今回は、赤ずきん半 改め 赤点半 さんより点検を依頼された正体不明の萬年筆。伊太利亜製か、米国製かまったくわからない。
それにしても小さなペン先じゃなぁ〜。こういう金をケチった萬年筆は、概ねマイナー・ブランドの萬年筆である。
あるいは、倒産寸前まで追い込まれたブランド。萬年筆製造を止める寸前のデ・ラ・ルー社のONOTOも層だったように記憶している。
それにしても、こいつはいったいどこの国のブランドなのだろう?
大きさ比較のためにPelikan M600とM101Nと並べてみた。どうやらM101Nと同じくらいの大きさのようだ。
ただ軸の素材は、かなりみすぼらしく見える。
素材は・・・セルロイドかな?細長いセルロイド板を斜めに丸めて長い軸を作ったのだろうと想像する。これは比較的簡単に作れるので、技術レベルの低いメーカーでも製造できるだろう。
軸を直接見ても、どうしても読み取れないので、右側画像のように粉を刷り込んで撮影してみた。左はスキャナー、右はリングライト付きのコンパクトデジカメでの撮影。
どうやら【gefiou】と書いてありそうなのだが、ランブロー本にもこのブランドは掲載されていない。ああ、気になる!
撮影に使ったのは、ここで紹介したオリンパス TG-3。リングライトを使ったので、文字の周りに楕円形の白いラインが残っている。これはリングライトの反射。
すなわちこのカメラを反射する物体に使うのは難しい。すなわちペンポイントの撮影にも厳しいということ。ま、もう少し使ってみよう。年末バザールには出品しませんぞ!
こちらはペン先。マイナー・ブランドにありがちな、WARRANTEDの刻印のある小さなペン先。
いったい誰が保証してくれるんや?とツッコミを入れたくなるのだが・・・。なんせペン先製造会社を示す刻印は無いからな。
製造メーカーが保証してくれると解釈することも出来るが、実際はどうだったのだろう?
右側画像を見て、最後に調整した人の腕に恐れいった。よくぞこの狭いスリット間隔を出せたものじゃ。
でも本当に驚嘆すべきは、この隙間を映像に残せた拙者のスキャナー載せ技術なのじゃ! いや、単なるまぐれでした。
こちらが横顔。これを見ると、やはりマイナーブランドのペン芯はしょぼいなぁ・・・と感じる。
かなり凸凹だし、先端部がひん曲がっている。そして実はペン先とペン芯の間に隙間が出来ている。これじゃインク切れのリスクがあるなぁ・・・
さらには、恐ろしく粗いペンポイントの素材と、丸め不足の形状。どうやら最後に調整した人は、ペンポイントの研磨は得意ではないようじゃな。
首軸を捻るとインクサックが出てきた。これは交換したばかり。しかも真っ直ぐに伸びている。良い仕事してます!
首軸がねじ式の場合は、インクサックを細くしておく必要がある。ねじ込んだ後、胴軸の後ろ側からボタンフィラーの機構を押し込むのじゃ。
ねじ式の場合、外す際は尻軸側からボタンフィラー機構を取り除いてから首軸を回して外すのが王道。機構を外さないで首軸を回すと、機構とゴムが絡まって破損するリスクが高くなる。
ペン芯はしょぼいが、ペン先の形状はなかなか美しい。拙者の好みの形状だが、願わくば、もう少し大きなペン先がいいなぁ・・・
このペン芯の溝は幅が非常に太く、とても毛細管現象が機能するとは思えない。単に重さでインクが下がってくるのでは?とも考えてしまう。
一方で空気の通り道はしっかりと確保されているので・・・早い話がものすごくインクが漏れやすいのではないかなぁ・・・
それを知っているからこそ、インクサックを小さい物にしていたのなら、直前にこの萬年筆を整備した人は、かなり萬年筆の仕組みに精通した人だと思われる。
調整された萬年筆をわかる人が見れば、調整者の技能だけではなく、知識までもが露呈してしまう。拙者も勉強しなくてはな・・・
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1.5h 修理調整0.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間