水曜日の調整報告 【 Parker 75 エコセー 14K-XF 書き味改善 】

今回の依頼品はParker 75 エコセー(別名:優雅なタータン) 14K-XFで、仏蘭西製のペン先が付いている。
Mintで入手された物の事前点検ということでお預かりしたもの。ペン先に小さな傷があるので未使用とは言えまい。Mint物なら通常はケース付きで流通することが多い。
良く見ると首軸先端部の内側にインクの滓がわずかに残っている。もっとも依頼人が試し書きした痕跡かもしれないが。


こちらはペン先を上から見た時の画像。拡大画像を見ると、ペンポイント付近に小さな傷がついている(黒くなっている部分)。金磨き布でゴシゴシと擦ればすぐに取れるくらいの小さな傷。
ペン先のスリットの寄りは強くはないが、ピッタリと詰まっている。またペンポイントの形状も、XFの細さを演出するには大きすぎる。まだ左右の段差も大きい。
結果として、カリカリと引っ掛かってとてもスムーズな筆記が出来ない。書いているとストレスでペン先を折りたいような気持ちになってくるかもしれない。要注意!


こちらが横顔。XFの太さなのにずいぶんと大きなペンポイントじゃ。円盤状に研いでXFを実現しようとしているが、やや無理がある。
また何故かペン先がすぐに抜けてしまう。多少首軸内部に突っ込む部分が痩せてしまったのかも?少しシェラックで太らせておこう。

こちらはペン先の刻印。仏蘭西製のParker 75のペン先なのに14金製。従ってホールマークはない。
Parkerを示すマークの横に、585とありその右側の小さな【
M】が刻印されている。【
M】とは違い、Mにアンダーバーはついていない。


ところがニブの左側にある刻印にはアンダーバーがある。過去に紹介した18金のペン先では
こちらのように、アンダーバーがあるもの、アンダーバーが無いもの、
M表記すらないものなどいろいろ。
はたして、この
Mや
Mの意味は何なのだろう?少なくともペン先の太さとは無関係のはず。ペン芯にはXFという刻印があるのでな。

こちらが多少スリットを拡げ、先端部を平たく研磨した状態のペン先先端部。傷も金磨き布で研磨して消し去ってある。研磨以前の画像と比べると良くわかろう。
なをスリットを拡げる為に隙間ゲージを使ったわけではない。段差を直すために、他方より下がっていたペンポイントを下から上に押して高さを揃えたら、スリットが開いたのじゃ。

横顔はこちら。相当研磨したことがわかるかな? ペンポイントの先端部を落とし、さらに腹の部分をさらっている。
そのあとで、ペンポイントの横をチャーチャーで斜めに研磨して形状を整え、スイートスポットの部分が一番字幅が細くなるように仕上げていった。
このペン先を胴体に装着してインクに浸し、書いてみる。おお、極細なのにインクフローは良く、書き味も悪くない。そのまま20秒ほど書いていると、書き味が良く感じられるようになった。
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備2h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(4)│
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お手数をおかけします。刻印の多さは不思議に思っていたのですが、もしかしたら
ニブとボディの違った物かも?
仕上がり品楽しみにしております。
このブログに貴重な万年筆情報を掲載されているのがpelikan_1931 師匠で、その恩恵受けているのが私という構図のような気がします。(笑)
Mont Peli さん、ありがとう!すばらしい!
1000分の585という意味だったんですね。
過去記事(2008年03月23日)の「Parker Encyclopedia その11」に掲載されている左から5枚目の「表示 INDICATION」というタイトルの資料(紙様提供資料の一部)に詳しい説明があります。(画像を拡大すると読める程度の文字になり、それを読みました。)
ここで使われているMは、ラテン語のmilleに由来する1000を意味するローマ数字ですが、アンダーバーは単位が千分比(千分の1)であることを強調する意図だと思います。----千分比は、英語ではper mil、仏語ではpour mille。