2012年10月03日

水曜日の調整報告 【 Dupont オランピオ XL ブラック・マザーオブパール 18K-F 書き味改善 】

1本日の生贄は、金沢の定例会でお預かりした大物。デュポンのオランピオでブラック・マザーオブパールで覆われたボディでかなり重い。
個別に計測すると、キャップ:14.3g、首軸ユニット:11.5g、コンバータ:1.5g、胴体:17.8gで合計重量は45.1gとなる。これはインクを入れない状態での重量。
ちなみにインクを入れた状態で島桑が26.9g、M800が18.8g、未使用のシルバーンが20.7gなのでどれほど重いか検討がつくであろう。
キャップは後ろに挿せないことはないが、かなり不安定になるのでキャップ無しで使う方が安心だと思われる。

23かなりお辞儀したペン先なのでスキャナーで撮影すると赤く色づく。そこで右側の拡大画像では彩度をゼロにしてある。
このペンポイントは紙に当たる部分がコテ状になっている。筆圧なのか、萬年筆自体の重量のせいなのか、はたまた紙ヤスリの上の筆記した(研いだ)のかはわからない。
Pilotのペンポイントがコテになっていれば紙ヤスリ!と断定できるのだがデュポンのペンポイントは非常に柔らかいので、強筆圧で筆記すればすぐに摩耗する。
PelikanがOEMで製造していたころのペンポイントとはまたく思想が違う。形状から判断するに、伊太利亜製萬年筆と同じペン先製造会社に外注していると思われるのだが・・・

45こちらは横顔。スリットは多少は開いているのだが、書き味は極めて悪い。おそらくはサンドペーパーの上で研磨した際、エッジが立ち、それが紙を削っているのだろう。
筆圧が低ければ多少はエッジが立って入れも気にならないのだが、この萬年筆は自重が45gあるので、どうしても引っ掛かりが気になってしまう。
拙者の筆圧は50g程度だが、萬年筆が45gあると自分の力は5gしかかけられない?いくらなんでもそれは無理!実際、拙者が書いても引っ掛かりが気になってしまう。

6こちらがペンポイントを正面から見た拡大画像。やかりエッジが立っているのが見える。またかなり背開きになっている。
この重量で背開きならとても耐えがたい書き味になるのは自明!これはどげんかせんとあかん!
さらに気になるのはペン芯の上で、ペン先が左右にズレやすいこと。萬年筆を左に捻って筆圧をかけて書けば、簡単にずれてしまう。
にもかかわらずペン先とペン芯がよじってもひっぱっても簡単には抜けない!Pelikan OEM 時代のDupontでは、ペン先とペン芯をゴム板でつまんで引っぱれば簡単に抜けた。
ところがこのモデルでは絶対に抜けない!そこでペン先だけを左右にずらしながら迫り上げ、やっとのことでペン先を外した!通常はこうすればペン芯はすぐに抜けるはずなのだが・・・

普通に引っぱっても一切抜けない!困った・・・とりあえず、首軸毎インク誘導液に浸けて次の作業にとりかかる。

7こちらがペン先の全体画像。どうやら一枚板の金をペン芯を囲い込むように丸く成型している。金属棒を巻き込むようにプレスしているのであろう。
いったいどうやって成型しているのか動画で見たい!コストカット穴が無い変わりにずいぶんと首軸内部に入っている長さが短い。
Pilotの15号ペン以下程度しかはさみつけられていない。これじゃペン芯とペン先が簡単にズレるはずじゃ・・・

8こちらがインク誘導液のおかげでやっと首軸から抜けたペン芯。設計はなかなか良さそうだが、素材がもっと硬い方が良いのではないか?
非常に弾力があり引っぱっても簡単には抜けないが、引っぱるとなんとなく全長が伸びるような不気味な感触がある。
やはりペン芯は硬くてかっちりとしている方が好ましいような気がするがなぁ・・・

9左側がペン先単体時のペンポイントの拡大図で、そのスリットを少し拡げてから首軸に取り付けた状態の拡大図が右側。
右側ではペン先5个曚鰭發い討い襪里任海譴世吋團鵐箸悪くなっている。
実は調整前は、ペン先単体ならスリットは詰まり、ペン芯に乗せるとペン先が開く状態だった。それが背開きの第一原因!
そこでペン先を指でこねくりまわして形状を変え、ペン芯に乗せた状態でも背開きにならず、スリットだけが開く状態に加工した。

10その後、かなり時間をかけてペン先を研磨。すこし寝かせて書いても引っ掛からず、またインクフローも良く、なおかつ書き出し掠れも発生しない状態に調整した。
太字を寝かせて書く人向けの調整においてかなり難しい条件だが、幸いにして元が細字!
その場合は書き出し掠れがほとんど発生しないのでフィニッシュにかかる時間はずいぶんと削減される。
大変だったのは引っ掛かりの排除!こちらは軽いボディなら一瞬で終わるのだが、自重45gの軸は紙に当てただけでペン先が開いてしまうので、滑らかにするの時間がかかってしまった。

見栄えはともかく、やはり萬年筆はある程度軽い方が書き味は良い。もちろん軽すぎると物足りない筆記感となるので、最適な一本を選ぶのは難しい。

結局は重量にふさわしい書き味になるように、ペンポイントを研磨するのが、満足を得る一番の方策であろう。

こういう調整をプロに依頼するのは失礼!自分で満足のいくまでいじってみて、失敗したら萬年筆研究会【WAGNER】に持ち込んで下さい。傷が深くなければサルベージ出来ます。

でも一番好ましいのは、今回のように【生贄扱い】で預かることじゃよ!


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間


Posted by pelikan_1931 at 12:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
Mont Peliさん

4枚目の画像のように、かなりペン先がお辞儀し、萬年筆の重量をささえる形状にはなっているのですが、それでもキャップを挿すと厳しいですねぇ・・・
Posted by pelikan_1931 at 2012年10月03日 16:40
しまみゅーらさん

どねんかせにゃーおえん・・・なら岡山弁なのですがね(笑
Posted by pelikan_1931 at 2012年10月03日 16:35
オランピオは購入後、一度も分解したことがないので参考になりました。
それにしても。重すぎる万年筆は厄介ですね。
私の場合、必ずキャップを差して筆記するので、長時間筆記には向きませんし、筆記速度も落ちます。
所持品の文鎮2本(オランピオ/50gとカランダッシュのレマン/49.5g)は、万年筆としての出番が滅多にありません。(笑)
Posted by Mont Peli at 2012年10月03日 15:09
>どげんかせんとあかん!

 関西弁が混じっているような(笑)
Posted by しまみゅーら at 2012年10月03日 13:30