この長原宣義さんとの会話(赤字部分)が、拙者と長原先生の最初の出会い。そばには川口先生が修理スタッフとして同席されていた。
そのタイミングは2005年の12月くらいのはずだ。

旅行の際、インク壺を持って行かなくても良いので便利!ということだった。
No.146の太さは好きだけど、インク瓶は持って歩きたくない・・・という人向けに開発したのだろう。
専用の萬年筆を作る発想がMontblanc。Viscontiは【携帯用インポッド】を作った。

いったんセットしたらインクが出なくなるまで尻軸は捻らない方がよい。頻繁に開け閉めしているとカートリッジの口からインクが漏れだしてしまう。
ちなみに、ほとんどの人が尻軸を開けてしまい、インクを大量に漏らしている。やはりお約束は守らねばな。

拙者の自説を聞いていたためか、【OMの形状は変えないで、普通に右手で持って字を書けるように調整せよ】という依頼内容。そうそう、よい子じゃ!
最近独逸方面からやってくるVintage萬年筆にはオブリークのニブがついていることが多い。
それに当たってしまった人は、なんとかしてオブリークを普通のニブの形状に削り直すという依頼を調整師に出す。

せっかくの変化に富むペンポイントを平らに研磨したところで、【羊の皮を被った狼】のような大変化ではなく、せいぜい羊が山羊に変わるくらいの小さな変化。
しかも平凡になる。なら無理に削ることはない。素材の味を生かしたまま調整すればよい。その方が二次マーケットでの活躍範囲も増えるはず。
左画像が調整前。スリットがギチギチに詰まっていてインクが出そうにない。
ペンポイントの腹が開いていればインクフローは良くなるのだが、この個体ではそちらもギチギチに詰まっている。
スリットを開く作業はペン先を外してから実施した方が微調整が出来る。
No.147のように、前から引っ張って抜くしかないモデルは、ペン芯を抜く際にフィンを斜めにしてしまう危険があるので、ペン先を持つ位置に注意が必要!

位置ズレが出来る余地がないのじゃ。
それに軽々しく位置をずらすとインクフローに影響がある。ペン先との密着場所を十分に考えた複雑なペン芯設計になっているので、動かせない!というのが事実じゃ。

当時は紙当たりだけ調整していて、インクフローにはほとんど目がいっていなかった。
【こりゃ、呼吸困難になっておる。息が出来んゆうとる】と言ってParkerのイタリックのニブを【グニャグニャポン!】と力一杯こねたら信じられないほど書き味が良くなった。
そのニブを持ち帰ってスリットを拡げてくれたのに気付いたのじゃ。

ここから形状は変えずに裏側だけを研いでいくのじゃ。これはペンポイントがBのケースと同じように研げば良い。
それにしてもOMというのは通常のMよりもずいぶんと角張った感じ。こういう角張った方が見映えは良いなぁ!

背中側はほんの少しエッジを落としただけ。当然、萬年筆をひっくり返して書く調整は出来ない。

とはいえ、こちら側が直接紙にあたる事は少ないので、丸めたところで意味がない。というかペン先が滑る確率が高まるだけ。
大きい方のペンポイント先端を出来るだけ紙に当てないように調整すればOMであってもBの書き味が楽しめる。こりゃ病み付きになりそうじゃ。
今回執筆時間:3.0時間 】 画像準備1.0h 調整1.0h 執筆1.0h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間