2015年05月22日

金曜日の調整報告【 Montblanc Donation Menuhin 18K-M 書き味とインクフロー改善 】

1今回の依頼品は2015年05月15日と同じくMontblanc Donationシリーズ。前回はカラヤンだったが、今回はMenuhinだとか。わしゃ知らんがな。
カラヤンはキャップの口の部分に鍵盤が描かれていたが、今回はクリップに弦楽器の弦を止める部分があしらわれている。
このシリーズの欠点?はキャップが尻軸にうまく挿さらないこと。スキャナーの上に乗せて撮影するのに非常なストレスとなる。
何もドネーション・シリーズに限ったことではなく、No.146系に共通の弱点。だからこそ、たまにキャップがきっちりと挿さる軸を見つけるとうれしい。プルーストなどは秀逸!

23中古で入手したが、インクフローが少ないのと書き味が悪いとのことだった。この時代のMontblancはペンポイントを寄せていたのでさもありなん。
ペン芯とペン先の位置は固定なのでいじりようはないが、スリットは少しだけ開いた方が良いだろう。このままではインクが余り出ないはずだ。
前回のカラヤンではプラチナ鍍金のペン先に金色のハトだったが、今回は金色のペン先に銀色のハト。このハトはプラチナ鍍金かな?

45こちらは横顔。右側画像を見ると、明らかにペンポイントが薄く研磨されている。こちらの画像と比較すると明らか!
どうやら森山スペシャルを真似して研磨したようだが、その域には遠く及ばないなぁ。でも努力は認められる。精進すればいつかは・・・というところかな。
こういう成長途中の研磨を見ていると頼もしく思える。そもそも拙者がこのレベルに到達するのにはずいぶんと時間がかかったはず。
しかし、Blogで調整方法を公開してから、若い人の調整の腕はすさまじい勢いで伸びている。別に教え子とは思わないが、何となくうれしい!

6どこが悪いのかは、こちらの画像を見ればよくわかる。せっかく薄く削ったのに、そこからさらにエッジを取ろうとして、腹が馬尻になっている。
ペンポイントを薄く研磨した場合、よほど寝かせて書かない限り腹の部分はさらっと数回擦る程度で良い。
それよりもインクフローを上げて筆圧を下げさせた方が、書き味の点でははるかに有利。そこが理解できれば、このペン先を調整した人は伸びるな。
ただ、このペン先はひっくり返して書くようにも調整されているが、依頼人はそういう事はしないので、戻しておこう。

7こちらは首軸から抜いて、スリットを拡げ、清掃が終わった段階のペン先じゃ。大きなコストカット穴があるなぁ。これってヘミングウェイのペン先の時代から存在していたはず。
スリットはペン先単独の段階でこのくらい離しておくことをお薦めする。
ペン芯に載せて首軸に突っ込んでからでもスリットを狭めることは簡単だが、開くのはリスクがともなう。開くと同時に段差が出来てしまうこともあるからな。
段差は出来るだけペン先単独の段階で直しておくのが好ましい。先端部だけではなく、ハート穴からペンポイント先端部までの全てで段差が無いように微調整するのですぞ。

8こちらは、先端部のとんがりと、腹の馬尻を削り落とし、秘密のペーパーで研磨した後に、金磨き布でバフがけ(8の字旋回)を施したペンポイント。
もちろん、水で洗浄した後、インクを浸けて試し書きしてから乾燥させて撮影した物。
この段階から2日ほどで少しだけ調整戻りするはずなので、その分だけ過剰補正してある。どこだかわかるかな?

910先端部のとんがりを削り落としたのは、シャキっとした字形にするため。前のままだとぼんやりとした書き出しになり文字が乱れる。(愛の終着駅)
左画像を見ると、スリットはペン先単独の場合よりも少し寄っている。これは首軸に差し込んでからペン芯の上でペン先を少し寄せたから。
Vintageのペン先は一度ペン芯に載せて首軸に突っ込むと、その後にスリット調整するには時間とコツが必要になるが、現行品(特に18金ペン先)では容易に寄せが出来る。

インクを付けて書いてみる・・・まるで別物の万年筆になった。大成功!


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1h 記事執筆1
h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  

Posted by pelikan_1931 at 23:30│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント
akiさん

メニューインは最近の人だったんですね。ありがとうございました。
このシリーズは色こそ違え、ペン先などはほぼNo.146を踏襲しています。
どうも手に合いません・・・キャップが無いとバランスが悪くてねぇ〜
Posted by Pelikan_1931 at 2015年05月24日 21:24
5
メニューイン(1916〜99)はヴァイオリニストで人道主義者としても活躍したためDonationシリーズに採用される光栄に浴したのではないかと思われます。
万年筆に関してはデザインはカラヤンのそれとほぼ同じでしょうか?
Posted by aki at 2015年05月23日 22:28