2014年07月20日

羽田空港→伊丹空港の間の気圧変化

12土曜日には、Y.Y. Day に参加するために飛行機で羽田空港から伊丹空港に飛んだ。その行程で気圧を測定したので、その結果を報告しておこう。
飛行機はボーイング767-300でコードシェア便。すなわちANAではなく、スターアライアンス・メンバーの別の航空会社による運航と思われる。
左右が2列、中央が3列?のかなり小さな飛行機だった。車体も古く、大丈夫かなぁ・・・という不安がよぎる。
おりしも関東地方は空気の状態が不安定で、雨が降ったりやんだり。上空へ行ってもシートベルトを外せないかもしれないという放送があった。
機内に入って座席に着いた段階で、気圧計を1013hPa(ヘクトパスカル)に合わせておいた。これから上空に行き、再び着陸するまでの気圧の変化を計測した。

3地上にいる間はずっと1013hPaだった気圧は、上空でベルト着用サインが消えた段階で905hPaを挿した。地上1000m付近の気圧と同じ。
ちなみにこのとき、飛行機は巡航高度の26000フィート(約8000m弱)にいた。もし飛行機の外へ出て気圧を測れば、355hPaぐらいのはず。
実際に気圧計・高度計の針が大幅に動くのを初めて見たので、感激した!ちなみにこの気圧計は電子機器ではないので、上昇中も膝の上に置いてずっと針を眺めていた。
地上高から算出すれば355hPaの気圧が、実際には905hPaぐらいにしか下がっていない。
これは飛行機内部が金属の筒で外気圧から遮断された状態だからであろう。その高度まで一気に上るためにエンジンパワーを使うため、機内を地上と同じ気圧にするのは少しおろそかになるのか?
あるいは、わざと少しずつ減圧し、飛行機の機体が外に向かって膨張しようとする急激な変化を避けようとしているのか?

4巡航高度で飛んでいる最中も、だんだんと気圧が下がっていく。これにはびっくりした。
一番下がったところでは850hPa(高度1500m相当)まで下がり、ここでしばらく安定した。
操縦室で気圧調整を手動で行っていると言うよりも、貨物室かどこかから少しずつ外気を入れ、内外の気圧差を少しずつ少なくしようとしているのか?
しかし、この低気圧の時間も長くは続かなかった。約10分もすれば、気圧はだんだんと上がってきた。すなわち、機内の気圧が少しずつ上がっていったのじゃ。
高度がほとんど変化しないにもかかわらず気圧が上がっていく。これはどう考えても増圧しているとしか思えない。

56その動きを時系列に撮影したのが、左の画像。左側は、少しずつ気圧が高くなっている途中の画像。
そして右側は、【これから降下を開始します】という声が車内マイクから流れてきた時。
なんと、これから降下を開始するというアナウンスの時点では、社内外の気圧差は全くなし。
これはコンピュター制御で降下開始前までに機内の気圧が地上と同じに制御しているのでは?と思う。
そして下降中も機内の気圧差には変化が無い。たしかに下降すれば外部からの圧力がかかりやすくなるので、内部の気圧は、それにバランスするのに十分=1013hPaが良いのかもしれない。

7こちらが地上に降りて、ベルト着用サインが消えた時の気圧。
この一連の気圧変化が正しいとすれば、インクが漏れるのは、飛び立ってからベルト着用サインが消えるまでと言って良いのではないか?
この時には、インクサック内部の気圧は地上と同じで、機内の気圧は、160hPaほど低い。すなわち、インクサックは収縮し、インクがペン芯に移動しやすくなっているはずじゃ。
そこから最低気圧を経てから地上と同じ気圧になるまでは、変化が緩慢なので、あまりインク漏れのリスクにならないのではないか?
この測定結果はおもしろいので、今後飛行機に乗るたびに計測してみようと思う。


Posted by pelikan_1931 at 23:30│Comments(14) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
IloveHappyです。とびさん、丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。今まで機種による客室環境の違いを意識せずにいたので、きちんとした論理になっていなかったことを思い知らされました。反省しています。万年筆に直接関係ないマニアックな話に偏ってしまいましたが、専門家にコメントしていただいたことで、インクが漏れる時と漏れない時がある不思議は皆さんもある程度整理ができたのではないかと思っています。B787は最新機種なのに評判はあまり良くなくて、耳に優しいのは圧倒的にB777ですね。私は高山病になりやすく、耳も詰まりがちなので、気圧変化が大きい機種は今後避けようと思っています。
Posted by IloveHappy at 2014年07月24日 12:39
アナログな私ですがwww
上昇時吹き出しやすく、下降時は吸い込みやすくなる。
なので、上空でキャップ内で漏れださないようにできれば、溢れそうになったインクは下降時にまたタンクに吸い込まれる。。。というか戻る。
だから結果漏れていないと思うような状態。。。
という考えです。。。
それっぽい結果をアップしますwww

Posted by whitestar_ftl at 2014年07月24日 01:25
(とび、やや訂正です)

失礼いたしました。やや読み間違いしておりました。
大阪ー東京で「離陸から着陸まで・・・気圧変化は±10hPa程度」だったのはおそらく低高度を飛んでいたためと思われます。手元にそういった資料がないため、どのぐらいの高度から気圧変化がない飛行が出来るのか分かりませんが、上の高度が揺れて下を飛んでいることはそれなりの頻度であります。
Posted by とび at 2014年07月23日 21:13
とびです。

IloveHappyさん、かなりお詳しくお調べされているようで。
B777は登場したのが20年前、B767よりもだいぶ新しい機材です。こちらは飛行計画(今日はどのぐらいの高度を何時間飛ぶか等)を入力するコンピュータと与圧制御装置が連動しています。上昇率も考慮しつつ、巡航高度でどのぐらいの客室の与圧が許容されるか計算した上で、適切な値になだらかにもっていくように調整するわけです。
大阪と東京の区間だと通常29000フィート付近を飛行します。この高度において機体に許される外圧と内圧の差がおそらく気圧高度850hPaぐらいになるのではないかと思われ、与圧装置は上昇中からそこを目標に気圧を下げていくわけです。
外圧と内圧の差の許容値はB787はさらに大きいため、同じ高度で飛行すればB787はもっと圧力をかけられます。つまりは気圧高度を下げて飛行できます。これがこの20年の技術の進化ですね。

もし病人の方などが乗っておられて必要があるならば与圧装置をいじることはなく、低い高度で飛び、体に影響の大きい降下の際にはなるべく降下率を小さくするようにして飛行します。私の経験ではそのような必要があったことは現在まではありません。
またB777が耳にきにくいのはおそらく、飛行計画のコンピュータが着陸する時刻を計算し、その時間までに地上気圧になるように客室の気圧高度の降下率をゆっくり下げるからだと思います。人間の耳は、気圧が下がる方への不快感は小さいものの、上がる方への不快感は大きいのです。

万年筆の話題からそれてしまって申し訳ありません。ちなみに万年筆の方は完全なる初心者です(^◇^;)
Posted by とび at 2014年07月23日 21:05
(IloveHappy続き)
 ところがある日の便は針が高度500mくらいまでも上がらないので「???!」と思っていたところ、機長から「本日はご高齢の方にご搭乗いただいたため、機内の気圧をあまり上げませんでした」というアナウンスがわざわざあったので合点がいった、という記憶があります。おそらく、医師から注意を受けた病気持ちの人が乗っていたのではないでしょうか? 機長が今日の客筋を見て、ばーさんばっかりだからという理由で与圧システムを設定変更することはないと思いますが、会社や医師の指示が出れば規則に沿って機内気圧をいじることがあるとの認識を持っています。
 B777は客室高度をあまり上げずに済み、耳鳴りがしにくいという定評があるようですが、「±10hPa程度」しか変動がなかったというのは、与圧システムお任せでは説明しきれないのでは?と思っています。よろしくお願いします。
Posted by IloveHappy at 2014年07月23日 12:31
再び、IloveHappyです。とびさんに質問をさせてください。森師匠の7月21日の記事「第五回Y.Y.Dayに関するエトセテラ」の中で、大阪からの帰路便は、「ANAでボーイングB777-200 (3列-4列-3列)の最後尾の席45A。かなり大型機!・・・離陸から着陸まで、高度計をすーっと眺めていたところ、出発から急上昇、定位置走行、降下の間中、気圧変化は±10hPa程度。どうやら、大型機では気圧変化無し、よって漏れも無し!ということになりそうです。もっとも、同じ飛行機を使っても会社によって設定が違うかもしれない」とあります。この便が「離陸から着陸まで・・・気圧変化は±10hPa程度」だった理由は何とお考えですか? B777は気圧変化をさせない設定になっているんでしょうか? あるいは航空管制にリクエストして低く飛んだとか。
 私は5年前地方勤務になってから、東京出張は飛行機なのでちょくちょく高度計を持って乗っていました。搭乗中眺め続けてはいませんでしたが、上空では判で押したように客室高度1500m(850hPa)を示していたので、国内線の設定は850hPaが相場という経験からのコメントをしている訳です。
Posted by IloveHappy at 2014年07月23日 12:30
再び、とびです。

IloveHappyさん、「巡航高度26000フィートでも結果的に機内気圧を1013hpaにできるなら、わざわざ一旦下げなくても良いじゃん」ごもっともです。B767が初飛行をしたのは1981年、もう30年以上も前です。その頃ではまだ飛行計画を入力するコンピュータと与圧の制御装置を連動させるほど技術が発達しておらず、ご想像の通り外圧と内圧の差が基準を超えないように余裕を持って機内気圧を下げていくしかなかったのだと思います。
加えてB767は他の機種に比較すると上昇率が圧倒的に大きく、飛行機が軽いとどんどん上がってしまい調整が間に合わないほどです。
最近の飛行機はコンピュータを連動させているのでまた違った挙動になると思います。私自身、気圧計を持ち込んだことがないので想像の範囲になりますが。

それと制御は与圧装置にお任せ状態なので客層で与圧を変えることはありません。気圧を上げたければ高度を下げることになります。

ちなみに万年筆を持っていっても私の経験ではほとんど漏れたことがないです。ラッキーなだけかもしれませんが。

Posted by とび at 2014年07月22日 23:06
IloveHappyです。往路便の結果はほぼ私の想定内でした。過去の経験から言って国内線は飛行時間が短いからか、機内気圧は一番下がっても850hPa(高度1500m相当)が通り相場だとの認識です。ただし「この低気圧の時間も長くは続かなかった。約10分もすれば、気圧はだんだんと上がってきた。」という経過はやや意外でした。現役操縦士とびさんのコメントがあるので、この複雑なプロセスを辿る理由は詳しく聞きたいところです。「巡航高度26000フィートでも結果的に機内気圧を1013hpaにできるなら、わざわざ一旦下げなくても良いじゃん」ってことです。機体に掛かる負荷との兼ね合いってことでしょうか? 7月20日の記事で、お帰りの便は「離陸から着陸まで……気圧変化は±10hPa程度」で済んでいるので、やろうと思えばできる訳ですから。帰りの便が気圧を変化させなかった理由は、大型機だからではなくその便に病人または老人が乗っていたから、というのが私の推理です。気圧が下がると酸素分圧も下がり体調が崩れる、高山病の症状が出ますね。それを回避するために機長判断で「機内気圧は下げない」モードにしたのでは? 機内気圧の高め設計が売りの787のCAさんから「すごく勤務が楽」という感想が出るのは、酸素がそれだけ濃いことが理由だと理解しています。識者のご意見を待ちます。
Posted by IloveHappy at 2014年07月22日 12:19
とびさん
おお、プロトーク!ありがとうございます。
巡航速度になっても気圧が下がっていったり、途中から上がっていったりした理由が理解できました。
今度、ぜひ操縦席でのインク漏れ実験をお願いしまーす!
Posted by pelikan_1931 at 2014年07月22日 11:38
つよしさん

