先日の第14回ペン・トレーディング in 東京で入手した唯一の萬年筆。もちろん入手先はTOMIYA。ただし、この最新モデルは通販カタログには載っていない。世界初公開と先日、TOMIYAのBlogで紹介されたもの。
名称はTWSBI ダイアモンド 580AL で最後のALはアルミニウムの略称だとか。首軸とピストン棒がアルミニウム製となっている。
TWSBIの回転吸入式はPelikan M800をベースとして開発されたのだが、時に意味不明の改良をする。今回のピストン棒のアルミニウム化もそれ。
何故に樹脂製のピストン棒をアルミニウムにするのかなぁ？と思っていたのだが、実際に書いてみると理由がわかった。
寝かせて書く拙者には、えらくバランスが良いのじゃ。これによってM800よりも1〜2g重くなっただけなのだが、ひょっとするとM800よりもここちよく書ける！
簡単に分解してみたのが左画像。なるほど、最初のダイアモンド 530の時に、クラックが入りまくった首軸をアルミニウム製にして強化をはかったのじゃな。その分、前が重くなってしまうので、ピストン棒もアルミニウムにして後ろ半分を重くして前後のバランスを取ったのかな？考えすぎかな？
ただTWSBIの社長に実際にお会いして話を聞いた拙者としては、彼が非常に細部にこだわる理論派だと考えているので、前後バランス説はあたっていると思う。
M800をコピーするのにまったく悪びれていない事以外には、すごくて素敵な人だった。前者は文化の違いかなぁ〜とスルーした。
こちらがそのピストン軸。かなり荒々しくアルミを削ったような痕跡が残っている。この荒々しさが魅力！日本人ならこういうところに無駄にコストをかけて原価を上げてしまう。拙者などその典型だろう。そういう人間がこういう仕上がりを見ると、うなってしまう。
なるほどそういう手があったか・・・と感心するのじゃ。表面を研磨するぐらいにきれいに仕上げるのが当たり前と思っていたが、こういうやりかたもあるなぁと目から鱗！
やはり自分だけの世界に閉じこもっていては進歩は無いな。
ペン芯は左側画像のように乾燥していて濡れ特性が悪そうなので、インク誘導液につけて乾かした。その状態が右側画像。これはポリエチレングリコール400の25%水溶液。通称【めだか汁】。これに軽くつけただけで書き出し掠れの確率が激減する。不思議じゃ・・・
ペン先は今までとそれほど変わっていない。ドイツ製のスチールペン先。かなり硬いペン先で手で両側に引っ張ってスリットを開こうとしたがビクともしない。そこで左右別々にペン先を上下にグニャグニャと曲げつつ少しずつ外側にそらす。そして最後に上下を合わせる。このやり方は、長原先生に初めて萬年筆を調整してもらったときに教わった。
ところが、スリットが開いてもしばらくすると、左側画像のようにスリットが再度詰まってしまう。相当に寄りの力がたまっているらしい。そこでスリットに0.2�亳�の隙間ゲージを押し込んで、ハート穴付近でギシギシとしごいた。こうすると左右はかなりの上下段差が出来る。
これを指で直して上下の段差をなくすのだが、その際、可能な限り外側に曲げるようにペン先を上下動させるのじゃ。こうすると右側画像のようにスリットが開いたまま、上下が合う。
ただし、この状態では丸研ぎのペンポイントとなり、拙者の好きなStub調の字形にならない。そこでペンポイントの頂点部分を削って平たくする。次いで1200番の耐水ペーパの上で住所氏名を書きスイートスポットの位置を確かめる。
そして最後はそのポイントを中心としてスイートスポットを削り込んでいくのじゃ。
出来あがったペン先にインクを含ませ、好みの筆記角度で字を書いてみる。完璧！これならM800のBと戦える！
先日のらすとるむさんのBlog動画にあるセナ対アレジの戦いのアレジくらいにはなれただろう。
