【萬年筆は刃物】シリーズでは、他人の萬年筆を調整する【調整師】に対するアドバイスは書いていないはず。全てが自分で自分の萬年筆を調整する事を前提としている。
萬年筆研究会【WAGNER】の会場で認定調整師以外が、他の会員が所有する萬年筆を研いだら永久追放となる。調整師としての心構えが出来ていない者が調整をやってはならないと考えているからだ。
ただし会場外であれば、誰が誰の萬年筆をいじろうと知ったことではない。会場外では萬年筆研究会【WAGNER】の会員というのは何の意味も持たない。
WAGNERとは会場という【場】 の中でのみ成立する概念と考えている。従って会場内は聖地!初参加者以外の勝手な行動は、ダメヨ〜・・・・
調整の対象を、自分が所有する萬年筆に限った場合という前提で、最初に必要な工具は・・・
★15倍程度のルーペ 最低でもこれくらいの品を選ぶべき
拙者が遠征で使っているのはこちらだが、これは工具箱の制約でラッパ部分が拡がっていると収納できないから。
自宅での調整には、こちらのスケールルーペからスケール部分を外したものを使っている。他の調整師に教えてもらったルーペだが、今のところこれより良く見えて且つ使いやすい物には出会っていない。
ではルーペで何を見るか?ペンポイント・・・なんて抽象的な答えではダメ!
ルーペで観察すべきは、自分にピッタリ合う萬年筆のペンポイントと、調整したい萬年筆のペンポイント!これらを比較して、なぜ書き味が良いのか・悪いのかを文章として纏めておく。
具体的には、書き味の良い萬年筆のペンポイント(可能なら自分用に調整されたペンポイント)と調整したい萬年筆のペンポイントとの違いを、ルーペを見ながらスケッチや言葉として紙に書いてみる。
いざ、書こうとしても、どのように表現していいか迷うことも多いだろうが、この書いてまとめる作業をやるのが、一番被害が少ない。
拙者が初めてペン先を研ぎ始めた時、あっというまに何十本もの萬年筆のペン先を飛ばしたのは、この【ベンチマーキング】を怠ったから。
今考えれば無謀だが、初めてルーペを購入したのは、雑誌で金ペン堂のオヤジさんの写真を見てから。その時には最低でも50本はダメにしていたはず・・・
サンドペーパーや砥石で研いだ結果は筆記によって感知できると考えていた。間違いではないが、手遅れになることが多かった。
なんとか、両者のペンポイントの描写が終わったら、次には、調整したい萬年筆のペンポイントを書き味の良いペンポイントに近づけるための仮説を作る。
この仮説作りの際に、当Blogの調整報告の記事を参考にして下され。少しぐらいは参考になるはずだ。
この仮説を作って、研いでも、すぐに思い通りの書き味になるわけではない。もしならなかったら、再度書き味の良い萬年筆のペンポイントとのベンチマーキングをして微調整を繰り返すのが得策。
たった一本の萬年筆を極上の書き味に調整してもらい、そこから先は書き味がどんどん落ちていくと・・・いう状態に満足できるのなら自己調整は必要ない。
しかし、先にも述べたように、どんなに完璧な調整を施していても、使っていればペンポイントにズレが出たり、引っかかりが出来たりする。
出来れば書き味の良い萬年筆はベンチマーキング用に保存しておき、書き味の悪い萬年筆を自己調整で、そちらに近づけるという作業をするのが自己調整の達人への道だ。
あとは、機械を使わないで調整する調整師のソバに張り付いて、何を使って、どこをどうやって調整しているのかを観察し、メモするのが得策。
ペンポイントのどこをどの程度研けば、どういう書き味になるかは、実際に研磨してみなければ身につかない。
萬年筆研究会【WAGNER】で観察していると、ペンポイントを穴の空くほど見る人は、たいていが 仮説立案→研磨→結果判定→再研磨 というサイクルで自己調整をした経験を持っている。
そして自分に無い技を持っている調整師の手元を穴の空くほど眺めているわけじゃ。自己調整の上達が早いのはこういう人!
拙者の場合、調整を観察するのは大歓迎なので、お気軽にどうぞ!ただし邪魔しちゃ駄目!