先日行われたKOBE Pen Show で会場を回っていて気づいたのだが、数年前よりも万年筆のパワーがかなり落ちている。
正確に言うと、万年筆が欲しいというパワーを満たすだけのブツがなかなか見当たらない。
10年ほど前までは万年筆は武士にとっての刀のような存在、すなわち(本来は)武器!
命を守るために常にそばに置いて大切に使うということで、自分を納得させつつ、一杯購入していた。
ゴルフのクラブを買い換えるとスコアが上がることを期待する人や、カメラを買い換えると良い写真が撮れると錯覚する人とは違う何かがあった。
刀剣を並べてポンポンと粉をつけて手入れしているような感じだったなぁ・・・そのあたりは武蔵坊弁慶の1000本集めるという想いとは違ったはず。
逸品を少しずつ買い足していく感じかな?少しずつはともかくとして・・・
そういう万年筆=刀の世界で暮らしてきた拙者には、昨今のガラスペンやインクの流行、スチールペンの流行は、懐かしい感じがする。
それは、ビューティペア、クラッシュギャルズ全盛期の女子プロレス。でも本質は全く違う。
プロレスはストーリー(誰をどのタイミングでブレイクさせるか)を作り、それに従った盛り上げ方をしていた。
まぁ、大抵はそれが外れて、別の人がブームになったりしてた。
今回のインクやガラスペンの流行は少し違っている。
今はバブル期だと思う。これからブームが落ち着いてきたときに力の差が出てくるはずだ。
たとえば、可愛くて綺麗なガラスペンならなんでも欲しいという人たちが育っていくと、書き味が良くインクが切れないガラスペンが欲しいと変わっていく。
ブームにあおられている人たちは、別の物がはやればお金の使い道を変えていく。
そういう時でも残っていくのは、しっかりとした技術で、書き味と美しさを両立させたガラスペン。
そして煮詰まったり、固まったり、ペン芯で固まってもすぐに洗い流せるインクなど。
既にそういう時代が来ているような気がする。もう誰かが公開すれば一気に認知されるのだろうが、まだ、誰も言いそうにもない。
技術は文化が花開いた時にしか進歩しない。今がその時!
いろいろな新しい技術が蓄積されているはずだ。その技術が公開されたとき、市場は一気に変わるだろう。
可能性としては市場は一気にシュリンクし、良い物だけが残っていく・・・これちょっと寂しい。
今のインクブームは、ショップオリジナル・インクとガラスペンが支えているといえる。
ただ、インクは販売に手がかかる割に一本あたりの利益額が少なく、お店の日常的な負担は大きいはずだ。
だからこそ、イベント販売に店舗が積極的になるのだろう。発送の手間がかからないから。
インクは装飾品と言うよりも、化粧品(ファンデーションのようなもの)。
それが無いと女は成り立たない? で、ガラスペンはピアス。持つなら複数個。インクに似合うガラスペンにしたい?
その位置を狙った万年筆も増えてきた。女性をターゲットにし、数を買ってもらえる万年筆。すなわち、軸を売る万年筆。
武士としては、ペン先のバリエーションで売る時代を期待したい。
往年のパーカーなどはペン先バリエーションだけで100種類近くあったと聞く。良い時代だったなぁ〜。
それが望むべくもないとすれば、せめて調整でそういう事を実現したいものじゃ。それなら拙者でも出来る。