

ちまたではPelikan M320 赤軸の日本国内での販売遅延や、海外モデルと国内モデルとの色合いの違いが話題になっているが、今回の依頼品は、M320の初代、オレンジ軸じゃ。今回はおもしろい症状での修理依頼なので取り上げてみた。

最初は珍しくないほう。キャップ内部の汚れ。スケルトンでなければ気にならないのだが、内部が透けて見えるモデルの場合、キャップ内壁とインナーキャップとの境目の汚れが目立つ。
水道水で洗っても綺麗に落ちない場合もある。そのような場合の洗浄方法を伝授しよう。(初心者向け)

天冠のリングを左に回すと。クリップが外れる。そのまま、インナーキャップのペリカンマークの部分を下の押せば、インナーキャップも外れて左画像のような状態になる。
この状態で、まずはインナーキャップのエッジを良く洗浄する。石けん水や歯磨きなど使うと効果的。ただしエッジだけですぞ。
次に胴軸内部にロットリング洗浄液や超電解水を入れて振り、綿棒でゴシゴシこすると綺麗になる。

これらを再度アセンブルすれば、左画像の状態になる。まさに新品時と同じ状態!
この洗浄はすぐに出来るので、出来るだけこまめに洗浄して下され。

ここからが今回のメイン修理。まずは首軸周辺の拡大画像。これだけを見れば何の問題もないように思える。ところが、依頼品では首軸がくるくると回ってしまう。
いままで多くのPelikanを見てきたが、こんな症状は初めて!

なんと首軸が胴軸から分離してしまっている。回して固定するのではなく、接着剤で固定するタイプだが、接着剤の量が少なかったのかもしれない。見事にスポッと外れてしまっている。

問題は何故そうなったか?これが一番重要じゃ。いろいろ試しているうちに、首軸にペン先ユニットをギュっとねじ込むと、胴軸と首軸がくっつかない状態になる事がわかった。
ということは原因は一つ!首軸にペン先ユニットを力一杯ねじ込んだため、胴軸と先端部(飛び出たオレンジ色の部分)がペン先ユニットのペン芯に押されて、メキメキと接着部分から剥がれてしまったということじゃ。
教訓としては、ペン先ユニットは力一杯ねじ込むのではなく、そっとねじ込んで回転が止まったらその状態で使い始めるくらいの方が良いということ。

さてどういう接着剤を使うのが良いかだが、瞬間接着剤系は軸に悪影響を及ぼしそうに思われる。そこでアロンゆるみ止めと、サックセメントを塗り分けて対応することにした。この夏を乗り切られれば、成功と言えよう。

こちらが修理完了後の画像。ペン先ユニットは軽く首軸にねじ込む程度にしておいた。これから一週間ほど様子を見てみることにする。おそらくは問題は無いと思うのだがな・・・
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(4)│
mixiチェック
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萬年筆調整
僕のM350はやや強めにキャップを締めるのが原因なのか、外れるのではなく首軸と胴軸の接合部が割れてインクだだ漏れという症状が2回ありました。黒軸だったので、初めはインクの漏れがわからず、使っていくうちに盛大に手が汚れていき、最後は提灯お化けのようになりました…。