなって、ほとんどがキャップにクラックが入っているものだが、依頼品には一切クラックが入っていない。

2010-07-12 022010-07-12 03ペン先は14C-BBで、尻軸にもBBの刻印がある。正真正銘のMint物だったはず。軸内のインクは依頼人がインクを入れ、その書き味に耐えられず、調整に出したからであろう。ひょっとすると、箱入りで入手したのかもしれない。

独逸には、この時代のMint物が少なからず存在する。筆記具店の倉庫に眠る不良在庫がたまに発見されるからであろう。うらやましいかぎり!

2010-07-12 042010-07-12 05書き味が極悪の原因がこのペンポイント。まるでItalicのような形状じゃ。もっとも当時のBBなんてカリグラフィー程度しか用途が無かったので当たり前かもしれないが・・・

ほんの少しだけスイートスポットを入れれば、ヌルヌルの書き味も実現出来るのだが、たまには味付けを変えて、乾いた書き味に調整し、そのあとで濡れた感じに磨き上げる。こうしておけば、ペンポイントに傷が付くに従って、乾いた書き味に戻っていく。このときに真のNo.254のすばらしさが体験出来るであろう。

No.256には濡れた書き味でかなわないが、乾いた書き味ならNo.254のほうが優れている!

2010-07-12 06ペン先をソケットから抜き、ペン先に付着した汚れやエボ焼けを取り去り、スリットにスキマゲージを入れて拡げたあと、傷付いた部分を耐水ペーパーで平らにしてから金磨き布で磨き上げたのが左画像。この画像状態にするのに、30分以上かけている。調整の基本は清掃と基本的なかたちを作り上げること。ペンポイント調整は最後の数分であり、ほとんどの時間は、あるべき姿に直していくことに費やされる。

2010-07-12 07こちらがフラットフィーダーの拡大写真。綺麗に清掃した思っていても、画像のようにブルーの滓が付着している。これはルーペで見てもわからない!スキャナーだからこそ認識できる物なのじゃ。拙者が調整画像取得にスキャナーを使うのは、このゴミ発見応力を評価しているのも理由の一つ。

2010-07-12 082010-07-12 09こちらがペン先を首軸にはめた後、ペンポイントを調整した状態。以前ならもう少しペン先を首軸に押し込むのだが、最近、50年代、60年代のMontblancのダメ素材の劣化が著しいので、なるべく力を込めないように調整している。

昨晩は自分のEversharpの首軸を割っちまった。ペン先とペン芯を軽く押し込んだだけで首軸は割れた・・・。古い物は脆くなる!というのは変えがたい事実。これが拙者が生贄扱いでしか修理を受け付けない理由なのじゃ!

2010-07-12 10こちらが調整後のペンポイントの横顔。このように完全にスイートスポットを丸めないように調整すれば、乾いた書き味になる。これをラッピングフィルムで軽くなぞると、乾いた書き味は濡れてしまう。

そして、一ヶ月も使っていれば、ラッピングフィルム効果は無くなり、濡れた書き味は乾いた書き味に変わっていく。この時に最高の悦楽を堪能することが出来るであろう。


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間



Posted by pelikan_1931 at 11:45│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整