2012年04月06日

金曜日の調整報告 【 Pelikan Green Demonstrator タコスペ・イチオシ 】

2012-04-06 01今回の依頼品はPelikan M800 Green Demonstrator。この記事でも紹介したがPelikan M800系の限定品の中では一番古く、1992年に3000本限定で発売されている。1992年といえば、こちらにあるようにMontblanc ヘミングウェイの販売の年。定価8万円だったヘミングウェイに対し、(もし日本で発売されていたとすれば)M800 緑デモ はいったいいくらの定価になっていたのであろうか?

Montblancは企画と素材にお金をかけ、製造本数を莫大にして企画コストを限りなく0に近づけて限定品であっても比較的安く売る戦略(作家シリーズ)。一方、製造本数がMontblancより1桁〜2桁少ないPelikanでは製造する手間(手彫り)で高価格を納得させる戦略となっている。

それに対し、M800 緑デモ は製造に手間がかかっていないのでどういう価格設定にしたのか気になるなぁ。ちなみにその数年後に今は無き海外通販サイトでは550ドルで販売されていた。2年ほど前には500ドル程度でeBay落札されていたが、最近ではあまり見かけなくなり、出たとしても価格は上昇してきた。

2012-04-06 022012-04-06 03依頼人は【左持ち&寝かせ持ち + 押し書き&細字好き】という調整師にとってはかなり厳しい持ち方。実はペンクリに持ち込んで調整していただいた事があるらしい。

ペン先と首軸との位置関係から判断するに、この萬年筆はメーカー出荷から今までにペン先ユニットが分解された事はなさそう。また調整はペーパーでなされていると思われる。ペン先にペーパーで擦った痕跡が残っている。

調整依頼は・・・【もっと細書きに!】と調整師に伝えられたはずである。ペンポイント先端部には字幅を細めるための研磨が施されている。

2012-04-06 042012-04-06 05こちらは横顔。これらのペンポイントの研磨を見ると、調整師は何度も 【左持ち&寝かせ持ち + 押し書き&細字好き】 に近い趣向の持ち主の調整を経験したことがあるのがわかる。

押し書きの人の調整では、ペンポイントの腹の中腹から根元側(ペン芯側)のカーブを滑らかにする事がポイントなのだが、M→Fを短時間で研ぎ出したとすればほぼパーフェクトな仕上がりとなっている。

依頼事項としては、インクフローはこのままで字幅をさらに細くして欲しい・・・というもの。この為にはペンポイント自体の幅を研磨によって狭める必要がある。それにはペン先斜面もペンポイントの幅に合わせて削り込まないと不細工。相当時間はかかるので会場ペンクリでは無理だが、自宅で生贄扱いなら楽しめる。

2012-04-06 06こちらがペン先ユニットから外した状態のペン先。まだ調整は施していない。インクを落としこびりついていたインク瘤を丹念にロットリング洗浄液とロキュータス(新型ボーグ・ルーペ)を使って清掃した後、金磨き布で表面の擦り傷を取り除いた状態。PF刻印付きの傷一つ無いペン先になった。この美しさが際立つほどペンポイントの形状が気になってくる。


今回もペン先斜面を研磨するのに手作り研磨器具を使った。これは東急ハンズで購入した直径2.8冂度の発泡スチロールの棒に、超強力な両面粘着テープ(厚さ1个曚鼻砲蚤竸絅據璽僉次320番、1200番、2500番、5000番)を貼り付けたもの。これらで順次研磨するのだが、その際にはペン芯をやや後退させてソケットに取り付け、それを首軸にねじ込んでから研磨した方が左右のペン先のブレが少なくで研磨しやすい。 


2012-04-06 072012-04-06 08こちらが調整後のペン先。上から見るとペン先のエラの部分が円弧の状態に削られているのがわかろう。単に円筒を上下して研磨しただけでは斜面のエッジが立って醜いペン先になるので、発泡スチロールの棒を内側よりや外側寄りに(たまに)傾けながら研磨するのがコツじゃ。そうすることによって画像のように斜面のエッジが柔らかい曲線として表現される。

たまにルーペでスリットから両端までの距離をルーペで確認しながら作業すれば左右アンバランスな研ぎにはならない。この作業にはロキュータスが最適。研磨してる間はルーペをハネ上げておき、確認時のみルーペを倒して確認!というのが可能となった。

2012-04-06 092012-04-06 10ペンポイントの幅が狭くなったことによってペンポイントの斜面角度にも変更を加える必要がある。幅が狭くなれば接紙面積が狭くなり、ペンポイントが紙に食い込むようになる。それでもスムーズに押して書けるようにするには、ペン先の発進時の摩擦を減少させるため、横から見たペンポイントの角度をさらに滑らかにするのじゃ。右側画像を見れば調整前よりも幾分滑らかになっているのがわかろう。

時間の制約がある萬年筆研究会【WAGNER】の会場ペンクリは機能回復や微調整が中心。よほど時間に余裕がある時を除いては削り出しをしている時間は無い。一般的に言えば、ペンクリ会場で削り出しが出来るのはメーカーが研磨機材(通称:チャーチャー)を持ち込む場合だけじゃ。

従って今回のような本格的な削り出し(細字化)の要望があれば【生贄研磨】を希望されたし。必ずBlogに経緯が紹介されるので後日自分で微調整する際の参考にもなるのでご遠慮なく!最近また生贄が不足気味なのでヨロシク!


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1h 修理調整2h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 08:40│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
Amulorさん

もちろん!今回のペントレの目玉です!明日はサンプルだけ持って行きます。
Posted by pelikan_1931 at 2012年04月06日 20:51
ロキュータス・・・明日のペンクリ又はペントレで販売されますでしょうか?

とっても欲しいのですが・・・(汗)
Posted by Amulor at 2012年04月06日 12:27