今回の依頼主は、Mont Blanc 氏、別名【ヤッター万】さん、あれ?逆だったかな?
モデルはParker 75 の純銀モデル。非常にポピュラーなモデルで、日本でも大量に販売された。
以前、書斎館の館長にうかがったところ、最盛期には羽田空港のショーケース一本だけの売店で、朝から晩までずーっとお客が途切れなかったとか。
そして、そのほとんどがParker 75目当て。お客が後ろのお客に押されてショーケースがどんどん売り手側にズレてくるので、そのショーケースを反対側から支えるだけのバイトを常に2人雇っていたとか。
お金はダンボールに入れて足で踏んづけておくだけ。トイレに行けなくて膀胱炎になりそうだった・・・それほど売れたそうだ。
残念ながら拙者はそのピークの時代には萬年筆に興味はなかった。おそらくは1970年代初期であろう。ということは館長は実家のバイトで販売していたことになる。館長と拙者は同い年なのでな。
インクがまったくでないとのことだが、ペン先のスリットはいい具合に開いている。ペン先もきれいに清掃してある。
ということは、ペン芯に問題があるか、首軸内部に問題があるかだろう。なんせParker 75の首軸は経年変化に弱いからなぁ・・・
とはいえ、首軸の形は崩れていないし、インクの酸に侵されている様子もない。とすると、ペン芯かインクだろうが・・・
ただ、カートリッジは刺さっていたが、まだ新しいブルーのカートリッジ。中古品に刺さったままになっていたわけではない。
ペンポイントは円盤研ぎ。拙者の父親のParker 75はMだったが、球の形の真ん丸いニブがついていた。
けっこう書きやすい形状なのだが、たしかにインクが出てこない。つけ書きしている間は悪くないのだが、すぐにインクが出なくなる。
これは結構重症じゃな。まずはペン芯とペン先を分離する前にスリットを開いてみて、それでもダメならペン芯とペン先を分離し、個別に清掃することにしよう。
今回新兵器として導入したのが、隙間ゲージの枚数が多いやつ。
たしか25枚のゲージがついているはずだ。枚数が多いので一見便利そうだが、ゲージとゲージの間にオイルを塗っているらしく、一度使うと指が油だらけになってしまう。
通常の隙間ゲージは9枚なので、油をふき取るのも楽だったのに・・・いいことばかりではないわぃ。
こちらがスリットを少しだけ拡げてみたペン先。通常ならこれでインクが出るはずなんだが、ちっとも出てこない。
ひょっとするとペン芯の溝が詰まっているのかもしれない。となると、ペン芯に食い込んでいるペン先をはずす必要がある。
簡単に外れるやつと、暖めてもなかなか外れないやつがあるんだよなぁ・・・と思いながらペン先ユニットを眺めていて異変に気づいた。
左側が今回のペン先ユニットで、右側が拙者のバーメイル軸についているペン先ユニット!
なんと、カートリッジ内部に入る部分が折れてなくなっている。これではインクは出てこないわなぁ・・・
しかもこの出っ張りの部分にはインク溝や空気溝が掘られているので、代用品でごまかすわけにもいかない。
そこで、拙者のバーメイル軸についていたペン先を変わりにこちらに移植することにした。
Mont Blanc 氏にはいつもお世話になっているので、プレゼントじゃ!
もちろん、ペンポイントは氏の書き癖にあわせて少しだけ研磨しておいた。今度はちゃんとインクが出ますぞ!
まぁ、Parker 75界の【Mont Blanc : モントブランク と発音】ですな。
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間