
依頼人はホスカルタイプと呼んでいるらしい。華奢でチープな軸だなぁ・・・こんな金鍍金のペン先を調整によこすなんて・・・と憤慨していたら、本当の24金製のペン先だった!
一時、ペン先の金競争があった際、24金ペン先付きとうたったシャレーナがあった。実際には23.5金だったが四捨五入して24金としたとか噂になっていた。
ただ、24金とされたシャレーナのペン先はガチガチに硬くて24金のメリットが何もなかったように記憶している。


でペン先を引っ張って抜いたときに24金製と確信!柔らかすぎてつまむ力に負けて、クニャっと曲がってしまったのだが、伸ばすと元通りの姿になった。まるで粘土みたいに柔い。
弾力がある柔らかさではなく、ただただ柔らかいというか柔い。ペン先の片側を爪で押すと、そのままの状態で固定されるほど。こりゃ調整出来まへんで〜・・・
それにしても酷いスリットの盛り上がり!きっとペン先本体の金が柔らかすぎて、切り割りを入れる際の刃物の回転でめくれ上がったのだろう。これでよく出荷検査をくぐり抜けたなぁ〜


試作した段階で【製品化は無理だ】という声が上がってもおかしくないはずなんだけどなぁ。もっとも当時は出荷すれば右から左へ売れていく時代だったのかもしれない。
そういう時代には絶対に良い製品は生まれない。企業は慢心し、技術者は不味いなぁ・・・と思いながらも言葉を飲み込んでしまうしかない時代だったのだろう。
日本の製造業が一度は経験している影の部分。こういうのを経験、反省して今の日本の製造業があるのじゃ。


このように柔らかい素材にペーパーを当てると傷がつく。それをいかに細かい素材で磨いても鏡面にはならず必ず刃物というかペーパーの傷がつく。
硬い素材を磨いた方がピカピカになる。柔らかい物を鏡面に磨いてもすぐに傷がついて曇ってしまう。柔らかい素材を磨くのは無駄なのじゃ。いわんや24金磨きなど愚の骨頂!

24金製ペン先は、拙者のペンクリへの出入り禁止を宣言する!ちなみに今まで出入り禁止になったのは・・・けっこうある。
(1)インク止め式とバキューマティック式 (拙者が直せないから)
(2)独逸マイナーブランドのセルロイド軸 (すぐに割れるから)
(3)1950年代No.149のコルクが死んだもの (首軸を捻るとねじ切れるリスクが高いから)
(4)1960年代の2桁Montblanc (No.74などは握っただけで首軸が割れるリスクが高いから)
(5)金以外のペン先がついた万年筆 (修理するのに指が痛いから)
(6)24金製ペン先付き萬年筆 (柔らかすぎて時間がかかるから)
今回、目出度く6番目に入った!

インクフローも良く、筆記バランスも良い!大嫌いだが書き味抜群の万年筆になってしまった!う〜ん、複雑な心境じゃな・・・
【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1h 修理調整2.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間