2014年02月17日

月曜日の調整報告【 OMAS 1930 14K-B インク漏れ 】

1今回の依頼品はOmas 1930というオマスで一番小さいペン先を使うモデル。しかも1970年代以前のVintageじゃ。
1990年以降の1930のペン先は異様に硬くなっておりガッカリした記憶がある。
同じペン芯を使う、OMAS EXTRA 555 用のスチール製ペン先の方がはるかに柔らかくて好感触だった。
しかし、このVintageの14金ペン先はいいなぁ・・・特にFlexではないのだが、ハート穴から先だけが少し反る感じが気持ち良い。ただし、調整しないと酷い!

23この左側画像を見れば、これがVintageのOmas 1930のペン先だとわかる。かなり穂先がシャープになっている。いわゆるハイレグ一歩手前!
ペンポイントはBだと思われるがどこにも刻印が無い。これもVintageを証明するもの。1990年以降のOmasのペン先にはペンポイントの太さを示す刻印が必ずある。
この時代のBのペンポイントの調整は丸研ぎになっている。これは珍しいなぁ。現行のPelikan M800のペン先みたい・・・
しかし、ペンポイントの付き方やカットの仕方は現在のPelikanよりは数段上じゃな。出荷前にかなり手をかけてペンポイントを研磨していると思われる。

45こちらが調整前の横顔。ペン芯は現状とほとんど同じだが、首軸内に隠れた部分の形状が現行品と少しだけ違う。
ペンポイントにはスイートスポットらしき物が出来ているが、依頼人のスイートスポットとは大きく離れている。これでは気持ち良く書けまい。
さらにはインクフローも今一歩。エッジが立ったペンポイントを持つ萬年筆でも気持ち良く書けるが、それはインクフローが良いときだけ。
インクフローが渋ければ、書き味を我慢して細字を書くしかないが、この依頼人にそれを求めるのは酷。なんせ、良い書き味の万年筆でしか仕事をしたことがないのだから・・・

67首軸にクラックがはいっているかも?手にインクがつく〜・・・との事だったが、クラックなんて生やさしい物ではなく、割れ目と言いたいほど。
首軸を正面から見ると大きな二つのクラックが見える。一つは割れ目でもう一つはクラック・・・というところか。
さて、これを何で直そうか・・・と悩んだ。パテを使うのが一番良いのだが、最近パテによって手先が以上に荒れてきたのでパテは使いたくない・・・ということはアレじゃ!
 
8首軸の割れ目とクラックにネジやま救助隊を流し込み、ゴムバンドで絞めながら固定するのだ。
これにはコツがある。絶対にゴムバンドに接着剤が付かないようにしておくこと。
そこで、先ずマスキングテープで首軸をカバーし、その上からゴムバンドをぐるぐる巻きにした。これを三日ほど放置すればひっつくかも知れない。
もしすぐにまた割れ目が出来れば、今度こそパテで割れ目を塞ぐ。一週間後が楽しみじゃ!

9こちらはペン芯と分離し、スリットをこじ開けてから切り割りの両側をサンドペーパーで磨いたあとの画像。
両側から強く詰まったペン先はそう簡単には開かない。そこでスキマゲージのお世話になるわけだ。
このスキマゲージを使うデメリットはスリットの両側に金が盛り上がってしまうこと。それをサンドペーパーで丹念に擦って傷を消すのじゃ。

10マスキングテープに輪ゴムを嵌めた状態の首軸にペン先とペン芯を押し込んだ状態が左画像。この時点では依頼者の筆記角度にあわせた調整は終了している。
もうこの形状を見ただけで書き味がわかる。試し書き不要というわけじゃ!
紙にまとわりつくようなねっとりとした書き味が予想される。はやく接着剤が固まらないかなぁ。


 【 今回執筆時間:2.5時間 】 画像準備1h 修理調整1記事執筆0.5h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 23:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック