2014年10月24日

金曜日の調整報告【 Stipula Blasco Ibanez 14K-F フレンドリーに!】

1今回の生贄はYAMAMOTOさんからのもので、2011年半ばに伊太利亜のネット・ペンショップで購入したらしい。
2008年頃から値上がりし始めた金の価格がまだ下がりきっていなかった時代なので、14金のペン先が付いている。
おかげで、ペン先の特性は18金時代のものよりも素直。ただしスリットを拡げようとしても、日本製のように簡単には成型できないのも事実。それにしても綺麗な青色だなぁ。

23持ち主は【このペンは、メーカー→販売店→消費者の経路で、ペン先調整が一切なされないまま流れてきたものという気がします】とか。
その流通経路で、ほとんど試し書きなどされないままでは無かったかと想像する。個々のパーツにほとんど傷が付いていない。
ところが書いてみると、インクフローが悪いこともあって、いかにも下卑た書き味になってしまう。個々のパーツは素晴らしいのに、萬年筆としてみると落第生・・・そんな感じの書き味じゃ。

45上の写真のように、上から見た状態では何も問題を発見できない。そして横顔もしかり。
この画像を見ただけで、書き味の見当が付いたらすごいな!丸くて、気品があって、左右対称の形状をした美しいペンポイントだが・・・平凡だな、書き味が!

6このBlasco Ibanezで珍しいのは、胴軸を固定する部分にOリングが取り付けられている。これなら胴体にインクをいれてもインクが出てくるかも知れない。
少し困るのは、Oリングが邪魔をして、首軸を胴軸に押し込む際、あまりに力を入れて回すと、首軸が外れなくなるのじゃ。

7首軸も、外見上は1990年代の樹脂製ペン芯と実に良く似ているのだが、こちらはは数段アップしているように思われるな。
ハート穴と首軸先端部との間の裏側部分に、ペン芯から入ってくる空気とカートリッジから引っ張り出されるインクの交換場所が存在する。今回発見したものは、左右対称であった。

89こちらが清掃直後・何も調整が施されていない状態のペン先のスリットを少しだけ開いた状態。
実はこの作業は一筋縄ではいかなかった。とにかく指の力でペン先を拡げてもすぐに戻ってしまう。
結局は小鎚を使って、ペン先を少しだけ上に反らせ気味にしてみた。これで少しだけスリットが開いているのが見える。

10ちっともフレンドリーではない・・・というのが不満だそうなので、ペンポイント先端部の形状を変え、インクフローを潤沢にした。
またペン先の形状は、どことなくStub調に変えておいた。この方がシャキっとした書き味になるから。

調整が終わった萬年筆にインクを入れて書いてみる。にゅるにゅるにゅる〜っとインクが流れ出した、こういう場合は大抵は書き味が良いのだが・・・
ああ、問題なしだった!伝説は継承された!


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 

Posted by pelikan_1931 at 23:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
yamamotoさん

いつでも、いくつでも、何回でもお持ちください。
萬年筆は生き物なので、健康状態は常に変わっていますからね。
具合が悪ければ入院させましょう。
Posted by pelikan_1931 at 2014年10月27日 23:21
いつもありがとうございます!
これまで珍品から現行品に至るまでさまざまな万年筆の調整に応じていただき、とても助かっています。WAGNERの調整がなかったら、宝の持ち腐れになっていたと思う万年筆が何本あるかわかりません。調整後のペンはどれも満足できる書き味になっていて、救済されたことに感謝です。

今回のBLASCO IBANEZも、もしWAGNERを知らなかったら、「書き味が満足できなかった場合どうしよう」と入手を躊躇したか、入手しても調整されないままただ美しい万年筆で終わっていたと思います。WAGNERはこれだけでも十分な存在意義があります。本当にありがとうございました!
Posted by yamamoto at 2014年10月25日 23:09