今週末の熊本行きはJALなので確認してみまーす!
Posted by pelikan_1931 at 2014年07月22日 11:35
拙者が乗った一番小さな飛行機は企業用プライベートジェットで左右一席ずつ。ただ、この時はすぐに酔っ払ったので何も覚えていない。

旅客用で乗ったのは、アムステルダム空港から、アイルランドのダブリンに飛んだ飛行機で、これた左右2列ずつだった。
何故か、左側から右側に席を移動させられた・・・ポチさんの話の通り。でもさすがにガムテープは貼ってなかった。
客室乗務員が通路の幅よりも太く、横向きで歩いていたのが、気が気ではなかったのをうっすらと覚えている。今から27年前のこと・・・
Posted by pelikan_1931 at 2014年07月22日 11:34
いつも楽しく拝見させていただいております。飛行機の操縦士をしているものです。

与圧のシステムはかなり複雑で、巡航高度、巡航時間によって動きがが変わってきます。
上昇中は機体の上昇にあわせて「許容される外と中の気圧差」を維持できるように機内の気圧を上げていきます(実際には下がりますが与圧システムは増圧してます)。
巡航に入ると今度は「地上の気圧高度」と「許容される外と中の気圧差から導かれる機内の気圧高度」を比較し、高い方に合わせようとします。高度26000フィートは比較的低い高度なので、この場合は羽田の高度の気圧になるように気圧を上げていくことになります。
時間がたつと羽田の高度の気圧1013hpaになりそのままずっと飛ぶことになるのですが、伊丹から羽田は飛行機にとっては短く、1013hpaになるのが降下開始のギリギリだったのでしょう。それ以降は降下中も地上の気圧で維持されることになります。
那覇から羽田などでもっと高い高度を飛ぶと動きはまた変わってきます。

複雑なのでうまくお伝えできなくて申し訳ありませんが・・・
Posted by とび at 2014年07月22日 01:35
お師匠さま、

2-3-2でしたらまだ大きい方ですよw
とある所で2-2のちっこいのに乗ったことあります。
車体が古いなんてもんじゃなくて、換気口の横にガムテープが貼って
あるのを見たときには、
「あれ、剥がしたらどうなるんだろ?」
という好奇心が募りましたw
もちろん、体重を聞かれましたよw

ボクは乗り物酔いはほとんどしないのですが、この気圧の変化に弱く、
航空性中耳炎になったことも何度かあります。
耳が痛くなってくると、もうちっと圧力を上げてくれないかなあ、
と思いますねぇ。
確か上空では0.8atm(1atm=1013hPa)くらいに調整されていると思います。


Posted by ぽち at 2014年07月21日 22:33
ご無沙汰しております。
私も採用で国内出張が多く飛行機を頻繁に利用し、いざ面接のときにペンを使おうと思って使ったら指も面接用紙もインクだらけ・・
という経験を何度もしました。
その際に膨張率の高い空気の影響を受けないように、インクの少ないペンを持っていかない。ペンは上向きにするなどしたらインク漏れは少なくなりました。
ただ、不思議なのは離陸後確認するとインク漏れを起こしていることもあり離着陸時のGの関係もあるのかな?と。

メーカー別だとオマスは必ずおもらしをしていた記憶があります。ペン芯の構造も影響あるんですかね・・・。

JALですが機内気圧の説明があったので添付しておきます。

https://www.jal.co.jp/health/before/environment.html
Posted by つよし at 2014年07月21日 12:43