2013年02月20日

水曜日の調整報告【 Montblanc No.146G 14C-M  インク漏れ 】

1今回の依頼品は1950年代のMontblanc No.146G。以前はしょっちゅうこのBlogに登場していたが、一巡したのか最近ではあまり登場していない。
もっとも、この調整報告に登場する1950年代No.146は、ほとんどがピストンの修理。ということは設計のミスといえるだろう。
同時代のPelikanが調整報告に登場する際は、ほとんどがペン先調整で終わるのにたいして、No.146の方は機構修理も加わってしまうのが通常。
これから1950年代No.146に興味を持たれる方は、自分で修理する必要が出てくることも念頭に置いておく方が良い。壊れやすいモデルは調整師がいじるのをいやがるからな。
今回のNo.146Gも事前に首軸が外れる事を確認し、生贄だよぅ〜ということを確認してからお預かりした。
Vintageの軸の状態については確信が持てるケースが少ないので生贄扱い以外ではお預かりしない。
先日の神戸大会でも、生贄扱いは困るという方がいらっしゃったので、工具をお貸しし、その場で自分で修理してもらった。
1950年代のNo.146に関しては、首軸が外れれば修理はほぼ可能じゃ。外れなければコルク交換は不可能。

2345ペン先にはまったく問題は無い。まるで拙者が過去に調整したのかと思った。
ただしスイートスポットが入っていないので、どのポイントで書いても少し気持ち悪い。
何も調整を施さなければ、この時代のNo.146は、必ずペン先段差が出来てしまうものだが、一切の段差がない。
またスリットはピッタリと詰まっているが、筆圧を書けるとスッと開くので、細字であれば、このままでかまわない。
軸にはEFと刻印されているが、実際のペンポイントの形状はMに近い。しかし出来るだけ書き味の良い細字にしておこう。

6こちらが、テレスコープを縮めた状態。上にあるのはインク漏れ状態にあるコルク。しかし経年変化でボロボロということはない。
かなり良い状態なのじゃ。にもかかわらずインクが漏れるということは、コルクを小さく削りすぎたか、首軸のネジが緩いかであろう。
いずれにせよ、いったん首軸ユニットを分解して再度組み上げる必要はありそうじゃ。

7こちらがテレスコープを伸ばした状態。新しいコルクも添えてある。
コルクから後ろにインクが回っている場合は、このピストン機構がインクまみれになるものだが、インク汚れはほとんど無かった。
ただ、画面左より部分のネジが水色インクで汚れていた。そして軸内に入っていたのは水色インク。
このターコイズ系のインクはVintage万年筆には使わない方がよい。特にインク窓のあるものには御法度!理由はあとで述べる。
ここにあるコルクはNo.144用だが、こちらはNo.146の内径より少しだけ広いが、強引に押し込めば入る。
No.146用のコルクはこれよ径が大きく、かなり周囲を削らないと胴軸に押し込めない。手作業で削るとどうしても真円に削れない。従って隙間が出来、インクが漏れるのかもしれない・・・と考えている。

8こちらはペン先。実に美しい。形状に破綻はないし、鍍金の剥がれもない。この時代の特徴は左に飛び出して棘のような突起。
実はペン芯の中央にペン先が乗っているかどうかを確認するのに、この突起が非常に便利。
位置固定の凸が無いペン芯を使う場合には、この突起が非常に役に立つ。いまだ位置固定の凸をペン芯に設けていていないPelikanなどにはこうして欲しい。
V字型のくぼみでも良いのだが、突起の方が分かりやすい。位置固定凸無しで突起付きが調整師にとっては自由度が高くてありがたいのじゃ。

9なぜ水色インクが好ましくないのかを見せようと首軸をScanしたが、よくわからないかもしれない。窓の中央に水色ベルトが残っているのじゃ。
水色インクは染色力が強く、皮膚やセルロイドを染めてしまう。色彩雫のブルー系インクを入れたままペンクリに持ってくるな!と何度か宣伝した。
この軸に入っていたターコイズにも同系統の染料を使っているのだろう。軸は染めるは手は汚すわ・・・。
実際、ターコイズ系インクが軸内に何十年も残ったままの状態でVintage市場に出てきたNo.14Xを過去に何本も入手したが、その度に洗浄で苦労した。
1950年代のNo.14Xには、絶対にターコイズ系のインクを入れない方が良かろうな。

5コルク交換はすぐに終わったので、最後はチョコチョコとペン先調整。ベース調整がすばらしいので、微調整は簡単。
少しスイートスポットを削り込んでから角研ぎ風に仕上げておいた。この方が字が綺麗に見える。
スリットは拡げないままの方がこの細字ねらいには相応しかろう。インクを入れて書いてみると、シャキシャキして良い感じ!
やはりVintageの細字はこの方が良い。最近、だいぶ好みが変わってきたなぁ・・・


 【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 07:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック