今回の生贄は復刻直後のAURORA 88、いわゆるハイレグ・ニブ付きの萬年筆じゃ。当時はAURORA 88にはハイレグ・ニブで、オプティマには通常ニブがついていた。
なを当初のオプティマのペン先は非常にシンプルな模様付きで、書き味はAURORA 88や、現行のニブよりも良かったのだが・・・初期オプティマはインク窓が弱かった!
ペンマンインクを入れると折れたし、赤インクを入れるとインク窓が着色した。もしオークションで出ても、インクを入れて使う気なら止めるべき!悲しい気持ちになるだけじゃよ。
このAURORA 88の金キャップは、一部の好事家から【仏壇萬年筆の頂点】と呼ばれている。どうやら金箔を貼った高級仏壇に似ているかららしい。あまりうれしくない称号だろうがな。
こちらがハイレグ・ニブと呼ばれるペン先の画像だが、右側画像を凝視すると、ペンポイントが研がれているのがわかる。
明らかにオリジナルの研磨とは異なっている。アウロラのペンポイントの頂点が尖っているものは(未使用では)見たことがない。
またペン先のスリットが少しだけ開いている。これもどなたかの調整によって拡げられた物が市場に出回ったのだろう。
調整が施されているので、書き味は悪くはなってないはずなのだが、実は、ハイレグ・ニブは現行のオプティマ型ニブと比べて書き味が安定しない。
ハート穴から前(通称:穂先)が長いので、少しでも萬年筆を捻るとペンポイントの段差は大きくなってしまう。
拙者も発売当時、Bニブ付きで手に入れたが、どう調整しても書きにくく、結局はオプティマ型のニブに交換して使っていたはずじゃ。
ペンポイントの付け方も様になっていないなぁ・・・現行製品であるオプティマ型のペンポイントはこんな不格好な形状にはなっていないはず。
だがまぁ、こういうペンポイントだからこそ研ぐのが面白いので、文句は言えまいな。
ペンポイントの根元部分の上側も回転砥石で研磨されている。国内の調整師はこんな乱暴な研ぎはしないので、おそらくは海外調整の痕跡か素人調整の犠牲だろう。
もっともこの程度であればどうにでも調整出来る。そういう意味で、理性ある調整が施されていると言えよう(笑。当時の拙者は理性のかけらも無い調整をしていたので感心するしかない。
こちらはペンポイントを正面から撮影した際の画像。もちろんオリンパス TG-3の深度合成の機能を使っている。
同じようなペンポイントの画像を撮影するには、カ深度合成機能の付いたカメラと同時に、萬年筆を固定する台と、ミニ三脚が必須となる。なかなか真似出来ませんぞぅ。
どうやら向かって左側のペンポイントとペン先を削りすぎたと見えて、ペンポイントが4:6くらいになっているし、高さも合っていない。少なくとも、紙に当たる部分の幅は左右同じ程度に研いでおく必要があろう。
調整とか、書き味だけではなく、ペンポイントの書き姿も調整する物なので、自己研磨する前に萬年筆研究会【WAGNER】に持ち込んでいただけると、ペンポイントを虐待しないですみますぞ。
上がオプティマタイプのペン先(金曜日に掲載したダンテのもの)で、下がAURORA 88用のハイレグ・ペン先。
ハート穴から前の長さが相当違うのがよくわかるじゃろう?この穂先が長いことは、さほど軟らかい書き味には寄与していない。むしろ、書きにくさの演出に一役買っている。
これがハイレグ・ペン先が世の中から消えていった理由じゃ。拙者ですら使いにくいと考えたくらいだから、世の中の大半の人には書きにくかったはず。
ただし、穂先が長い=軟らかい=書きやすい という、プラシーボ効果によって珍重されているわけじゃ。拙者もだいぶ手を貸していたのだが、一番罪が深いのは神戸の鞄屋さんかな?
こちらが調整の終わったハイレグ・ニブの拡大画像。ペンポイントの紙に当たる側の幅を均一にしたこと、先端部の尖りを丸めたことが調整の主眼であった。
その後、相当な時間をかけて筆記に適した調整に変えたのだが、穂先が長いと調整戻りも大きい。
また、機会があれば微調整を施してみたい個体ではある。
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間