2013年07月08日

月曜日の調整報告【Platinum センチュリー 連翹 14K-M インクフロー向上 】

1今回の生贄は、今年の三越の万年筆祭り直前に三越でネット販売された【連翹】。非常に魅力的な軸色なので万年筆祭りまでに売り切れるか?とも思われた。
そこでさっさと2本購入したのであるが、萬年筆愛好家の知り合いに聞いたところ、購入者はすべからく2本購入していた。
どうやら企画は当たったらしい!限定100本ということであったが、一般向けに販売するのであれば、500本でもはけたであろう。
ちなみにWAGNER 2008やWAGNER 2010、WAGNER 2013は、定価が2万円以上であっても100本が会員内だけではけている。
三越のブランド力と、この出来+値段であれば500本は軽々? 三越限定にするかどうかはともかくとして、この鮮やかな原色系のバリエーションをぜひ毎年作って欲しい。値段も安いので、ラミー・サファリの対抗馬としてどうだろう?

23フローが良くないので、フローを限界まで向上させて欲しいという要望。ペン先先端部は詰まっているわけではなく、ごくわずか開いている。
それにしても美しいペン先だなぁ・・・。無駄な刻印が無いのでスッキリしているが、富士山の頂上の紋様だけはしっかりと残している。
富士山が世界遺産に認定されたので、その事をアピールすれば、新たな萬年筆ユーザを増やす足がかりになるかもしれない。
2013年限定の【プラチナ・富士山 世界遺産認定記念モデル】なんてのも欲しいなぁ。戯言だが・・・

45ペンポイントの研ぎは、先端部の両側をヤットコで挟んで幅を狭めたような形状。
工夫されたペンポイントを回転する研ぎ機に突っ込んで一瞬で削って引き抜いたような形状。早い話が手で研磨した形跡が無いのが少し残念。
もっとも個体差の無さはLamyに匹敵するくらいなので、あながち機械研ぎが悪いわけではない。それに現在のPelikanと比べればずっと整った形状をしている。

67左画像がペン先の表と裏。実に美しい形状をしている。美しさだけなら開高健モデル 14C-M(角研ぎ)に次ぐ美しさかもしれない。
表の刻印を相当強く打刻していると見えて、表の刻印の余波がペン先の裏側に多少残っている。太さ刻印の【M】も打刻されている。てっきりレーザー刻印だと思っていた。
たしかに同じペン先を大量に作るなら打刻刻印の方が作業時間の観点から効率的だろう。
ペン先の裏側に入れられた【113】という製造時期と思われる刻印は表に余波が出ていない。よほど手加減して打ったのかな?不思議じゃ・・・

8これは作業途中の確認画像だが、インクフローを良くするために、韓国PenHoodのParker 51 会長から伝授された方法を試してみた。
すなわち、ペン先の裏側に細かい傷をつけ、表面張力を殺してインクを流れやすくする。浸けペンならハート穴から前だけ擦れば十分なのだが、ペン芯の溝が心細いので根元まで擦った。
これがペン芯を持つ萬年筆に効果があるかどうかは不明だが、一本溝のペン芯を持つモデルに、裏側ガサガザ加工が多いように思ったので試して見ることにした。

9こちらが清掃後のペン芯。実は新品にもかかわらず、画像左側のヒダの中にプラスティックの削り滓がかなり多く残っていた。
このヒダの部分は空気の通り道なので、ここに削り滓が残っていれば、空気の流れが遮断され、結果としてインクフローが悪くなる。
この削り滓を全て取り除くと同時に、インク誘導液に浸け、さらには空気が通る方の溝巾を少し拡大し、またインク溝も清掃しておいた。

10最後にペンポイントにスイートスポットを刻み込んで、コンバーターを装着して書いてみたところ、インクフローは増大し、文句の無い書き味に変わった。
しかし、依頼人は、左のようなヨーロッパ型のコンバーターをプラチナに取り付けるアダプターを使うつもりらしい。もしカートリッジなら、今回と同じインクフローが期待できるかどうかはわからない。
拙者も使ったことのないアダプターなので、ぜひ使用結果を教えて欲しいものじゃ。


  【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 

Posted by pelikan_1931 at 09:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック