2016年05月01日

萬年筆の定期点検について

先日の萬年筆研究会【WAGNER】関西地区大会@元町において、何本かの萬年筆を定期点検と称して持ち込まれた方がいらっしゃった。
これを聞いて、萬年筆にも定期点検が必要だとわかってくれたのか!とうれしく感じた。 

萬年筆は手巻きの腕時計や工作機械や耕耘機と同じように、使っていれば具合が悪くなってくる。それは摩耗や緩みや傷など。

萬年筆は使い続けて手になじませるというロマンもあるが、大体において、萬年筆に手が慣れさせられている。
その萬年筆のおいしいところを見つけながら書くようになり、それをもって手になじんだと表現する人もいる。
あるいは筆記角度を変えず、強筆圧で書いていれば、ペン先は摩耗して大きなスイートスポットが出来上がる。
これをもって馴染んできたと表現する人もいる。しかしそういう書き味は15分もあれば調整で作ることが出来る。ロマンを壊して申し訳ないがな。

調整では実現出来ないのは、”自分で書きながら摩耗させてスイートスポットを筆圧と時間で摩耗させたという自己満足感” だ。どうやっても自己満足を越える調整は出来ない。なんせ満足しているのだから。
ただ、敢えて言うなら、その書き味を依頼者が口で表現できるなら、調整師が調整でその書き味を実現するのは難しくはない。

ここからが本題!

いくら完璧に調整されている萬年筆であっても、経年変化で修理が必要になる確率は非常に高い!

たとえば、筆圧による段差発生、摩擦によるペンポイントへの傷、スキップ防止用にペンポイントに付けた傷が摩耗して再びスキップするようになるなど。
その他にも、スリットが開いて字幅が太くなる、スリットに溜まったゴミで字に髭が生える、インクがペン芯の溝で固まるなど。

そういう時、往々にして、これは調整が不十分だったせいだ!調整戻りだ!などと調整師のせいにする人もいるが、それは間違い。 

萬年筆は字を描く道具。道具であれば使っていれば調子が悪くなったり、摩耗したりして当初の性能を出せなくなるものだ。 

手巻きの腕時計や工作機械や耕耘機の場合はどうしているのか?
購入した時計店や時計技師に分解清掃して貰う?
メーカーの保守/定期点検を受ける? 

でしょ!

萬年筆も同じ事。1年に一回くらいは萬年筆にも定期点検を施しませんか?

ほんのちょっといじるだけでも、書き味は激変します。今の下記癖に合わせた調整をすれば、たちどころにパーフェクトに近い書き味になります。

超極太萬年筆の場合は・・・・書きだし掠れの発生頻度が上がった時に持ち込み!
中字萬年筆の場合は・・・・・・筆圧でペン先に段差が出来、書き味が劣化したときに持ち込み! 
極細萬年筆の場合は・・・・・・字幅がだんだんと太くなり小さな字が書けなくなった時に持ち込み!

こうやって、何年間か定期点検しながら使い、いよいよご臨終の時が来たら・・・パーツにバラして売りませんか?

先日のペントレで最も人が団子状態になったのが、パーツの販売を開始したとき。まさに黒山の人だかりだった。

ペン先が駄目になっても、萬年筆として機能しなくなっても、パーツとして生き残る事は出来ます。

萬年筆研究会【WAGNER】では、今後、パーツの流通マーケットを作ろうかなと考えています。
その際はぜひおいしいパーツを流通させ、人のために役立てようではありませんか! 

Posted by pelikan_1931 at 22:48│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック