2015年08月26日

水曜日の調整報告 【 1950年代 No.642 14C-OB コルク交換 】

1今回の依頼品は1950年代のNo.642ということなのだが、なんとなくボディのバランスがおかしい。特に一番下のキャップをした状態が・・・
キャップを押し込むときの感触、キャップを尻軸に押し込むときの感触も・・・スカスカな感じがする。
ひょっとして、No.644のキャップを間違えて挿しているのではないかなぁ?頭でっかちな感じがしてしまう。
コルクが劣化してインクが吸入出来ないとのこと。各種オークションで入手したVintage品には、ほとんど瑕疵があると考えておいたほうがいいですぞ。
萬年筆研究会【WAGNER】にいつでも参加して修理依頼できる人はともかく、”きっと大丈夫だろう” てな安易な気持ちで入札すると、ほとんどの場合、墓穴を掘るようですな。

23こりゃまたずいぶんとペン先が前に出ているなぁ。左右にぐらぐらするほどじゃ。せめて585の刻印がかろうじて見えるくらいまでは、ペン先を押し込んでおいた方が良い。
このNo.642はキャップは押し込む方式なので、ペン先が曲がるリスクは少ないが、このペン先ユニットをNo.142に取り付けたら、キャップを閉めた瞬間にペン先が捩れる!
ペン先のスリットが詰まりすぎているので、書き出しでインクが出ないリスクが高そうじゃ。しかもOB・・・少しだけスリットを開いてインクフローを良くしておこう。
ペン先調整は、受渡時にチョチョイのチョイと簡単にやれば良いだろう。ペンポイント自体は実に美しい形状をしている。出来れば平べったく研磨しないで欲しいなぁ。

6今回の修理で一番時間がかかったのは首軸を外す作業。首軸全体にビッシリとシェラックが厚塗りされており、ヒートガンで15分くらい炙っても外れない。
出来ませんでした・・・というネタにしようかなと考えて、そういう画像を準備していたのだが、もしやと思って80度のお湯に3分間つけてかき回してたら、ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ〜〜と首軸が回った!
胴軸側も首軸側もゴムでプロテクトした挟み工具で回した結果なので、まぁよくぞ割れないでいてくれたものじゃ。ラッキー!

9尻軸外し工具で尻軸を回してもビクともしない。こちらにもシェラックがびっしりと厚塗りに!
こういう部分はシリコングリースなんかを塗っておいた方が次回の修理はやりやすい。
修理しながら使う必要のあるVintage品には、そのような気遣いが必要じゃよ。そう、次の修理人の手間を考えて、いま修理にあたるのじゃ。
後ろからピストン機構を引っ張ったらすぽんと上のように抜けた!これではインクなど吸うわけがない。

8ピストン部分がコルクでは、すぐにまた劣化するので、Oリングで代替しよう。
左側の径の小さいのを、奥と手前、右側の外形が大きいのを真ん中にしてピストン先端部に固定するのじゃ。
なを内径も違うので、中央の外径が大きいリングを取り付ける際には、内側にシリコングリースを塗り込んで、空気が内側の隙間を抜けないようにする。

7そうして完成したのが、左のイメージ図じゃ。実際には・・・一番奥のリングを嵌めてから、胴軸の尻側からねじ込み、その後で2個のOリングを首軸側から嵌める。
そして最後にエボナイト製の固定ねじで軽く留めるわけじゃ。力を入れてし締めすぎると、ピストンの動きが渋くなる。


10ペン先を首軸に押し込む位置としては、この辺りがふさわしいだろう。ペン先がペン芯の上で、左右に暴れなければOKじゃ。
実は、少しだけペン芯をヒートガンで炙って上に反らせてある。そのせいで、スリットがほんの少しだけ開いている。
おそらくは、この辺りが、萬年筆としておいしいところだろう。それにつけても、キャップがやや大きいのが気になるなぁ・・・


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
    

Posted by pelikan_1931 at 23:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック