2012年10月19日

金曜日の調整報告 【 Pelikan M101N トータスシェル ブラウン 14C-BB 書き味改善 】

1ひさしぶりに登場のPelikan M101N トータスシェル ブラウンの復刻版。ものすごい人気だったが、軸の脆さが露呈したせいか、後継版がいっこうに発売されない。
噂では5色とか7色の軸色のバリエーションがあるということだったが。もっともM800の茶縞も出てくる様子が無いのでPelikanにありがちな納期遅延かもしれない。
拙者のとってはもはやPelikanは独逸製萬年筆メーカーに対する厳しい期待などしていない。
伊太利亜メーカーでも比較的いいかげんなスティピュラに対するよりも、(皮肉抜きで)広〜い心で接しているつもり。理屈抜きで好きなんだなぁ〜!
ある意味、関西人の阪神タイガースに対する想いに似ているかも?しょうもないから好き!悪口いうけど好き!って感じかな?

23ペン先の位置もペン芯の位置もパーフェクト。先端部の削りもおそろしく綺麗なのだが、ペン先にはためらい傷がいっぱい!
こういう場合は、なからず自己調整が施されている。プロの調整ならためらい傷はかならず消し去っておくはずだからな。
ペンポイントの丸めたかは芸術品!素人調整だとしたら、ここだけは拙者よりもうまいなぁ!

4こちらは横顔。かなり大きなペンポイントじゃ。実はこのM101N用のペン先は同じ14金製であってもM400のペン先よりも柔らかい。
またペンポイントの形状も違う。ひょっとすると製造委託先が違うのかもしれない。
現在ペンポイントの形状だけを見ると、専門メーカーに製造委託しているブランドと、自社生産していると豪語しているブランドを比較すると、あきらかに前者の方が出来が良い!
Pelikanは後者なのだが、このペン先だけは製造委託かもしれない。

56なぜ書き味に納得がいかないのかといえば・・・
一つには左右のペンポイントに段差があり、右から左へ引く線やハライが引っかかること。
もうひとつは、ペンポイントの表面が多角形の立体のように研がれていり、無数の位置で引っかかりが出ていること。どの線をとってもスムーズに引けないのじゃ。
これはサンドペーパーを机の上に置いて、その上で字を書いて慣らしを早めようとした結果。引っ掛かるところを順次削っていくと多面体調整となり、ここそこが引っ掛かるようになる。
それと元々ある左右の段差の相互作用で、悪くはないが、下品ではないが、インクフローは良いが・・・今一歩の書き味になってしまっている。
もしフルハルターの調整を経験していれば、似てるのになんでこんなに書き味が違うの?と思うであろう。実は全く違うのだが・・・

7調整結果をお見せする前に、注意事項を一つ。
M101Nはオリジナルと同じく、左画像の矢印の部分を右に捻れが吸入機構が外れるようにつくられている。
だが、それをやると75%以上の確率で内部の樹脂が割れて一巻の終わりになるので、絶対に矢印の部分をまわさないこと。
説明書にも回して良いとは書いていないので無料修理にはならない可能性が高い。
ピストンを捻っているだけでも割れる事があるくらいなので、矢印部分を捻ったら悲劇発生リスク大! 
ぜひ、このトラブルを解決してから次の軸色バリエーションを出して欲しい。Pelikanも修理依頼が頻発してよくわかっているはずなので。

89こちらが調整後のペン先。ペン先を首軸に押し込む位置はほぼ同じになった。またペン先先端部はフラットに研いだ。
これは書き出し時のピントのズレを修正するため。そして良く見ると、調整前にはあったためらい傷がほとんど消えているのがわかろう。
単に書き味を良くするだけではなく、時間をかけて完璧な状態を目指すのが素人調整の妙味なのじゃ。

10こちらが横顔。実はペン先とペン芯の間に多少隙間が空いていたので、ペン芯をヒートガンで炙って多少反らせ、ペン先と密着させた。
また本格チャーチャーで多面体を完全な楕円球にしたあとで、スイートスポットを削り込んだ。これは手研ぎ。
やはり機械研ぎと手研ぎのハイブリッドが最も手早く、かつ、満足のいく結果を導いてくれるように思う。
インクを入れて紙に触れたとたん、感動がじんわりと沸き上がってくるような書き味になった。大成功!


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック