2012年11月28日

水曜日の調整報告 【 Montblanc No.204 14C-F インク漏れ修理 & 書き味改善 】

1今回の依頼品はMontblanc No.204じゃ。過去に赤軸を1回修理しているはず。依頼内容は書き味の改善と・・・首軸からインクが漏れるということ。
ん?ボタンフィラーで首軸からインクが漏れるぅ?そりゃ、サックが裂けているとしか思えませんな。あるいは、サックが外れているか、硬化してボロボロになっているか。
まずは首軸を抜きましょう・・・と渾身の力で引っぱったが抜けない。ならばとさんざんヒートガンで胴軸と首軸の境目を炙ったが捻っても、引っぱってもビクともしない!
もう、溶けたりねじ切れたりしてもしようがないと、溶けるほど炙り、折れるほどの勢いで捻ったら・・・ギュルギュルギュルギュルという恐ろしい音を立てて首軸が抜けた。大成功!
なんと首軸を胴軸にシェラックで固定していた。ボタンフィラーの場合、頻繁に修理が必要なのでシェラックで固定するのは御法度!恐ろしや恐ろしや・・・

23こちらはペン先の拡大図。以前扱ったNo.204では、ペン先の星マークの中に〔4〕が刻印されていたが、このペン先のデザインはまったく違う。製造国が違うのかもしれないなぁ。
書き味調整ということで、まずは調整前の試し書きをしようとしたのだが、インクがまったく出ない。筆圧を書ければ少しだけ出る。どうやらものすごい力でペン先が寄っているらしい。
この時代のMontblancらしい書き味にするには、先端部を角研ぎにして、スリットを多少開け、ペンポイントをStubに研ぐのがポイント。恐ろしいほどここちよい筆記感が味わえる。

45こちらは横顔。ペン芯がインクの色で汚れているのがわかろう。これでもかなり清掃してから持ち込まれているはず。
まずはアスコルビン酸水溶液に浸してみたが、色は落ちない。どうやらブルーブラックインクではなさそう。そこで超電解水を噴霧してみると、あっというまにテッシュが青紫色に変色した。
ひょっとするとキングスブルーなんかを使っていたのかも?乾くとテカテカに光るようなインクかもしれない。それってどこのインクだったかなぁ・・・見た記憶はあるのだがな。
先端部から細長い鉈型に研がれているので、かなりピントがズレる。これを防ぐにはペンポイント先端部が丸っこいのを平べったくする必要がある。そう、F-Stubのように研ぐわけじゃ。

6首軸を引き抜いて、中身を耳かきで引っぱり出した状態。見事にサックが割れている。しかもそのサックの破片がボタンフィラーのボタンの内側に入り、ボタンが後ろから抜けない!
そこで、滓を全て前からほじくり出してから、ペンチでボタンを引き抜いた。これも壊れる寸前の攻防であった、とりあえずボタンは胴軸から引き抜けた。
あとはエボナイトと同化したシェラックを、ルーペを装着した上で、丹念にナイフでこそぎ落とす。これに一番時間がかかった。ここまでシェラックを使うか!というほど大量のシェラックを使ってあった。

78こちらが引き抜いて清掃した後のペン先。まだ研ぎは施されていない。表には見えないが、ペン先の裏側に、50という数字が刻印されている。
5の左側にあるのは、7でも1でもなく、」を上下逆さにしたような形状の刻印。ペン先には【244】の刻印もあるので、No.244のペン先と同じ物かもしれない。
それにしてもシンプルで美しい形状のペン先じゃ。裏側には表の刻印による凸凹は皆無。凸凹があると、どうしてもインクの流れが阻害されてしまうとParker 51さんに教えていただいた。

9こちらがスリットを拡げ、チャーチャーの仕上げ用青砥で研磨しただけのペンポイント。この状態で試し書きしたらVery Goodな書き味なので、ペーパーによる仕上げ研ぎはやめておいた。
紙にそっとペン先を当てると同時に、スっとインクが紙につく。その最初の位置が、目で狙った所と寸分の狂いも無い。これがピントが合っている・・・と呼ばれている状態じゃ。

10ペンポイントの背中側を丸め、同時に腹側は紙に当たる位置に合わせて軽く研磨した。チャーチャーによる研磨なのでスリットの内側は研いでない。
ところがこの個体では、既に馬尻研ぎが行われていたので、チャーチャー研ぎをある程度して、スリットの内側調整をしない状態がベストとなった。

No.204は硬いペン先なのに弾力がある。弾力があるのに柔らかくはない・・・この時代独特の不思議な弾力をもうしばらく楽しみたいような気分にさせてくれる逸品じゃ。


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(10) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
Mont Peliさん
204と244は同じ時代に同じデンマークで作られていたようなので、
理論上は混在してもおかしくは無いのですが、やはり流通後に付け替えられたと考えるのが妥当でしょうね。
Posted by pelikan_1931 at 2012年12月02日 06:46
今回のやり取りで戦前と戦後の番号体系の違いが解明できました。
1.戦前の3桁モデルの番号は、3桁の数値のそれぞれに独立した意味を持たせていたが、戦後は、200、240、140シリーズ等のように上2桁がシリーズの識別符号で下1桁がニブサイズに変わった。
2.具体例として、戦前の204は「4号ニブ付きセーフティ機構の中級モデル」だったが、戦後は「4号ニブ付き200シリーズモデル」(#202、#204、#206はすべてボタンフィラー式なので、ニブサイズ以外の識別子は不要)を意味する。
Posted by Mont Peli at 2012年11月29日 08:04
引き続き調べてみたら#204でこれとそっくりのものがありました。これでしょうか。
http://www.martiniauctions.com/item/id/20333.html
確かに、尻軸に204の刻印があります。
ニブは別物で軸は204で決まりですね
敗北宣言します。(笑)
Posted by Mont Peli at 2012年11月29日 02:22
これが戦前モデルではなく戦後モデルの244であると私が判断した決め手は、Martins,Leite&Gageanの'The Chronicle of the Fountain Pen'(247頁-1948年の項)の次の記述です。(原文引用します)
Montblanc produced its first redesign of models after the war,introducing series 240(model #242,#244and#246) with rounded lines,and giving rise to what was known by torpedo-shaped models. This was a first step toward the introduction of the new Meisterstuck line in 1952.
キャップトップと尻軸の両方を丸めたいわゆる流線型スタイルの軸様式は、モンブラン社では戦後の240シリーズで初めて登場したと受け止めました。
Posted by Mont Peli at 2012年11月29日 01:36
横から失礼しますが、デンマークモデルの204だと思います。
244のデンマーク製とはペンの形が全然違いますし。

ただペン先はやはり交換されている気がします。デンマークモデルのだと普通ホワイトスターの中にニブの号数が刻印されているはずですので。

Posted by kyogoku at 2012年11月29日 01:10
1950年〜1954年の間はNo.204とNo.244が並行して作られていたので、混合も出るがある可能性も否定できませんが。
Posted by pelikan_1931 at 2012年11月28日 20:43
Mont Peliさん

これはやはり、Montblanc No.204で間違いなさそうです。
http://pelikan.livedoor.biz/archives/50237910.html
以前投稿した記事を見るとMontblanc Starsで確認したとあるので調べて見ると、88頁に写真がありました。
204と書かれた赤軸と同じボディです。黒軸もあったようです。
ただし、ペン先はNo.244のものと付け替えられていると思われます。1950年〜1954年ごろにデンマークで作られたもののようです。
Posted by pelikan_1931 at 2012年11月28日 20:40
その後の調べで、モデル名はNo.244であることがわかりました。ニブも刻印どおりオリジナルです。
戦前のものではなく、戦後復興期のモデル(240シリーズ)でデンマーク工場製のようです。
button-filler式は、戦後も製造されていたのですね。
裏づけ資料:http://thefountainpens.com/archives/2465
Posted by Mont Peli at 2012年11月28日 12:28
間違えました。お詫びして訂正します。
(誤)2=Masterpiece(quality)---(正)2=Second quality
です。
Posted by mMont Peli at 2012年11月28日 11:05
モデル名は、 No.204で正しいでしょうか?
モンブラン社の番号体系は、年代によって意味づけが変わっているので慎重を期さねばなりませんが、このモデルはbutton-filler式なので第二次大戦前(1930年代頃)の製品なので1936年に制定された番号体系が当てはまると思います。
それを当てはめて読むと、2=Masterpiece( quality)、0=safety-filler、4=nib sizeとなり、インク吸入機構とマッチしません。
No.224ならsecond digitは2=button or push fillerで整合性が取れると思います。
根拠資料1.−Regina Martini著 'Pens and Pencil' (p.16)
根拠資料2.ネット文献のURL:http://montblanc.parkerpens.org/montblanc.html
なお、safety-filler式のNo.204は存在し、そのニブのロゴの枠の中に「4」の数字が刻印されています。
Posted by Mont Peli at 2012年11月28日 10:13