2018年01月13日

調整報告番外編 【 ハードボイルド作家のヘミングウェイ 18K-B 】

1こちらはkugel_149さんからお預かりしたヘミングウェイで、あるハードボイルド作家の持ち物だとか。

ひょっとしてガシガシとナイフで削ったような萬年筆かと思ったが非常に状態が良い逸品だった。

難点は尻軸の一部が衝撃の影響か少し欠けていることぐらいかな?それも・・・ハードボイルドならしようがない!と思えるから不思議。

全体的には非常に大切に扱われている物だと思う。またさほど酷使されている物とも思われない。

執筆活動の第一線で酷使されている物なら、人に預けて調整を・・・なんて悠長なことは言ってられないような気がする。

それに、このハードボイルド作家は、ご自分でも調整をされているようだしな。

23当方に預けられた原因はこれ!なんらかの要因でペン先とペン芯とがずれてしまっているのじゃ。

筆圧が強くてずれたものではない。明らかに何かにぶつけたことによってずれたはずだ。

ただ幸いにしてペン先自体にダメージは無い。おおこりゃ簡単!ちょちょいのちょい・・・と思ったのだがkugel_149さんからの伝言にびびった。

インクフローは良く、ただしドバドバはダメ!】こうなるとスリットを開かないままの調整が必要。

しかも大がかりな研磨は出来ない。なんせ書き癖を見ていないからなぁ・・・。ただ【少し立てて書かれます】というkugel_149さんの言葉だけを頼りに調整を行った。

45横から見ると正面右側のペンポイントがずいぶんと下に下がっているが、斜め上から見ると全く目立たない。

従ってルーペで覗かない限りペン芯がずれた程度にしか不具合がわからないだろう。そう、万年筆の調整には性能の良いルーペが必須なのじゃ。

なにも調整師だけではなく、萬年筆を使う人にはすべからく必要なのがよく見えるルーペ!

6左画像のようにペン先とペン芯とが大きくずれているがペン芯にはダメージが無い。それは良いのだが・・・

ブルーブラックインクを入れたまま長時間経過しているらしく、分解清掃してもペン芯だけはいっこうに綺麗にならなかった。

水洗いしてインク汚れが無くなったペン芯を超濃いアスコルビン酸水溶液(80度)に入れると、モクモクと青黒いインクがあふれ出てきて大きなビーカーがあっというまに青くなった。

この清掃作業を5回ほど繰り返してようやく綺麗になったほど汚れていた。ブルーブラックを愛用するには定期的な洗浄が必要とつくづくわかった。

78このペンポイントの上下のズレは当初、ペン芯のズレによるものだと思っていた。ところが分解してペン芯を外してみても同じようにずれている。

どうやら衝撃の影響でペン先とペン芯とがずれると同時に、片側のペン先が少し上に反ったようだ。

9実はもう一つ不具合があった。左画像は直した後の状態。

実は尻軸を最後まで閉めても少し尻軸がカタカタした。これはインク吸入量を増やそうと尻軸をいじったときに起こりやすい現象。

ハードボイルド作家ならやるかもしれないが、ガニメがないと刃が立たないはず。どうなっているんだろう?

とりあえずは正しい状態に戻しておいた。これで尻軸はピチっと停止し緩まなくなる。

1011こちらは胴軸から分離し、清掃した段階のペン先。まだ段差は直していない。

ヘミングウェイの数ヶ月前からNo.149のペン先にはコストカット穴があくようになった。そしてペン芯は通称【ヘミングウェイ・ペン芯】になった。

この時まではペン先とペン芯との位置関係は自由に変化させられた。良い時代だったなぁ・・・

12で、こちらが段差を直し、ペン芯に乗っけて首軸に納めた状態のペン先。

立てて書くのでどうかなぁ〜と思ったが、インクを入れて書いてみると素晴らしい書き味!

ペンポイント先端部はひっついているので、インクはドバドバとは出ないが、インクフローは潤沢。

ただし滲むほどインクが出るわけではなく、ほどよい字幅の変化がある。

セーラーのブルーインクでこうだから、モンブランのブルーブラックならば、もう少しインクフローが落ち、ええ感じになるだろう。

あとはこの書き味がハードボイルドかどうかだが・・・ずいぶんと軟派な書き味になったがする。まるで石田純一か・・・

さてハードボイルド作家はなんて言われるだろうか?楽しみじゃ!


【 今回執筆時間:5時間 】 画像準備2.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーやマクロ用カメラでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  


Posted by pelikan_1931 at 06:34│Comments(0)