2013年03月25日

月曜日の調整報告【 Montblanc No.136 満身創痍からの復活 】

1今回の調整報告は大作。まるで大河ドラマのよう。ただ・・・少しだけお笑いが入った大河ドラマかも?
主人公はMontblanc No.136でスチールニブ付き。いわいるWar Time Modelじゃ。金が使えないのでスチールをつかったのだが、そのおかげでめっちゃ柔らかい(素材が薄い)。
マニア垂涎のモデルだが、あまりに製造から時間が経過しており、しかも経年変化に弱いセルロイド軸。
持ち込まれたのはインク漏れが激しいから。なんせ至る所にクラックがある。修理には首軸を外す必要があるが、非常に胴軸が割れやすい。
【これって怖いんだよぅ。ちょっと力を入れると・・・・このようにポロリと割れるんだよ】と持ち主に脆さを実感してもらうハメになった。動揺を隠せない依頼人と拙者。
【まぁ、なんとか書けるようには出来るかもしれない】と持ち帰ったシロモノ。あまりに酷いので直るとは思わなかったのだが・・・・

2こちらはキャップを嵌めて天冠部分を外したところ。キャップの刻印を見てもらう目的だったが、どの程度ペン先が天冠内にはみ出しているのか良くわかる。
No.13XシリーズはNo.14Xシリーズと比べればはみ出しが少なく、修理しやすい。No.14Xシリーズではかなり押し込んでおかないと、キャップを締めるとペン先がひん曲がる!天冠の尻に衝突してしまうのじゃ。

34こちらはペン先拡大画像。最近ではペンポイントを見れば、最後に調整したのは誰の指導の下で修行した人かはなんとなく見当がつくようになった。この調整は独立系じゃな。
スチールで作ったとはいえ、手抜きが無いのがMontblanc。実に良い形をしている。またスリットの間隔の出し方は神業的!
書いてみるとなかなか優れた書き味だが、あまりインクが出て来ない。またすぐにインクが出なくなる。ああ、これはあの細工をしたなと直感でわかった。
オリジナルNo.13Xでインクフローが少ない事はあり得ない。ドクドクと出過ぎる事はあっても、フローが少ないと言うことは細工をしない限りあり得ない。それほどインクフローは良いはずなのじゃ。

5こちらがボッコリと割れてしまった胴軸のセルロイド。こうなったら普通はお葬式を出してお別れするのだが、ここからがフランケンシュタイン伯爵の出番じゃ。
そもそも胴軸がやせ細っていてキャップがスカスカ。それにここまでセルが欠けたらネジとしては機能しない。そこで被せ式キャップで我慢することにした。
また修理には、アロンゆるみ止め、シューズドクターN ホワイト、シューグー、マニキュアを使う事にした。左二つがクラック塞ぎよう、右二つは見栄え改善用じゃ。

67こちらが横顔。ペン先とペン芯はピッタリと密着している。経年変化でペン芯はお辞儀しやすいのだが、ちゃんとヒートガンでお辞儀修整をしてあるらしい。
またVintageのペン先にも関わらずペン先のスリット部分に段差が無い調整になっている。
最近は(国産メーカーであっても)出荷段階で、ペンポイントの腹は合っているがスリット部分に段差があるものがある。
これはペン芯にペン先を乗せていきなり研ぐからだ・・・という説を昨日聞いて大いに共感した。
本来なら、スリットの部分で段差が無いようにそろえ、その状態でペン先とペン芯を完全固定したうえで、背中粗研ぎ、腹粗研ぎ、背中微調整、腹仕上げ研ぎと四回以上研がねば完璧な調整とはならないのではないか?

8こちらが胴軸後端部と尻軸の境目に出来たクラック。このままではまずいので、アロンゆるみ止めを各クラックの上に厚く塗り、首軸先端部を指でふさぎ、尻軸を外して胴軸だけにした状態で、胴軸後端部を口に加え、スッと息を吸う。この段階でゆるみ止めはクラックの中に吸い込まれそこで固まる。注意すべきは、ゆるみ止めは猛毒の可能性があるので、決して飲み込まないように!拙者のようになれてくると自分で吸う強さをコントロール出来るが、初めてだと飲み込んでしまう可能性もあり危険!やるなら遺書を書いてからやりなされ。

910こちらは欠けた胴軸の修理法。まずはアロンゆるみ止めを吸わせた後、シューズドクターN ホワイトを細かい歯科医用工具で万遍なく欠けた箇所に押し込んで一昼夜以上乾かす。
次に、シューグーを塗る部分の横側を赤いビニールテープで2〜3个慮さになるまでぐるぐる巻きにする。そしてシューグーを塗る部分の両側(ビニールテープの隙間)をTWSBIの詰め物を細く切った物で埋め、透明テープで留める。そのくぼみにシューグーを埋めて熱湯に入れるとすぐに固まる。この時、ビニールテープを首軸先端部まで強く巻いておくと、熱湯に入れても首軸には直接は熱が伝わらないのでエボナイトが曇らない。

11シューグーが固まったらテープを外し、左のように削ってから胴軸中央までを水につけて吸入を繰り返し、クラックによる空気抜けが無いかどうか確認する。あれば、再度やり直し!
この確認が終了したら、表面にマニキュアを塗って多少艶を出す。これで作業は終了。もちろんキャップは回せず、押し込むだけになるが胴体が軽いので外れたりはしない。

12で、筆記試験をしたのだが、すぐにインクが出なくなってしまう。おっと、あれを外すのを忘れていた。
アレというのはペン芯に押し込まれたエボナイト?の破片。空気の流れを抑制してインクの出を悪くする工夫なのだが、ほとんど空気の流れを遮断してしまっている。
そこでこの加工品をペン芯から抜き取って試して見た。ものすごいインクフローだが、おかげで最近はやりのFlexの文字が筆記できる。ただしコピー用紙に書くと滲む。
とりあえず、萬年筆はいっぱい持ってる依頼人なので、特殊用途に使うということで、ペン芯のスリットには異物を挟まないままにしておいた。ここを少し塞ぐだけでインクフローは激減する。でもインクが止まっては困る。
この詰め物を何にするのかは面白い研究テーマなので、依頼人の本年の課題としよう!


【 今回執筆時間:11時間 】 画像準備2h 修理調整8h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
あ、あ、あれが復活したんですかーーー!!!!
し、し、ししょ〜〜う!
骨粗しょう症どころか、骨が溶け出していたような崩れ方だったのに!!
もうペン先とキャップとピストンだけパーツ保管を覚悟していました。
ありがたや〜〜・・・おそろしくもあります・・・(泣感謝)
昨夜の悪夢の後なので、ひ、光がさしてまいりました。

セルロイド接着には酢酸アミルって聞いたことがあるんですが、
私にはとうてい無理な・・・超〜職人技!
というか、修理8Hって、m(_ _)m m(_ _)m m(_ _)m m(_ _)m

あ、課題・・・ガンバって悩みます。
Posted by whitestar_ftl at 2013年03月25日 12:43
「針なし注射器」を使い、左手の親指、人差し指、掌で軸の開口部を塞ぐと同時に注射器を握っておいて、右手で吸引するという方法もありますね。
Posted by Mont Peli at 2013年03月25日 11:43
>胴軸後端部を口に加え、スッと息を吸う。

息を「吸う」のではなく、「吹き込む」のはどうでしょうか。
加減をしながら吹き込んだ後に開放してやれば、開いたクラックが閉じる時に吸引力が働くと思います。
毒性があるということあれば、吸わないに越したことはないと思います。御身お大切に。
Posted by Mont Peli at 2013年03月25日 07:57