2015年09月04日

金曜日の調整報告 【 ONOTO MAGNA 14C-M 書き味改善 】

12オノト・マグナは25年ほど前までは幻の逸品だった。拙者も見たことがなく、想像するしか無かった。それがネット時代になって一変!
国内では30万円では買えない!と言われていたが、状態に目をつむれば500ドルほどで海外から買えた時代もあった。
それにしても今回の依頼品は状態が格別に良い。メーカー名などがはっきりと読み取れるが、これは文字だけリペイントしたものだろう。
ペン先の鍍金は剥がれておらず、吸入機構も完璧に機能している。ただし、書き味だけが今一歩なのじゃ。苦労のあとは読み取れるのだがな。

34こちらがペン先のクローズアップ。ハート穴の中心に切り割りが入っているが、それがペン先の模様とズレがあるのはご愛嬌。
ペン先のスリットを開くのにスキマゲージかカッターナイフを使ったのは残念。金一色のペン先なら金磨き布で擦れば傷は取れる。
ただし、プラチナ鍍金やロジウム鍍金がかけてある場所に刃物を押し込むのは好ましくない。傷を取ろうとすると鍍金が剥がれてしまうからなぁ・・・
明日の調整講座ではスキマゲージで開く練習もやるが、あれ(サファリ)はスチールペン先ですからね!銀色系の鍍金がかけてあるペン先にスキマゲージはダメダメ!

56こちらは調整前の横顔。右側画像は深度合成。深度合成無しでも撮影してみたが、その場合は、切り割りの部分で既にボケている。
深度合成ならば、切り割りの部分で左右に段差があるのがわかる。長原Jr.さんは”グイチになるっとる”と表現されていたな。
ペンポイントからハート穴に至るペン先の厚さが素晴らしく管理された状態にあるのがわかる。ペンポイントの溶着も見事。
古の万年筆愛好家が ”オノト、オノト” と騒いでいた理由は、こういう細部の素晴らしさに加えて、パッケージとしての完成度もある。
当時の国産や独逸製、米国製萬年筆の無骨さに比べれば、実にエレガントな造形をしている。

7多少左右の段差がある。この画像だけを見れば、右上から左下へ引く線がガリガリと引っ掛かりそうだが、そんなことはない。
確かに書き出しは若干のぎこちなさが残るが、ペン先がよく撓るのですぐに左右が筆圧に反応して変化する。
従って紙への引っかかりはほとんど感じなくなるのだが・・・極わずかだけ背開き気味になっているのが極上の書き味の邪魔をしている。

8こちらはスリット調整を施した後のペン先とペン芯の画像。マグナの特長は、ペン芯の短さ!これには毎回驚かされる。
吸入機構がプランジャー式のせいだろうか?フィンの数も少ないし、フィン自体も短い。従ってペン芯がインク漏れを防ぐ力はほとんどない。
かわりにオノト式と呼ばれるプランジャー機構(インク止め式とバキュームフィラー合体?)が尻軸のゆるめ量でインクフローをコントロールするのかな?
拙者は使い始めに尻軸を緩める筆記具を万年筆と呼ぶには抵抗がある。昔、金ペン堂さんがおっしゃったという、【万年筆はキャップを外した瞬間から最後の一滴まで書けるもの】という定義を尊重している。

910こちらが調整後のペンポイントの姿。両者ともに深度合成を施したものじゃ。
ペンポイントの先端部はやや平らに削り、横線の太さが乱れないようにした。
またペンポイントの段差は、筆記する際に紙に当たる部分だけを揃えた。大幅な研磨は施していない。
エッジがキレキレになっている部分のみ5000番の耐水ペーパーを軽く当てて尖ったエッジだけを軽くさらった。
右側の画像は、紙に当たる部分をルーペで睨んだ時と同じ画角での撮影。ここさえ段差が無ければ、その他に多少の段差があっても無視できる。
というか、将来の利用者のために、多少の余分な肉は残しておく・・・というのが最近の拙者の調整スタンスじゃ。
昔は、どのように眺めても完璧な美しさ・・・というのを求めて研磨していたが、最近では可能な限り削らないで調整するというように変わってきた。
しかし・・・その方が調整に時間がかかるんだよなぁ。余分なお肉を目立たないようにするのがけっこう難しいのじゃ・・・そういえばデブの身支度に似てるかも?


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
     

Posted by pelikan_1931 at 21:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック