2013年03月06日

水曜日の調整報告【 Parker 75 14K-B インクが厳しい 】

1今後、かなり頻繁にParker、特にParker 75の調整報告が出てくると思われる。数も多いが症状も千差万別。はたまた調整後の仕上げもイロイロ工夫してみたいのでお楽しみに。
今回の生贄はキャップも尻もフラットトップなのだが、首軸に【0】マークはない。また相当にくたびれた軸なのに首軸先端部の金属は新品のように新しい。
おそらくは首軸が新しいものと交換されていたのであろう。また首軸先端部の金属は左に捻れば外れるのだが、この個体ではヒートガンで溶けるほどに炙っただけではビクともしなかった。
一晩、アスコルビン酸水溶液に浸したあとで、再度ヒートガンであぶり、鹿革で保護した先端部を大型ペンチで挟んで渾身の力で左に回してやっと取れた。
ネジの部分には、ブルーブラックのインク滓が大量にこびり付いていた。コンバーターがついていたが、そのサックの中にもブルーブラックを使った痕跡がある。
古いParker 75 によくある症状だが、キャップがパチンと気持ち良く締まらない。これはいけません!Parker 75の人気の秘密は、このパチンと締まる音にある。この段階で対処法はわかっているのだがな。

23ペン先には14K USA の刻印があり、太さはM。球型のペンポイントではなく円盤形のペンポイント。しかも非常に綺麗に成形されているが、研磨の痕跡のないオリジナル形状と思われる。
スリットは詰まっているため、インクフローは非常に悪い。そのせいか、ペン先のスリットにナイフを突っ込んで拡げようとした痕が残っている。
Parker 75のペン先のスリットを拡げるには、ペン先をペン芯から外し、隙間に0.1个侶箚屮押璽犬鯑れ、次に0.15ミリの隙間ゲージを入れる。この段階で拡がる。
さらに600番のラッピングフィルムで左右1回ずつスリットをさらう。これでスリット内部がそろう。その後、スリットに盛り上がった金をルーペで見ながら耐水ペーパーで擦り落とす。
次に金磨き布を被せたゴムブロック(出来れば5儚儖幣紂砲縫撻鸚茲僚の部分を何度も何度も擦りつけて耐水ペーパーの磨き痕を消す。
次にスリット両側を2500番の耐水ペーパーでさらって綺麗にすると同時に、磨き滓を取り除きスリットを綺麗にしたあとで、ペン芯に再度押し込むのじゃ。

45こちらは横顔。ペンポイントは見事な円盤研ぎ。おそらくはフラットトップの時代のMの研ぎ方と違うと思われる。あまりに見事な研ぎ!
もしこれが初期の研ぎなら、その後ずっと品質が下落していったことになるだろう。今まで見た未研磨ペンポイントの中で最良の出来じゃ。
スリットさえ開けば、ペンポイントの研磨は全く必要が無い。インクフローの良いParker 75は、そのグリグリとした筆記感を楽しむのが王道じゃ!
そのグリグリ感を味わうのに最高のペンポイントが、この時代の研ぎであろう。球型のペンポイントの両側を回転式砥石で研磨したのだろうが、ひょっとすると自動研磨機を使ったのかもしれない。
人間の手でここまで研いでいてはあまりにコストがかかりすぎるだろう。Parkerの機械化はずいぶんと進んでいたので自動研磨機を既に持っていたとしても不思議ではない。

78キャップがプスンとしか締まらない原因がこちら。左側画像では上、右側画像では左がこの萬年筆に付いていた首軸で、もう一方は新品じゃ。
赤矢印のところを良く見ると、首軸に新しいネジが切られている?これはカートリッジ交換後、首軸を力いっぱいネジ込みすぎたせい。
胴軸内部のネジは金属製で、首軸のネジは樹脂製。常識で考えても首軸側がどんどん彫られていく。実はParkerはその状態は理解していたはず。
なぜなら最初期の首軸は、ネジの部分が金属製だった。それがあっというまに樹脂製に変わったのは、コスト削減だけが理由だったのだろうか?
首軸をわざとダメにし、新しい部品を売ろうという戦略だったのではないか?顧客満足を追求していなかった頃の米国企業は平気でそういう事をしていた。
何十年も前、〇〇〇というDBMSが世に出たとき、最初のバージョンではCPUをカラ廻りさせて低レスポンスにし、大きなCPUをお客様に買って貰う。
次のバージョンではカラ廻りのアルゴリズムを外しパーフォーマンスを良くするがDISKスペースを喰うように設計してDASDを売る。これを繰り返していくのが我々の戦略だ!と開発部隊の責任者がドヤ顔で話していたのを聞いた。
Parkerがメーカー純正パーツを山のように市販していた事を考えると、ひょっとすると金属製首軸で設計した人は、そんなことしたら首軸が丈夫すぎて部品が売れんだろう!と叱責されたかも?
米国の戦略は、人の良い日本人にとっては奥が深すぎる。TPPの真の狙いも、ひょっとすると農産物などにあるのではなく、日本の医療保険を海外の病院で使えるようにするところにあるのかもしれない。
設備の整った海外の病院で保険治療が出来る・・・という夢のような話だが、日本の医療機関は壊滅的打撃を受けるうえ、我々の積み立てた医療保険が海外に流出する。
米国の考えることには二重三重のもくろみがあるのを外資系企業で経験したので、絶対に裏があると踏んでいる。何が真の狙いかを聞き出した上で、交渉に当たらなければな。Parker 75の首軸からふとTPPに思いをはせた。

6こちらはペン芯から外した直後のペン芯先端部の状態。良く見ると大量にインクの滓がこびり付いているのがわかろう。
実はペン芯とペン先が密着した状態で、検尿用の試験管にアスコルビン酸水溶液を入れた物に放り込んで激しく撹拌を繰り返した。
そして一昼夜経過してからペン先とペン芯を分離してみたのが左側の画像じゃ。しっかりとインク滓が残っている。しかもブルーブラックのインク滓。
こうやって分離した状態で、再度アスコルビン酸水溶液に入れて、激しく撹拌した後、さらに一昼夜放置し、残った滓をナイフでそぎ落として初めて綺麗なペン芯になる。
要するに、ペン先とペン芯が密着している状態でいかに洗浄しても効果は限定的と言うこと。拙者が通常ペンクリであっても、可能な限り分解洗浄するのはこういう現象があるからなのじゃ。
古い萬年筆をシャカシャカと超音波洗浄機で洗浄しても、固まったインクには水分子の振動は効果が無い。本気で綺麗にしようと考えたら、ペン先とペン芯を分解する手順を覚えるか、固まらないように毎日使うかじゃ!

10こちらが洗浄後にスリットを少しだけ拡げたペン先。それにしても美しい!これくらいスリットが開いていればインクはスっと流れるはず。紙の上をなぞってみてもどこも引っ掛からない。
やはりこの時代のペンポイントは出来が良い。もっともParker 75が国内で爆発的に売れたころは、あまり選ばなくても良い書き味という評価だった。初期のペンポイントの書きにくさから比べれば格段に状態が良い。
やはりこのペンポイントは初期のものではなく後のペンポイントと交換されたのであろうなぁ・・・

9せっかくの純銀軸だが、けっこう汚れていた。その汚れを取ったら白っぽい軸になり、所々は磨いても黒が取れない部分があり醜い。
そこである実験をしてみた。熱湯を使う銀燻し液は、200ccに2〜3滴いれるのだが、今回は80度くらいのお湯を使い、200ccに0.5滴程度の薄さにしてみた。
その中に、純銀軸を入れて撹拌すると、通常なら真っ白に仕上がり、乾燥させると油分が付いた所だけが黒くなる・・・という変化ではなく、最初から少し黒化した状態になり、油分をつけても変化しない。
実に良い感じに仕上がった。今後も純銀軸が濁ったものがいっぱいあるので、少しずつ実験してみよう!


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備2h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間


Posted by pelikan_1931 at 09:30│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
 Mニブで同じような形のが手元にあります。といっても師匠からみたら似て非なるものだよと言われるかもしれませんが。未調整で使ってますが、書き味は悪くないです。
 夜な夜なルーペでペンポイントを覗きながら、師匠のHPを見てますが、よくわからないことも多々あるので、次回定例会で少しでも教えて下さい。
Posted by Mike at 2013年03月06日 13:33