2012年07月25日

水曜日の調整報告 【 1980年代 Montblanc No.149 14K-EF インクヲドクドク出るように! 】

1こちらは新潟で預かった最後の1本。時間切れで調整出来なかったものであって、決して調整に難儀するような状態ではなかった。
1980年代後半のNo.149で、ペン先は鉈型の円盤研ぎ。歴代のNo.149の中で、横顔は一番端正で綺麗だが、細字の書き味は極悪非道!
調整初心者の頃、どうにもうまく調整出来なくて、ペン先を机に叩きつけたことは一度や二度ではなかった。それほど(絶妙なる)細字調整が難しいのが鉈型円盤研ぎニブなのじゃ。
胴軸にはペン先の太さを示すラベルがあり、それにはEFとの印刷がかすかに残っている。まさに新品同様のNo.149じゃ。

23ペン先はガチガチに詰まっており、インクはカスカスにしか出て来ない。調整希望は、インクがドクドクと出るようにして下さい!というもの。
それにしてもこの時代のMontblancもスリットが刻印のちょうど中央に入っている。美しい限りじゃ。国産でもズレはほぼ無い。ただしコレが世界標準では無いのが残念。
国産とMontblanc以外では、今でも6:4分けニブというのをよく見かける・・・。以前は7:3分けはおろか、9:1分けすらあった。

45横顔を見ると、ペン芯がかなり前の方に出ている。ペン先のエラの先端部分が、左側画像では右から三つ目の溝の位置にある。
拙者が美しいとおもう位置は、エラの先端部が二番目の溝の前寄りぐらい。文章で表現するのは難しいので、あとで画像で確認して頂こう。

6こちらは調整前のペンポイントの正面画像。見事というしかない!段差も無く、ペン芯の中央に見事に乗っている。
ペンポイントの上下幅も同じで左右の厚みもほぼ同じ。このような美しいペンポイントには滅多に出会わない。
プロの世界では、一個のペン先調整にかけられる時間はせいぜい数分であろう。
その数分間で、ここまで追い込み調整が出来るのは、さすがMontblanc・・・なのだが、インクの出は超悪い!

7こちらはペン芯から分離した直後のペン先。コストカットが行われる直前のペン先だと思われる。
このペン先から18Kのペン先に変更された直後、伊東屋の万年筆売場のお兄さんに、【No.149がモデルチェンジしたんですが、どこが変わったかわかりますか?】と問われた。
正解はペン先が18金に変わったこと、鍍金の模様が変わったこと、ペン芯がエボナイトからプラスティックに変わったことだったのだが、拙者はペン先が18金に変わったことしか指摘出来なかった。まだ初心者だったから・・・

8こちらが調整後のペン先。スリットは多少開いてある。これによって、まさにインクはドクドクと出てくる。まったくストレスは感じない。
また円弧の一点だけが紙に接していた円盤研ぎと違い、ある程度の線が紙に接するので、紙当たりも多少柔らかくなった。

910こちらは横顔。エラの一番広い部分はペン芯の溝の前から二番目の前寄りのところに位置している。このあたりが一番美しく見えるのではないかなぁ・・・
もっとも、美意識は時間とともに変わるのでl、普遍的とは言えないがな。ただ、依頼者も以前の位置は美しくないと感じていたようなので、これで良しとしよう。

エッジの効いた鉈研ぎを、やや丸めの研ぎに変えた。前は裏書きは不可能だったが、筆圧を下げれば裏書きも出来るように研いだ。

カスカスにしかインクが出ないNo.149は【大男のすかしっ屁】みたいで貧乏くさい。No.149はやはりインクがドクドクと出て欲しい!


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
「ペン先を机に叩きつけ」こんなことしちゃうのは,わたしだけじゃなかったんですね…。きのう,わたしはレシーフ・クリスタルMを机に突き刺してしまいました。返品,四本目の悲劇です。ただたんに,インクの出を良くしてほしかっただけなんですが,レシーフでは調整が出来ないらしく,交換で対処してくれたのですが,何度交換しても解決しませんでした。
Posted by winkmirrorへら彦 at 2012年07月27日 12:49