2012年10月17日

水曜日の調整報告 【 Sheaffer コノソアール 18K-XF さらに細く! 】

1ああ懐かしい!Sheafferのコノソアール。その昔、アメ横で出会ったとたんに惚れて購入したものと同じ!
買ってからほどなくして【ニューコノソアール】という高級版が発売され、そちらも購入したが、見栄えは断然コノソアールの方が良かった。
たしか黒のグロッシー、バーガンディ−、グリーン、黒のチェイス模様が発売されたはず。日本ではグリーン軸は発売されなかった。それを目当てにニューヨークに行った記憶がある。
この個体にはキャップにイニシャルが入っているので、何かの記念に贈られた物かな?刻印は先端部の尖ったリュータで描かれたもので、ものすごく上手!
長い間愛用されていたのか軸は傷だらけ。もっともSheafferのプラスティックは非常に傷つきやすい素材なのでそのせいかも?
初期のモデルは、キャップの口の外側が面取りされていなくて多少安っぽかったが、この個体は面取りされている後期モデルじゃ。

23この切り割りの位置を見て、ああSheafferだなぁと苦笑い。ペンポイントの中央に切り割りは入っているのだが、ハート穴や周囲の刻印との比較でずいぶんと片側にずれているのがわかる。
この事実からSheafferの切り割りは、ペンポイントの玉の位置を固定し、その中央から切れ込みを入れる方式だと判明した。
こんなやり方では日本や独逸の市場では通用しない。現在ではBic傘下となり品質は飛躍的に向上したが、おもしろみは減ってしまった。
またペン先とペン芯がぐらぐらするので、もう少し全体を首軸に押し込まないと安定した筆記は出来ないはずじゃ。

45こちらは横顔。かなり無造作に仕上げられている。XFだと思われるがペンポイントはそのようには研磨されていない。
大らかな時代のアメ車のようで、これはこれでおもしろい。依頼者は左利き & 細字好きなので、このままでは字幅が太すぎ、かつ、押す際に少し引っ掛かりがある。
また下に線を引く際にエッジがカリカリと紙を抉るような反応が見られる。全体的にペンポイントの幅を減じ、紙に当たる面積を小さくして細字化を図る事にした。

6こちらは首軸から引き抜いたペン先。 STE◇PFの刻印が首軸に隠れた部分に押されている。
Sheafferでは、当時最も安価なノンナンセンスも、ニュー・コノソアールも同じペン芯だったが、ペン先の大きさや厚みは当然違うので、それを首軸の内径でカバーしようとしていたのかも。
これってアメリカ的発想?日本なら首軸内径を同じにして、ペン芯側で調整をするはず。その方が誤差が少ない。またペン芯にも格というものがあっていいと考えるのが日本流。
理解出来ているようで完全には理解出来ないのが米国流の発想。みんなでワイワイ討議しながら設計したものではないので、かなり独りよがり感がある。なぜ誰もアドバイスしてあげなかったのだろう?

7ただ、独りよがりが功を奏しているのが、このペン芯の設計。細いスリットを彫るよりは、部品を二つに分けて、その隙間をインクが通るようにすればいいやという設計!
手抜きのように思えるが理にかなっている。実際、このペン芯を使うSheaffer製萬年筆のインクフローは非常に良い!ノンナンセンスが爆発的に売れたのもそのせいだと信じている。 
ただ、同じ設計でも良いので、コノソアールやニューコノソアールのペン芯にはラッカーを塗るなどの細工をしてほしかったなぁ・・・

89こちらがペン先の両側を削ってバランスを取り、またペンポイントの横幅を減じる調整を施したもの。本格チャーチャーでかなり慎重に研磨したあとで、自作工具で念入りにエッジを落とした。
ペン先はかなり奥まで首軸に突っ込んだ。この位置まで押し込めば、簡単にはペン先とペン芯が左右にはずれないはず。
爪で押したら一発でズレが発生するのは事実だが、通常筆記ならば問題ない。
細字希望なので、スリットは両側から押さえ、少しインクフローを抑え気味にしたのだが、ペン芯能力のせいでカスカスにはならない。これは立派!

10こちらは横顔。左利きの押し書きの場合、最も重要なのは押した時に抵抗感が少ないこと。これには腹をさらうのが最も効果的。
調整前の状態では、腹の部分に突起があったのでコレを研磨で排除。また、右利き用とは逆の順番でエッジをさらっていった。
インクをつけて左手で押し書きしてみると、抵抗感無くスムーズに筆記できる。上から下に引く線も問題は無い。
萬年筆の基本設計と真逆の書き方なので、引き書きと同じ書き味には出来ないが、満足のいく状態にはなったと思う。


 【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 11:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック