2019年11月12日

WAGNER 2008 の未開封を発掘した〜!

2019-11-12左画像は萬年筆研究会【WAGNER】が2008年に作った限定品。WAGNER 2007に続いて2本目の限定品じゃ。

WAGNER 2007の時には、あり得ないペン先の組み合わせと、キャップリングの刻印だけを入れるという小さなカスタマイズだった。

しかし、WAGNER 2008 は、職人さんにとっては経験した事も無いような苦労があったと後で聞いた。

2008年当時、プラチナの#3776の天冠は既に盛り上がった山形に変わっていた。

しかし、熊本の肥後象眼の〔光助〕さんでは、天冠が平べったい軸のキャップリングに肥後象眼を施したものが販売されていた。

しかしペン先の太さ刻印は無く、聞いてみるとMだけとのこと。ただ、象嵌部分はお好みがあれば変えられますよと聞いた。

そしてペン先をMusicに変えられますか?と聞いたところ、プラチナさんに確認して後日お答えしますとのこと。

今か今かと待っていると、出来ます!との回答。飛び上がって喜んだモノじゃ。

よく見ると、軸にもマット加工が施されていて、くすんだ良い感じ!

ポンちゃんにお願いしてWAGNER 2008という模様をデザインしてもらい、満を持して光助さんにお願いしたのじゃ。

肥後象眼の作り方は、鉄の板に金の粒をたたき込んで細かい模様を作る物なのだが・・・

こちらとしては、金の板をたたいて貼り付ける・・・くらいに考えていた。そこで大きなつながりのあるWAGNER 2008という模様にした。

ところがコレが従来の手法では非常に難しく、職人さんに(ほんまもんの)親方からのダメ出しが頻発し、職人さんがほとほと疲れたらしい。

その逸話は、第一回の熊本大会にお花を持ってきて下さった光助の若社長さんからうかがって恐縮したしだい。

ある技術を使った萬年筆を頼むのなら、その技がどうやって実践されているのかをようく理解してから頼まないと、作る人が苦労するか、出来上がりが不満足になってしまう。

このWAGNER 2008は今までに作った全てのWAGNERの限定万年筆(50本以上作ったもの)の中で、もっともカスタマイズ度合いが大きな物だと考えている。

人が関わった工数は他とは比較にならない。そして、その分だけ満足度も高い。

100本作り、80本はすぐにお嫁に行ったが、20本はけっこう残っていたはず・・・なのだが、既に自分用の1本しかコレクションケースには残っていなかった。

知らない間に売れていったんだなぁ〜と感慨深い。

ショップオリジナルの限定万年筆の場合、ネットで一瞬で完売するような万年筆は、実は売上的には店舗貢献度が低いそうだ。

数年かけて徐々に店舗から消えていく方が良いらしい。

その限定万年筆を捜して店に来た人が、見つけて興奮し、その万年筆だけではなく、インクや紙や、そして時には別の万年筆をも買ってくれるのだとか。

やっと見つけた喜びでハイになり、つい大盤振る舞いしてしまう気持ちは拙者も(何度も)経験済み!

そのためには、見栄えにこだわった派手な万年筆だけではなく、良さがじわりじわりと伝わる渋い万年筆も必要ということだろうな。

そういう意味では、松江の中屋万年筆さんのように、店主が〔私が好きな物だけ仕入れるんです〕という店舗スタイルが、実はこれからの万年筆業界で主流になるのではないかなぁ?

店主が情熱を持っていない物には惹かれない。逆に、多少難あるなぁ〜と思えても、店主が好きで好きでしようがないと慈しんでいる万年筆は買いたくなる。

万年筆売り場の店頭では、売り手と買い手とが、その万年筆に対する愛を共有できて初めて縁談が成立するのだろう。

そういう伝道者がいる限りは店は安泰だろう。そう、店に必要なのは手練れの販売員ではなく、〔愛の伝道者〕なのじゃ。


Posted by pelikan_1931 at 23:37│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック