2015年03月04日

水曜日の調整報告【 1980年代 Montblanc No.149 14C-B 右捻り→左捻り 】

1今回の生贄は1980年代のNo.149。硬いニブが好きな拙者は14Kになった直後のニブのほうが好きだが、今回のニブもなかなか良い。
クリップはなで肩から角形クリップになった直後の、やや角クリップ。クリップをキャップに止める方式はマイナスネジをキャップの内側から入れ、天冠でクリップをはさんで固定する。
これ以前の天冠を首軸に直接ねじ込む方式の方がはるかに優れていた。今回の方式ではインクの水分でマイナスネジが錆びてしまう。
今回も大量の茶色の錆がネジに付着していた。これがペン先を傷つけたり、場合によってはペン芯を詰まらせることもあるので、マイナスネジで天冠を内側から止める方式ならば頻繁な洗浄&乾燥が必須じゃ。

23ペン先は中白の14C-B。ペン先を首軸に押し込む位置はベストに近い。この年代のNo.149には胴軸内にペン芯ストッパーが付いている。
こういう胴軸内部やソケットの微妙な違いはあまり紹介はしていないのだが、こういう詳細設計の部分にまで目を向けるとバリエーションはさらに増えるだろう。
しかしそれを知るには、あまり外さない方がよい部分まで外すことになるので止めといたほうが・・・ ( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
今回の調整は、やや左捻り(内側捻り)の人に適した調整にして欲しいとのことだった。そしてスラスラヌルヌルのインクフローに!とのこと。
このペン先の状態では潤沢なインクフローは臨むべくもない。スリットを少しだけ開き、さらに腹開きにしてインクフローを稼ぐ方式にしよう。

45この横顔を見ると、このペンポイントは明らかに右に倒して書くように調整されている。しかもかなり寝かせて書く人に向けた調整じゃ。
そして横線と縦線が同じくらいの太さになるように調整されている。そしてスイートスポットは3点。
筆記時にペンをこねくり回す癖は無く、ほぼ一定の筆記角度で書く人向けに調整されているペンポイントのようだ。

67右側画像を見ると、ペン先のセンターが少しだけペン芯のセンターよりも(上から見て)右側にズレている。
通常、この状態ならペンポイントの右側が下がるはずだが、左側画像のようにペンポイントの右側が上がっている。
もし右に倒して書くなら、このペン先の状態の方が書きやすい。ペン先のスリットを絞り、なおかつ書き出し掠れが無いようにわざと段差を付けているのだろう。
ただし、今回、この萬年筆を多少左捻りの人に使わせようとすれば、まったく逆の調整が必要となる。まずは分解して段差を直す。
インクフローが潤沢な方が好みのようなので、わざと段差を付ける必要はなく、書き出し時にスリット部分が紙に当たるように、腹の外側を少し研磨すれば良い。

8調整はチョチョイノチョイで終わるのだが、問題は内部清掃。尻軸を回すとジャリジャリと音がするので外してみると、ピストンの後ろ側も汚れている。
ピストン弁にはシリコングリースを塗った痕があるのだが、そこを乗り越えてインクが後ろに回っている。
こういう場合、固まったブルーブラックかカーボンインクの粒子がピストン弁の間に挟まり、少しずつインクが後ろに回ったと考えられる。

9こちらは洗浄後だが、尻軸のらせん棒部分にも茶色の粉のような物が大量に付いていた。
これがジャリジャリと音がした原因だが、なぜそこに茶色の粉が付いたのかは不明。インク滓などではない。むしろエボナイトの粉か、イカ墨インクの乾燥した物みたいだった。
おお、ピストン弁は最新型のNo.149と同じグレーだが、現行品よりは軸が長いな。

10こちらはペン先。このペン先根元の149の刻印が、真上から見るとちょうど隠れ、斜め前から見ると判別できるというのが理想の押し込み方。
それにしても、この時代のNo.149のペン先の形はエレガントだなぁ〜。何が良いって?
それはコストカット穴が無い事につきる。どんな効用をうたおうとも、あの穴はコスト削減の成果であって、機能向上とは無関係。
拙者がMontblancの経営者なら【何故もっと前からやらなかっのかな?】と皮肉っぽく追求しただろうが、コレクターとしてはコストカット穴のあるペン先は、MontblancにしろPelikanにしろうれしくはない。
国産ならコストカット穴は許せるのに、なぜ独逸製は許せないのか?そりゃ値段が高いから!値段を高くしてコストカットというのは寂しいわぃ。


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 修理調整1.5h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 

Posted by pelikan_1931 at 23:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック