2015年09月21日

月曜日の調整報告 【 ONOTO マグナ(レバーフィラー) 14C-F 書き味改善 】

1今回の依頼品はONOTO マグナのレバーフィラー。プランジャー式と比較するとはるかにメンテナンスが楽なので、拙者も溺愛した記憶がある。
一方でプランジャー式(オノト式)は冷遇した。軸が長くて可愛くなかったというのがその理由。やはりレバーフィラーはかわいい。
そしてペン先のスリットの延長上にレバーが位置していると落ち着いていられる。これがズレていようものなら、人の物でも直したくなる。
そういう意味でこの萬年筆を依頼者に売った人物は、非常に几帳面な性格だと思われる。親近感を覚えるなぁ〜!

23ペン先は7号で細字。非常に大きなペン先なのにペンポイントが小さいのが不憫。どうやら極限まで研磨されているらしい。
ちゃんとペン芯に載せると少しだけペンポイントが斜めに傾くという癖を持つペン先じゃ。こういうものの調整には時間がかかる。
しかもこのペン先は軟らかい・・・という画一的な評価を受けているオノトの中にあって、例外的にビンビンに硬いのじゃ。
ただし、鋼の薄板のような弾力はあるので筆圧をかけて筆記すると、ペンポイントのどこかしらのエッジが紙に当たって酷い書き味になる。
この萬年筆はかなり研磨はされているが、追い込み調整はされていない。研磨することと、追い込む事は同義ではない。この調整を施した人はその意味を理解していないようじゃ。

45こちらは横顔。実はペン先は引っ張ればすぐにスコンと抜ける。これがマグナの特長なのじゃ。
ま、オノトの萬年筆では、ペン先(とペン芯)は抜けやすいのだが、マグナは特別に抜けやすい。もちろん、これには良い面もあり困る面もある。
右側画像を見ると、ペンポイントのどこまで研磨されているのかがよくわかるだろう。腹は薄皮一枚・・・というところまで研磨されている。
ただしマグナのペンポイントは硬いので、依頼者程度の筆圧ではあと50年は持つだろう。一週間に10時間ほど使ったとしても・・・

6こちらはペンポイントの正面画像。向かって左側がやや厚いが、これは問題なし。書き味に影響するのはスリットが開いていないこと。
この状態では書き出しでインクが紙につかない。となると筆記者は筆圧を上げてペンポイントを紙に押し付けてしまう。
と、自動的にペンポイントが不自然に開き、エッジが紙の繊維を引き裂いてしまう。そう、絶対に筆圧をかけての筆記をさせないように調整するのが重要なのじゃ。
すなわち、研磨よりもスリット調整の方が重要。特にここまでペンポイントの丸め調整が出来ているのであれば、残るはスリット調整だけで良い。

7念のために首軸を引き抜いてみると、下側の黒いゴムサックがついていた。何の問題も無いし、真新しいゴムサックなのだが、いつかは劣化してしまう。
となれば劣化がほとんど無いシリコンサックに変えておいた方が良いだろう。
特に依頼者は数多くの萬年筆にインクを入れているので、マグナのゴムサックなんぞ1年間でベトベトにしてしまうだろうからな。
シェラックで接着できるかどうか心配だったが、結果、何の問題も無く接着出来た。黒いゴムサックに比べてやや固着に時間がかかる程度じゃ。

8左のものを、9月4日記事にあるのプランジャー方式のマグナのペン先、ペン芯と比較してみると面白い。
プランジャーのものはペン芯が極端に短いし、ペン先根元の【A】というマークも無い。
オノト式の場合、インク止め用の栓が首軸内部まで伸びているので、ペン芯の長さはあの程度しか伸ばせなかったのであろう。
一方でレバーフィラーの場合は、少なくともゴムサックを固着している部分まではペン芯が伸びている必要があるので長いのかな?

910スリットを開いて書き出しでインクが出ない状態を防止しようとしたのだが、この鋼のような弾力のあるペン先に効果はあるのか?
左画像ではペン先先端部は少し開いているが、すぐに調整戻りによってスリットが詰まってしまうのではないか?と不安になる。
このペン先は根元部分が細くなっており、おかげでペン芯とペン先を首軸に押し込むのに力が入らない。また、すぐに引き抜ける。
これも善し悪しで、ペン先がペン芯とすぐにズレてしまう・・・と思ったのだが、不思議とズレない。うーん、昔の技術は紙で伝授はされていないが、実は奥が深いのかも知れない。
現在のペン先とペン芯には、すぐにズレが生じてしまうものが少なくないからな。
インクをつけて書いてみると、細い字だが、紙にインクが盛り上がるように書ける。こいつはうまく調整出来たな!


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   

Posted by pelikan_1931 at 23:10│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック