2012年11月30日

金曜日の調整報告 【 Parker 75 茶軸 14K-M 困ったペンポイント 】

1本日の生贄は、最近頻繁に登場するParker 75じゃ。萬年筆研究会【WAGNER】会員の中で、小さなブームになっている萬年筆!
その中でも珍しい?わりと明るい茶軸。普通はもっと濃い茶色だが、これはかなり明るい。細部を見るとやはり仏蘭西製であった。米国製でこのような明るい茶軸はなかったもんなぁ。
キャップと胴体の金属パーツのうちで、首軸先端部だけが銀色。ここが金鍍金だったらもっと良いなぁ。実際、首軸先端部に鍍金を施したモデルも持ってる。

236相当の大きなペンポイントなので、てっきりBだと思っていたが、ペン芯を見ると【M】の刻印がある。これを見て父が持っていたParker 75を思い出した。
それもMニブ付きで、これと同じような球型の大きなペンポイントが付いていたが筆圧の極端に低い父にとっては苦痛に近い萬年筆だったらしい。
そのせいか、いつもはFermeの細軟付きを使っていた。ただ、書類に英語でサインするときのみ、強筆圧で綺麗なサインをしていた。拙者の英語サインは、その父親の真似だが・・・はるかに下手。
この個体も、スリットが詰まりすぎてインクがほとんど出て来ない。相当にスリットを拡げないと、この大きなペンポイントを生かした書き味にはなるまい。

4ごらんのように横から見ても真ん丸な球型のペンポイント!今となってはこういう調整?は珍しい。よくぞこの状態で出荷した物だと呆れる。
おそらくはあまりにヒットしたので、ペンポイントを一々研磨していたら品切れを起こしそうなので、玉の大きさで字幅を稼ぐことにして、とにかく丸いまま出したのであろう。調整師には美味しい玉じゃな。
気になるのは首軸先端部分がサンドペーパーで削ったようになっていること。これはインクで傷んだ首軸をカムフラージュする際に用いられる手法。

5そこで、首軸内部を覗いてみたが、確かに滓はついているものの、大きく劣化している部分はない。しかし、軸の状態から考えれば、多少は多めに使われていた痕跡がある。
従って、軸と首軸とは別の個体からアセンブルされたと判断した。ただし、ペン先とペン芯は未使用だった・・・ので、首軸だけが別物かもしれない。

7こちらは首軸から外したペン先のスリットに0.2ミリの隙間ゲージを差し込んで無理矢理スリットを拡げた状態。ずいぶんと先端部が開いている。
もちろん最終的にはもう少しスリットは寄せるが、当初はこれくらい開いておいた方が良い。調整戻りで多少は狭まるので。

8こちらが首軸に調整済みのペン先を再度押し込んだ状態。ペン芯にはインクのあとすらなかった。超電解水を噴霧してティッシュで拭っても全くの無色。ということはペン芯は未使用。
当然ペン先も未使用じゃ。ペン先をペン芯から外した痕跡は拙者が外す前には無かったからな。

9ペンポイントは思いっきり研いだ。チャーチャーも使ったが大胆に研ぐ際には手で研ぐ方が早い。また直線的に研げるのも良い。チャーチャではどうしても曲線研ぎになってしまう。
球状のペンポイント先端部を平たく落とし、拡がったスリットと相まって書き出しでインクが紙につきやすくした。筆圧ゼロでも大丈夫であろう。

10こちらは横顔。背中の部分も平たくしたことによって、MがBかXBのペン先に見える。また書き出し時のピントのズレも発生しない。
さらに筆記角度に合わせて腹の部分を研いだので滑らかさも格段に上がった。実際にインクを付けて書いてみると、面白い書き味になった。
XFに絶妙調整を施せば、細字ながらもインクが盛り上がるような線で、速記が出来る。ところがこのMをBかXBくらいに研いだペンポイントだと、ねっとりと紙にまとわりつくような書き味になった。
この書き味がえらく面白い。今までに経験したことの無いような書き味になった。いったいどうすればこの書き味が再現できるのかを研究しなくては・・・


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(5) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
Mikeさん

当時の米国は、左のドアと右のドアの塗装の色が明らかに違うだろう!というのが売られていた時代なので大らかなんです。
我が独逸でも、工員さんの月曜日の出勤率は、他の曜日より明らかに低いそうです。

大宮大会で、独逸の酷いところの話で、独逸の郵便事情は酷いよねぇ・・と語っていたら、

なんといってもギリシャが酷い!
出した絵はがきが2年後に到着したという話を聞いた。
郵便配達の人が、めったにポストを開けないのでこういう事が起きるとか・・・
経済破綻するわけだ。
Posted by pelikan_1931 at 2012年12月10日 00:14
 師匠から買ったMニブも最初はこんなまん丸でしたね。調整してもらって全く違う書き味になりましたが。
 XFニブでまん丸なのが手元にあります。以前師匠に取り上げて頂いた切り割りがハート穴に達してないエラーペン先も、まん丸のペンポイントですね。ゴリゴリした感じを楽しむために、未調整のままにしてあります。
 改めて見ると未調整のままのMニブでも形状が全く違いますね。やっぱり年代によるんでしょうか?
Posted by Mike at 2012年12月07日 23:24
monolith6さん
我が家に目盛り付きの先端部に金鍍金が施されたものはあります。金鍍金のバーレイ軸です。
目盛り無しの金鍍金というのは興味ありますねぇ!
Posted by pelikan_1931 at 2012年12月02日 07:07
 私めが折に触れて、米国製のニブは70年代の中頃から、M以下のニブはペン・ポイントが丸いまんま出荷しておりいい加減だ、と言っていたのを実物で御確認頂いたようですね。

 さて、各パーツの整合性ですが、私が見たところ、ニブ&ペン芯のみが異なる個体から移し替えられたようです。

 首軸の先端部の仕上げについては、確かに仰せの通り見えなくもないですが、このように目盛りが付いていない首軸、というのは、仏製パーカーの初期の頃には実在し、この部分が目盛りなしのまま金メッキになっているもの(特に vermeil 軸で、金トリムのものに見受けられる)も存在しました。個体としては少ない、言ってみればレアな首軸なんです。
Posted by monolith6 at 2012年11月30日 16:01
お手数をおかけします。当初より各パーツの整合性は不思議に思っていましたが、
謎が解けました。
書き味の方、大変楽しみにしております。
Posted by Xantos at 2012年11月30日 15:17