2012年09月24日

月曜日の調整報告 【 Parker Duofold International 18K-M インク乾燥防止 & 細字化 】

1今回の依頼品はParker Duofold International。以前は拙者もParkerの新顔はほとんど入手していたが、グリニッジ(センテニアル型)で満足は頂点に達した。
従って、それ以降のモデルにはまったく興味を失ってしまっていた。
しかし、今回、Internationalをじっくりと握ってみて、【これはすばらしいモデルだ!】と実感した。キャップを後ろに挿して筆記する際のバランスが極めて良い。
回転式のキャップなのに後ろに挿した際にほとんどブレが出ないのも秀逸!以前と比べて定価が1.5倍ほどになったのだけが残念だなぁ・・・

今回の依頼内容はペン先が乾いて書き出し掠れが頻発すること、および、もう少し細い字が書けるようにとのこと。
ペン先が乾燥するのは、キャップを締めてもペン先に外気が流入することに起因している。キャップのクリップの下に大きな穴があいている。その位置がハート穴のあたり。
すなわち、ハート穴の辺りが常に外気に触れているようなものなので乾燥しないわけがない。キャップを抜く際にインクがカートリッジから逆流して高価な洋服を汚した際の訴訟を恐れたのかもしれない。
一説では子供がキャップを誤って飲み込んだ際でも呼吸が出来るようにとの配慮だとか。真実は知らない。

23ペン先の状態は極めて良い。乾燥さえなければ書き出し掠れも問題ないはず。ほんの少しスリットが開いている。
調整履歴は無いそうなので、Parkerもじわじわ品質を上げてきているなという感じがする。最近のMontblancとParkerは侮れない。海外物の中での品質はトップクラス!
残念なのは全面プラチナ or ロジウムコートのペン先は横を削れない。削ると内部の金が露出するので多少不細工になる。従って(プロはともかく)アマチュアは削らない。見栄え命なので!

45こちらは横顔の研ぎ。実に美しい。まるでOmasのペン先のように綺麗に研がれている。これをやや細字にして欲しいということなのだが・・・
ペン先の横を削って細字にする事は出来ない。その前提で細字にするには、タコスペ・超不細工にするしかない。本来ならタコスペ・コレドMなのだが横を削れないの仕方ない。
それと綺麗なペンポイントの割にはがさつな書き味。これはスイートスポットが入ってないから。これは困った・・・タコスペ・超不細工にはスイートスポットという概念が無いのじゃ。

6こちらはキャップの穴を塞ぐために天冠を外したところ。力さえあれば天冠は90%の確率で外れる。左に捻ればよい。ただし握力60kg以下だと難しいかも・・・
クリップの位置は固定されている。ちょうど穴の真上に位置し、穴を隠すようになっている。
天冠は接着剤など付けないでねじ込んであるだけ。従って力さえあれば外れる。ただ、捻る時にクリップを握るとひん曲がりますよ!お気を付けて・・・

7この穴に、セメダイン・すきまパテを細長くして押し込み、まずは、キャップの内側にはみ出した部分を細い棒で削り落とす。次に外側を爪で擦って平たくする。あとは布で擦って終わり。
このすきまパテは乾燥しないので収縮もしない。それが好都合。またいつでもほじればパテは簡単にとれる。飽きてオークションに出す場合などにはそうするのが礼儀!
画像で、穴の上の方に凹があるが、ここにクリップの内側がフックされる。非常に良く出来た設計じゃ。
今回は穴の位置が分かりやすいようにパテを押し込んだままにしてあるが、気になる場合は、パテの上に油性マジックを塗ればクリップの横から見ても穴は識別出来なくなる。

89こちらが調整後のペンポイント。横側のプラチナ or ロジウム鍍金を剥がさないようにペンポイントだけをやや細く研いだ。これによって紙に当たるペンポイントの横幅はやや減じられる。
ただしインクフローを上げるため、スリットは少し多めに開いた。ペンポイントの幅が減った分、インクフローが良くなったので、一連の作業による字幅の変化は差引ゼロ。

10こちらがタコスペ・超不細工加工。ペンポイント先端部の背中を斜めに落とす。正確に表現すれば背中を丸めるように研磨する。
これによってペンポイントの上下の幅が減って、字幅は細くなる。特に横線が細くなる。
字幅・・・という表現をするが、見た目の線の太さではなく面積。即ち縦幅×横幅面積字幅なのじゃ。従ってどちらか、あるいは、両方を減じれば字幅は細くなったように見える。
今回はスイートスポットを削り込み、インクフローをあげる必要があったので、横幅を減じる研磨と、縦幅を減じる研磨の両方を施した。
そして、通常なら【細さと裏書き重視の為に表書きの書き味を捨てる調整】・・・であるタコスペ・超不細工にスイートスポットを削り込んだ。

その結果、裏書きは出来なくなったが、表書きでは相当エロい書き味になった。2分ほど筆記すると、【デヘヘヘ・・・】と鼻の下が伸びそうな書き味

さしずめタコスペ・エロ不細工とでも呼ぼうか?


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
 私なんざご存じの通り、鶏ガラのような体型ですので、その握力は推して知るべしなんですが、クリップの先っちょとキャップの間に、布を噛ませて、クリップが横滑りしてもキャップに傷が出ないように養生してから、ゴム板で天冠を握り、グイと回したら、案外簡単に外れました。

 その当時は、穴を塞ぎたいというのもありましたが、どんなパテが適切なのか分からなかったので実行できず。取り敢えず、外したクリップ部分が黒ずんでいる、スターリング銀キャップの磨きだけをやりました。
Posted by monolith6 at 2012年09月24日 17:49
これは金沢が盛況であったためペンクリが叶わず、お持ち帰りいただいた万年筆。調整をいただき、有り難うございました。

これで手許には、以前調整していただいたペリカンM405の【これ・ドM】と、パーカー・デュオフォールド・インターナショナルの【タコスペ・エロ不細工】が揃います。次に何が飛び出すのか、楽しみにしております。
Posted by Bromfield at 2012年09月24日 09:41