本日より、過去の調整記事の中からランダムにピックアップした物を掲載する。今回は10年以上前の記事なのだが、驚くほど現在と主張は変わっていない。
ただ、ピントを合わせる方法は新たにいくつか編み出されているので、そちらは萬年筆研究会【WAGNER】や万年筆談話室でご相談下され。
これは先日の萬年筆研究会【WAGNER】中部地区大会において物々交換でGetしたPelikan M425。濃い緑の半透明軸じゃ。
コレクションのかなりの比率がPelikan製という拙者ではあるが、現行M4XX系の萬年筆は一本も持っていないことを昨日気付いた。
同じ大きさの#500や#600、またM700やM710などはあるのだが、M4XXシリーズは一本も持っていなかった。
実に不思議。何度も調整で手にしているので、てっきり持っていると考えていた。
重さは23.7g。#500が13.7g、M710(赤トレド)が23.4g、M710(銀トレド)が22.5gであるからかなり重い軸じゃ。
ペン先には全身ロジウム鍍金が施されている。プラチナ鍍金かもしれないが、若干輝きが弱いのでロジウムと判断した。間違っているかも・・・
ペン芯とペンポイントの位置関係が拙者の好みとは違っている。ペン芯の頂点がペン先の模様の先端部と一致しているのがM4XX系の場合は美しい。
またスリットは詰まっており、インクフローは悪い。またペンポイント先端部が丸いので、若干ピントがズレた状態になる。すなわち筆記視差が出る。
これを直すには、先端部をBニブのように平たく研げばよい。実際には1200番の耐水ペーパーに垂直に立てたペンを10往復するだけでよい。仕上げに背中側を5回ほど平面仕上げ。
ペン芯の位置関係は多少修正する。現段階ではペン芯の14枚のフィンが首軸から見えているが、これを15枚見えるように若干前に出す。
またペンポイントは綺麗に研がれているが、拙者が書くとガリガリ。すなわちスイートスポットが合っていない。
そこでスリットを多少拡げた上でスイートスポットを削り込み、最後に仕上げでそのスイートスポットを隠す・・・という作業をするのじゃ。
最後のところがポイントですぞ。スイートスポットを残したままだと、ルーペで見て仕上げが雑に見えるのでな。
ちなみに拙者のペンクリでは、必ず最後のところも実施している。多少時間がかかるがご容赦を!
こちらがソケットから外したペン先。既にスリットは拡げてあるが、ペンポイントの頂点は削っていない。
こういう全身ロジウム鍍金ものはインクフローが良いと言われている。ただ拙者のようにスリットをわずかに拡げる調整を施す物にとってはその効果はわからない。
スリット開きの方が遙かにインクフローには効果が大きいのでな。
首軸に取り付けたら多少先端部を絞るが決して密着はさせない。これがBB〜Mまでの調整法。FやEFの場合にはペンポイントを密着させる場合もある。
これはインクとペン芯の相性で毎回微調整する。
ペン先のスリットは自動車で言えば空気圧のようなもので、タイヤを交換すれば必ずチェックするはず。
だからこそ、少なくともペン先のスリットを狭めたり、拡げたりする技は皆さんに覚えてもらいたいのじゃ。
萬年筆生活が豊かになること受け合いですぞ。
ペンポイントの先端部が調整前と比べてフラットになっているのがわかるかな?このフラット化がピントあわせのコツじゃ。
【萬年筆のピント調節】に関して世の中で初めて取り上げたのはstand_talkerしゃん。来年は時間を作って定例会にも何度か参加してくれそうじゃ。
これがスイートスポットを作り込んでから、その痕跡を消し去ったもの。紙に当たる部分が若干平たくなっているのがわかるかな?
この調整で腹の部分をさらに落とせば、Stub調の書き味になる。一度上記の状態に研磨すれば、そこからの変化技は意外に簡単。
まずは調整の基本である、スイートスポット作りと、その痕跡消しを覚えると、ルーペで見てホレボレするような仕上がりになる。研究されたし!
【 今回執筆時間:2.5時間 】 画像準備1h 修理調整0.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間