2015年01月28日

創造的作業と筆圧の関係

昨日、趣味文の清水編集長と雑談している時、面白い仮説を提示された。

筆圧が強いと創造的な作業が出来ないのではないか? というもの。

これって心当たりありません?

拙者が一時所属していたコンサルタント業界では、斬新なアイデアを見つけようとするときには、サインペンを使った。

出版業界でもアイデア出しの時には、サインペンを使うことが多いとか。

そういば、趣味文Vol.31の54、55頁にまとめたアンケート結果を見ても、

※頭の中にあるアイデアを乱雑に書き出す・・・時に使う萬年筆は、太字で、軟筆で、インクの出が良いものであり、それで速書きするという回答が他を圧倒していた。

インクフローが少ない萬年筆で速書きすると、インクの出が不足し、筆圧が上がってしまう。
従ってインクフローが良い萬年筆がアイデア出しに選ばれると言うことは、筆圧は低い方が向いていると言えよう。

筆圧が上がる持ち方は、首軸に近い方を強く握るケースが多い。
また書いている手の上あたりまで頭をかがめて書いている場合も筆圧が上がる。

たとえば、資格試験の筆記中などには、速記をあせるあまり、頭は前のめりになり、手の上あたりに位置する人もいる。
また眼とペン先が近づいていく。手には体重がかかり、筆圧は相当強くなる。

実は、油性ボールペンの太字でしっかりと紙に書く場合には、筆圧は800gほどになることもある。
普通の人の筆圧は150g程度で、萬年筆研究会【WAGNER】のベテランには50gを切る人も少なくない。

実験してみたのだが、筆圧の低い人が重い萬年筆で書くと、筆圧は上がる。 萬年筆の重量分だけ筆圧が加わるような感じかな?

10Bの鉛筆で字を書く際の筆圧は、かなり低いと思われたが、実際には250gほどある。それが絵を描く場合には少し下がる。軟らかい鉛筆といえども筆圧は萬年筆よりは必要になる。

これが、個体を紙に擦りつける鉛筆と、液体を紙に染みこませる萬年筆の違いじゃ。サインペンも同様にインクを紙に吸い込ませるが、萬年筆よりは筆圧が必要だろう。

頭に浮かんだ言葉を文字に落とす作業には、かなり筆圧が必要になるのではないか。

それに対し、モヤモヤした言葉を図示したり、コンセプトを紙に描いていくような作業の時には筆圧をかけない方が良いのではないか? 

このような漠然とした想いから・・・【筆圧をかけるほど創造性が失われる】という仮説を立てるのは、アインシュタインが宇宙定数を導入したのに近い大胆な考え方かも知れない。

しかし、創造的な作業をする際には、筆圧は低いように思えるし、ひっちゃきになって書きまくっている作業は、どう考えても創造的には思えないのだが・・・

みなさんはいかがかな? この仮説がある程度の賛同を得られれば、創造的な作業をするひとは、太字でインクドバドバの萬年筆を使おう!と言える。それによって新たな萬年筆の使い道提案が出来る。

書家の先生とか、芸術的な中国語を書く人が、太字萬年筆ばかり使うことから考えても、当たっていそうな気もするのだがなぁ。 

Posted by pelikan_1931 at 23:00│Comments(14) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
K.I1986 さん

筆圧かけると集中力が増す・・・というのはその通りですね。
集中すると筆圧が高くなると言っても同義ですが。
Posted by Pelikan_1931 at 2015年02月05日 23:06
5
はじめましてK.I1986と申します。

とても共感できる記事だったのでコメントさせていただきます。

「ひらめき(創造)」と「そのひらめきを表に引っ張ってくる作業(非創造)」を別々と認識すればわかりやすいのかな、と思いました。

ひらめきは筆圧が低いか書いていないときに起きやすく、
そのひらめきを表に引っ張ってくる作業は筆圧が高くても差し支えないかむしろ好ましい場合有り、といったところかと思います。

よって【筆圧をかけるほど創造性が失われる】は大賛成です。
勝手に付け加えると【筆圧をかけるほど創造性が失われるが集中力は増す】と思います。

私の実体験です。
Posted by K.I1986 at 2015年02月04日 05:16
歴史的なひらめきは、お風呂やトイレ、移動中(電車など)など、脳みそがアイドリング状態のときに生まれていることが多いようです。そんなときに書く、描く作業は、脱力しているだろうなぁ、と思っていたことが発端です。創造的なこと、を前提にするとまた話は違ってくるかもしれませんね。いま、落書きは人生を変える!といった内容の本を編集(3月発売! 原稿集めこれから!)しており、これも発端です。
Posted by 趣味の文具箱 清水 at 2015年01月31日 21:08
一概にナンセンス、というわけでもないような?
ただ、筆記具に依存するのはあるかもしれません。
受験勉強していた頃はボールペンを使っていましたが、
裏に痕が移るほどの筆圧で書いていました。これはボールペンで
素早く記述しようとしたら、ボールが転がらなければならないので
ある程度圧力が必要になります。それが早く転がれば転がるほど
高い圧力が必要となるので、早書きするには筆圧が高くなる、と。
万年筆の場合、筆圧が高くなると接地面との摩擦が増大し、
また紙に引っかかりやすくなるため、紙面上をスムーズに移動
しにくくなりますよね。そのため、筆圧は下がり気味になるかも。
ただ、同じ筆圧でも、素早く動かせば、時間当たりの接地面は
増えますから、平均すると、筆圧は下がってしまうのかもしれません。
どのみち、インクフローが潤沢である必要はあると思いますが。
最近はよく万年筆でポンチ絵を描きますが、さっさと簡単なポンチ絵だと
軽く描いていますし、できるだけ実際的なポンチ絵にしようとすると
ゆっくりになり筆圧も高くなっている気がします。
ボク自身が一般的かどうかは何とも言えないところですが、大雑把な
傾向としては正しいように思います。もちろん、外の方がご指摘されて
いるようにいろいろなパターンがあるのでしょうが。

Posted by ぽち at 2015年01月31日 18:22
今度、創造的作業と根を詰める作業の両方を萬年筆でやる実験をしてみるかな?
Posted by Pelikan_1931 at 2015年01月30日 23:48
お師匠さま、皆さま
興味深い仮説のご提示とそのご議論、有り難うございます。
私なりに補足させて戴きますと、筆圧が高いときと低いとき
では姿勢に始まって、肩、肘、手首、指の各関節に至るまで
自由度と言いますか『遊び』が異なるようにも思われます。
また、構想段階は低筆圧、仕上げ・清書段階では高筆圧とい
う傾向も、私的にはなるほどと思わせられます。
私は篆刻をやるのですが、古えの字を書き抜いたり、その配
置を構想するのは筆や時にはBBB萬年筆を使い低筆圧です。
一方、最終段階の『刻り』になりますとおそらくグラムでは
なくキログラム単位の筆圧がかかっていると思います。何し
ろ軟らかいといっても相手は石ですし、使う筆は比喩ではな
く刃物ですので。長文・チラ裏、失礼しました<(_ _)>
Posted by 継蓬 at 2015年01月30日 09:23
筆圧の高い僕には耳の痛いお話です・・・。
でも僕も原稿の下書きはシャープペンシルでぐじゃぐじゃに書きます。そんなときには筆圧なんてかけません。筆圧があがるのはきれいに書くとき。きれいに書くのは考えがまとまった後だから、もはやクリエイティブではありません。となると師匠仮説に当てはまるわけで・・・・。
Posted by たでくふむしむし会 at 2015年01月29日 22:36
クマサン、お久しっぶり。

小説のどの部分を創造的というかなのですが・・・

プロットをあーでもないこーでもないと考えている時は低筆圧だと思います。

で、頭に浮かんだ言葉を忘れないうちにと紙に書き写している最中は高筆圧でしょうね。
後者を創造的と考えるかどうかで解釈が違うかも?
Posted by Pelikan_1931 at 2015年01月29日 21:30
全くの「誤解」
創造的活動と、「筆圧」の関係は、一見有りそうですが、それは全くの「誤解」です。
例えば、フルハルター氏の『作家と万年筆』の中には、「…気分がのってくると、泉のように湧き出してくるものを流れるように早く書くために、自然と筆圧が強くなり、…。」(北方謙三氏の項)
また、同じく森瑶子氏は「特に私は筆圧が強く、原稿の枚数が多くなるとぶっつけるように書くので…。」と書いています。作家が「まったりと」書いている、と想像するのは事実誤認です。
Posted by クマサン at 2015年01月29日 17:44
そうですね、私は原稿はパソコンですけど、メモや論文の構想などは全て太字の万年筆ですね。
ほとんどがBあるいはBB,BBBですね。細字だと、手に気が行ってしまいます。
Posted by うっちゃん at 2015年01月29日 09:30
自信決定度とも相関はありそうです。
図面手描きの頃、間違いがあるかないかは、線の強さ仕上がりに比例する事が多かったです。
思案中はヘアラインで薄く軽くラインを入れ、決定したらビシッと描く。
線が甘いのはやはりどこか間違いがありましたね、なんでわかるの?って最初は思ってましたが(笑)
ビシッと描く時は発想は止まり、1本引き終わると考え直す時間が生まれた記憶があります。

消せる、間違えても良いと言う気持ちの時と、消せないミスできないと言う精神状態の差が筆圧に関係してるような。お題の考えはありでしょうね〜。
発想と仕上げの違いは、イラストも図面も同じ感じがしますね〜( ´ ▽ ` )ノ

Posted by 白星 at 2015年01月29日 08:54
なーるほど!

イメージを作るときは低筆圧で、
イラストなどの作り込みに集中する際には高筆圧から低筆圧を使い分けたりするわけですね。
その点、文章の書き込みの場合は、一定して筆圧は強いのでしょうね。あくまで一般的にですが。
Posted by Pelikan_1931 at 2015年01月29日 08:15
絵を描く時、下描きは低筆圧ですが、ペン入れは
強筆圧から低筆圧まで一瞬で切り替えながら描いている事に気付きました。

確かに思索的な作業は低筆圧。
無心でする作業は勢い重視。 という感じです。

おっしゃる通りかも……?
Posted by ポンちゃん at 2015年01月29日 00:20

  筆圧を掛ける ←→ 「書く事」に集中してしまう

鶏&卵、どちらが先か分かりませぬが、非常に強い相関関係を感じます。というか、どちらかが始まるとどちらも進行してしまうデフレスパイラルな印象が。

やはり「創造」するときは、頭ゆるゆるにして *集中しないように*しなきゃと思いますです。太字万年筆万歳!! (^o^)/
Posted by ヴワル図書館 at 2015年01月28日 23:36